新NISAで中小型株 将来TOPIX入りならインパクト絶大の14銘柄
トウシル / 2024年7月5日 10時22分
新NISAで中小型株 将来TOPIX入りならインパクト絶大の14銘柄
<指数パフォーマンス比較~バリュー株orグロース株どっち優勢?~>
6月の中小型株ハイライト「バイオとIPOとQUOカード」
6月は、4カ月ぶりに東証グロース指数がベストパフォーマーに。月間騰落率は日経平均株価が+2.8%、TOPIX(東証株価指数)が+1.3%でしたので、東証グロース指数の+6.9%はかなり優秀といえます。米国の労働関連の経済指標の下振れや、FOMC(米連邦公開市場委員会)や日本銀行会合の無難通過を受け、日米とも金利上昇が一服。金利上昇にナーバスになり、バリュエーションを削る動きとなった5月の反動がグロース株の追い風となりました。
また、年初来で高パフォーマンスだった銀行、総合商社など大型バリュー株が軟調に。時価総額上位陣では、トヨタ自動車やNTTの逆行安も話題になりました。政策保有株を売却し、株主還元を強化する銘柄に注目が集まっています。一方、政策保有株として保有され、売却される側の銘柄に対する「売り圧力」を警戒する声も高まっていました。
それでいえば、政策保有株とは無縁な(持っていなければ、持たれてもいない)中小型グロース株は逆に安心感にもなったのでしょうか…。昨年も6月にグロース市場が強烈な高パフォーマンスをたたき出しましたが、「6月は(グロース)強いぞ!」のトラックレコードを今年も残せたともいえます。東証グロース250指数が4カ月ぶりとなる6連騰(6月7日~14日)した姿には、「何か変わってきたかも!?」の予感を覚えた投資家も多かったのでは…。
とはいえ、指数が上昇したといっても、中小型株に機関投資家の資金が返ってきたといった形跡はありません。相変わらず機関投資家の関与は少ない中、地合いが好転できたのは個人投資家の頑張りのたまもの。その個人投資家は、成長性が高いとか、業績がいいとか、割安とか、そういう合理的な理由で動かないことでも知られています。
価格形成に大きな影響を持つのは、短期売買を前提とする個人投資家。その個人投資家にとって、最も優先順位が高い要素は「盛り上がり」だったりします。材料などをきっかけに動意付いた銘柄の中で、視聴率が高まり、売買が急増する銘柄が人の関心を惹き付けます。上がるから買う、買うから上がる。売買が増えるから売買する、売買するから売買が増える。
東証グロース6月月間騰落率TOP10
コード | 銘柄名 | 月間 騰落率 | 予想 PER(倍) |
---|---|---|---|
3815 | メディア工房 | 186% | - |
7083 | AHCG | 168% | 73.7 |
4592 | サンバイオ | 160% | - |
5246 | ELEMENTS | 72% | - |
4884 | クリングルファーマ | 66% | - |
4564 | OTS | 64% | - |
2997 | ストレージ王 | 62% | 13.2 |
4073 | ジィ・シィ企画 | 60% | 785.8 |
4894 | クオリプス | 55% | - |
4893 | ノイルイミューン・バイオテック | 53% | - |
地合いが好転した東証グロース市場ですが、6月の月間騰落率トップ10を見ると、今期の最終利益予想が赤字で、予想PER(株価収益率)表記が「‐(横線)」の銘柄が7銘柄もあることが特徴といえます(=割安株、出遅れ株に関心が向いたわけではない)。とくに、これまで最も敬遠されてきた赤字のバイオベンチャーが躍動しました。
きっかけは、東証グロース250指数への影響度も大きいサンバイオ(4592)とクオリプス(4894)の急騰でしょう。サンバイオは、19日に厚労省が開催する薬事・食品衛生審議会の部会で、再生細胞薬候補「SB623」の製造販売承認の可否が審議されることが材料に(→条件および期限付きで承認される)。
クオリプスは、早ければ6月にも厚労省にiPS細胞から作製した心筋シートの販売承認を申請するという一部報道が手掛かりになりました(→申請は6月を見送り、年内に変更)。この2社が作った「盛り上がり」により、小さな材料でも株価がぶっ飛ぶ小型・低位バイオ株が乱立しました。
そのほかでは、6月IPO(新規公開株)からも、意外な大人気銘柄が誕生(持続性は不明)。前評判はイマイチながら、投資系ユーチューバーとして知名度の高い高橋ダン氏が代表取締役を務めるポストプライム(198A)が連日ストップ高し、これが他のIPO株にも刺激となりました。
また、株価対策として最強の飛び道具とされる「QUOカードの株主優待新設」。現在株価でいえば信じられない高利回りに相当する大盤振る舞い策を発表したメディア工房(3815)が月間上昇率1位、ストレージ王(2997)が同7位にランクイン。
成長性が高いとか、業績がいいとか、割安とか、そういうことでは無く、「盛り上がり」こそ全て。これをまざまざと見せつけた6月の中小型株市場でした。
新NISAで中小型株! 今月の銘柄アイデアは…「未来のTOPIX銘柄」
7月入り直後、日経平均株価は(まさかの)は4万台回復から、踏み上げ相場に発展。再び最高値も視野に!という(まさかの)展開となっています。TOPIX(東証株価指数)は1989年12月18日以来の史上最高値を更新。米株市場でも主要指数が最高値を更新し、ドル/円も161円台という超円安水準を維持。株に弱気になる局面でもないのかもしれませんが、「何でこんなに上げてるの?」と首を傾げる市場参加者は多いです。
出足好調な7月ですが、例年7月~8月末にかけて売買が大幅に減少するという傾向があります。これは、外国人投資家が夏季休暇のシーズンに入るため(とくに欧州勢は休暇期間が長い)。
足元の上昇の原動力が外国人投資家であるとしたら、そのフローが減ることで上値追いもブレーキを踏むと見るのが自然。また、月前半はETF(上場投資信託)の分配金捻出売り(TOPIX型や日経平均型のETFが、投資家に分配金を支払うために手持ちの現物株や先物を1兆円以上売る)や、政策保有株の売却など株価にマイナス要因となる需給ネタはあります。
とはいえ、これらは主にプライム上場の大型株の話。スタンダードやグロースに上場する中小型株には気にすべきことでもありません。今回は、スタンダードやグロース市場に上場する銘柄にとって、長い目で見てプラスとなる先月飛び出した朗報を紹介します。
先月19日、日本取引所グループが2028年に大幅変貌する「次期TOPIX」の見直し概要を公表しました。その中で話題になったのが、TOPIX採用銘柄の対象にスタンダード、グロースが加わったことでした。今のTOPIX採用銘柄は2,174ですが、2028年には現在より4割カットした1,200銘柄ほどに絞り込む計画のようです。
この発表があった6月19日の終値を100として、スタンダード市場指数、グロース市場指数、そしてスタンダードTOP20指数(スタンダード上場の時価総額などで上位20銘柄のみ)、グロースCore指数(グロース上場の時価総額などで上位20銘柄のみ)の指数の動きを相対比較してみました。
発表翌日、スタンダードTOP20指数とグロースCore指数が大幅高。これは、各市場の上位20銘柄であれば、「次期TOPIX」に採用される可能性が高いため。そして、採用された場合は、80兆円以上とされる莫大(ばくだい)なTOPIXパッシブファンドに組み入れられることになり、指数ウエートに相当する買い需要が確実に発生するためです。
「次期TOPIX」に最初に入る1,200銘柄の判定は、2026年8月最終日の終値ベースです。この時点で浮動株ベースの時価総額で上位に入ること(※流動性にも基準はある)が鍵ですが、現在の浮動株ベースの時価総額上位1,200位を調べると、浮動株時価総額で「200億円強」がボーダーラインになりそう。
このまま現状レベルの時価総額を維持しつつ(もちろん2026年8月までにさらに上げておければ尚良し)、出来高を増やせれば(株式分割や優待新設などで増やせる可能性は多い)、「次期TOPIX」入りが狙える時価総額の大きいスタンダード、グロース銘柄には注目です。
需給インパクト大の未来のTOPIX採用候補
【条件】
(1)スタンダード、グロース上場で時価総額700億円以上
(2)アナリストレーティングの付与無し
(3)売買代金25日MAが5億円未満
※売買代金25日MAが少ない順
コード | 銘柄名 | 時価総額 (億円) | 売買代金 25日MA(億円) |
---|---|---|---|
4365 | 松本油脂製薬 | 783 | 0.04 |
2653 | イオン九州 | 953 | 0.13 |
2588 | Pウォーター | 876 | 0.16 |
8066 | 三谷商事 | 1,943 | 0.21 |
8198 | MV東海 | 1,006 | 0.23 |
4628 | エスケー化研 | 1,473 | 0.28 |
4781 | 日本ハウズイング | 992 | 0.63 |
2329 | 東北新社 | 729 | 0.69 |
2790 | ナフコ | 892 | 0.76 |
3733 | ソフトウェア・サービス | 799 | 1.02 |
7177 | GMOFHD | 962 | 1.32 |
4966 | 上村工業 | 1,960 | 1.81 |
7412 | アトム | 1,403 | 2.35 |
8890 | レーサム | 984 | 3.53 |
その中でも、売買が少ない銘柄にうまみがあります。TOPIXに入る際にはパッシブファンドから買い注文が発生するわけですが、普段の出来高が少ない銘柄の方がそのインパクトは大きくなるため。時価総額が700億円以上で、1日当たりの売買代金が5億円未満、そしてプライム市場銘柄では無いことでアナリストが誰もレーティングを付与してくれていない銘柄のみ残してみました。
出てきたのは、スタンダード、グロース合わせて全14銘柄で、いずれもスタンダード上場銘柄でした。売買代金(流動性)を高める必要もありますので、これら銘柄が株式分割や還元強化策などを発表した際は、「次期TOPIX」入りを意識していると判断し、よりポジティブに見て良いと思われます!
(岡村 友哉)
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