1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

イベントで見えた投資家の不安とプラチナの将来性

トウシル / 2024年7月9日 7時30分

イベントで見えた投資家の不安とプラチナの将来性

イベントで見えた投資家の不安とプラチナの将来性

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の吉田 哲が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
イベントで見えた投資家の不安とプラチナの将来性

「株高」に不安を感じる個人投資家の方々

 7月6日(土)、楽天証券 25th ANNIVERSARY FES ~DAY1:投資戦略フェス~に参加し、たくさんの個人投資家の方々と直接、お話をしました。大変に楽しく、有意義な時間でした。また、筆者は中規模会場と小規模会場でそれぞれ約30分間、講演をする機会があり、個人投資家の皆さまがどの話題に強い関心があるのかを肌で感じることができました。今回のレポートは、同イベントの参加記です。

 当社のサービスの一つである「金・プラチナ取引」を訴求するブースは「駆け込み寺」の様相を呈していました。S&P500種指数やオールカントリー関連の金融商品を保有しているが、米国株が暴落するかもしれず、その不安に対して何か策を講じなければならないと考えている方々が多く集まった印象を受けました。

 同ブースで待機していた筆者を含むスタッフに声をかける方、ブース前で立ち止まって資料を手に取る方、ケースはさまざまですが、会話がはずんで「なぜ金(ゴールド)に興味を持たれたのか?」と聞くことができた方々のほとんどが「今の株高が不安だから」という趣旨の言葉を述べました。中には「(株価が)気持ちが悪いくらい上昇している」と述べた方もおられました。

 教科書的には「株高は好景気の象徴」です。国内外の株価が高騰している今、なぜ不安を感じてしまうのでしょうか。「株価が高いことは悪いことではないように感じますが?」と尋ねると、複数の方から「なぜ高いか分からない」「好景気を実感できない中で株だけが上がっている」という趣旨の返答がありました。

図:S&P500、金(ゴールド)、原油の価格推移(1984年1月を100として指数化)

出所:世界銀行およびブルームバーグのデータを基に筆者作成

 株価が上昇し、ご自身が保有されている金融商品の評価額は増えてはいるものの、その理由が分からず、実感も湧かず、かえって株価が暴落するのではないかという不安が増している、そしてその不安を解決し得る策の一つとして金(ゴールド)に関心を寄せられている、という状況だと感じました。

 こうした声を受け、「もっとポートフォリオを分散したい方へ、コモディティの世界をご紹介!」と題した中規模会場での講演では、重点を置くポイントを変更しました。上の図と下の図は、足元の株高を説明する際に用いたスライドです。

 上の図で、異常とも言える米国株の上昇率が、金(ゴールド)や原油などのコモディティ(国際商品)価格の上昇率をはるかに上回っている様子を説明しました。

 そして下の図を用い、半年から1年程度先の「思惑」を織り込んで推移するとされる株式が、2010年ごろに始まった世界的なスマートフォンの普及に伴うSNSの利用拡大を受けた情報の受け手と発信者の関係の変化をきっかけとした「思惑優先」のムード拡大によって、異常なまでの、理由が定かでない、実感が湧かない暴騰劇を演じていると、説明をしました。

図:情報の受け手と発信者の関係と市場への影響

出所:筆者作成

2022年の金(ゴールド)国際相場は「上昇」

 小規模会場での講演では数十席ある席が埋まり、立ち見の方もおられました。こうした環境の中で「徹底議論!王道の金(ゴールド)、裏道のプラチナ」と題して講演をしました。その中で、集まった皆さまに「2022年の金(ゴールド)の国際相場は上昇・下落?」という問いを投げかけ、上昇・下落、いずれかに挙手をしていただきました。

 2022年が、ウクライナ戦争が勃発したり、インフレ(物価高)が目立ったりした年であったことを手掛かりに、ほとんどの方が「上昇」に手を挙げられましたが、正解は、以下の図のとおり「下落」でした。

 金(ゴールド)の国際価格は、1,820.10ドル(2021年12月31日)から1,812.35ドル(2022年12月30日)に下落しました。ここでは、現代の金(ゴールド)相場が有事だけで動いていないこと、複数のテーマが同時進行していること、これらがもたらす上昇・下落の圧力を相殺しなければならないことを、述べました。

図:金(ゴールド)相場の核心部を照らす超良問とその解答

出所:LBMAのデータを基に筆者作成

 以下の図は、その2022年の金(ゴールド)市場の環境を示しています。複数のテーマとは、短中期の時間軸に関わるテーマ、有事ムード、代替資産(株の代わり)、代替通貨(米ドルの代わり)の三つです。確かに2022年は、有事ムードと代替資産起因の上昇圧力はあったものの、代替通貨起因の強い下落圧力に相殺され、価格が下落しました。

 先ほどの図「情報の受け手と発信者の関係と市場への影響」で触れた情報を取り巻く変化は社会における大きな変化の一つです。これを含むさまざまな変化が市場環境を大きく変え、その結果、以前の常識が通じなくなったケースは他の市場でも散見されています。金(ゴールド)市場だけが変化したのではなく、それを取り巻く社会全体が変化したのです。

2022年の金(ゴールド)国際価格下落の背景

出所:筆者作成

「SNSとESGが世界分断の一因」に納得感あり

 小規模会場での講演で、皆さまの目が最もスクリーンにくぎ付けになったのが、以下のスライドを示した時でした。金(ゴールド)市場に大きな影響力を持つ中央銀行が、2010年以降毎年、金(ゴールド)の保有高を増やしている背景に世界分断があることを説明していた時でした。

図:自由民主主義指数(2023年)

出所:V-Dem研究所および国連のデータより筆者作成

 V-Dem研究所(スウェーデン)は毎年、世界各国の民主主義の状況を数値化して多数の関連する指数を公表しています。上記の自由民主主義指数もその一つです。青が濃ければ濃いほど自由で民主的な度合いが高く、オレンジが濃ければ濃いほど自由で民主的な度合いが低いことを意味します。

 日本に住んでいるとほとんどその感覚はありませんが、率直に言って今、世界は分断状態にあります。自由と民主主義を正義とする欧米が中心の西側と(日本を含む)、そうでない非西側の間に明確な分断が生じています。人口シェアで言えば、前者が17%、後者が77%と、圧倒的に自由で民主的な度合いが低い国が優位です。

 同指数の推移を確認すると、世界分断が目立ち始めたのは、2010年ごろからでした。そして中央銀行の買い越しが始まったのも、2010年ごろからでした。

 筆者は講演で、中央銀行が金(ゴールド)の保有高を増やし続ける背景にある、世界に不安をもたらす「世界分断」は、以下の経路が一因で発生したと述べました。そして、世界分断は、2010年ごろから目立ち始めた「ESG」と「SNS」が一因で生じた可能性があると説明しました。

図:2010年ごろ以降の世界分断発生と金(ゴールド)価格上昇の背景

出所:筆者作成

 西側がESG(環境、社会、企業統治)を進める中で、非西側に配慮を欠いた場面があったこと(一方的すぎる石油否定)や、民意がSNS上で濁流と化し、大規模な選挙で民主的とは言い難い結果になったり(2016年の米大統領選、BREXITなど)、武力によって複数の国家が転覆したり(アラブの春)して民主主義の行き詰まりが目立ったことを考えれば、ESGとSNSが世界分断の一因であることを否定することはできません。

 上の図のとおり、世界分断が金(ゴールド)価格だけでなく、原油、食品、非鉄金属などの価格を押し上げ、世界的なインフレを加速させています。

 世界分断を解消するためには、ESGとSNSを人類から取り上げることが有効ではあるものの、これまで莫大(ばくだい)な投資を続けてきたESGを止めたり、インフラと化したSNSを使わないようにしたりすることはできないと考えられます。

 これにより今後も、世界分断をきっかけとした中央銀行の買い越しが続き、長期視点で金(ゴールド)相場が上昇する可能性があると述べました。

 講演後、複数の方から直接、世界分断について理解が深まった旨、お言葉をいただきました。「世界全体の視点はこれまでなかった」という趣旨の言葉もありました。世界全体の視点は、金(ゴールド)や原油などのコモディティだけでなく、米国や日本の株式の分析でも重要であると、筆者は考えています。

「価格低迷が積立を有利にする」ことを理解

 中規模会場での講演の後半は、コモディティ関連の具体的な投資手法を述べました。集まった皆さんに「積立投資を前提として、次の三つのうち、最終的な利益が最も大きくなったのは、どのパターンでしょうか?」と質問をしました。

図:積立シミュレーション(3パターンの価格推移) 単位:円/グラム

出所:国内大手地金商のデータを基に筆者作成

 挙手をしていただいたところ、暴騰パターン、暴落パターン、低迷パターン、いずれも3分の1前後の方の挙手が見られました。暴落パターンと低迷パターンに手を挙げた方は、積立投資の勘所を知っておられると感じました。特に低迷パターンに手を挙げた方の多さに、良い意味で筆者は驚きました。正解は以下の通り、低迷パターンでした。

図:積立シミュレーション(3パターンの累積資産額) 単位:百万円

出所:筆者作成

図:積立シミュレーション(3パターンの累積保有数量) 単位:グラム

 積立投資は、毎月の投資金額が変わらなかった場合、価格が下がれば下がるほど、保有数量が増えやすくなりますが、もともと低迷していたほうが、保有数量を増やす上ではなお有利になります。これらの点を基に考えれば、今まさに急上昇している銘柄は、長期を前提とした積立投資に適さないと言えます。

プラチナは金(ゴールド)ほど有名ではない

 2回の講演いずれでも、プラチナ積立が長期投資の手段として有望と考える旨を述べました。

 2015年以降、価格が低迷した主因である自動車排ガス浄化装置向けの需要が足元、明確に回復傾向にあり2024年は2015年を上回る見通しさえ出ていること、長期視点で将来的に訪れる可能性がある水素社会において、グリーン水素の生成装置や水素を充填して走行する燃料電池車の発電機などの分野で、プラチナが活躍する可能性があるためです。

図:プラチナと金(ゴールド)の国際価格 単位:ドル/トロイオンス

出所:LBMAのデータを基に筆者作成

 積立投資を効率よく行うためには、(1)価格の下落・低迷を利用して保有数量を効率的に増やすこと、(2)長期視点で価格反発が起き得ること、の二つが欠かせません。プラチナは、この両方を満たし得る銘柄であると筆者は考えています。

 複数の投資家の方から、「今のところ、プラチナには注目していない」「プラチナが世界的に金(ゴールド)のようにメジャーな貴金属になれば、考えてもよいと思っている」という趣旨の言葉をいただきました。確かに、講演中にプラチナを紹介した際、けげんそうな表情をされた方が何人かおられたのも事実です。まだまだプラチナの知名度は低いと言わざるを得ません。

 ですが、今回のイベントを経て改めて、筆者は相場格言「人の行く裏に道あり花の山」を強く認識しました。まさにこれは、小規模会場で行った講演のタイトル「王道の金(ゴールド)、裏道のプラチナ」のとおりです。まだ注目が集まっていないからこそ、プラチナは「裏の道」であり、花の山(利益)に近づく道になり得ると考えています。

【お礼】当該イベントでお話をさせていただいた皆さま、講演を聞いていただいた皆さま(オンラインを含め)、誠にありがとうございました。皆さまより、たくさんのヒントをいただきました。本当にありがとうございました。いつかまた、別のイベントでお会いできるのを、楽しみにしております。

[参考]積立ができる貴金属関連の投資商品例

純金積立(当社ではクレジットカード決済で購入可能)

純金積立・スポット購入

投資信託(当社ではクレジットカード決済、楽天ポイントで購入可能。以下はNISA成長投資枠対応)

ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
三菱UFJ 純金ファンド
ゴールド・ファンド(為替ヘッジなし)

関連ETF(NISA成長投資枠対応。かぶツミを利用することで積み立てが可能)

SPDRゴールド・シェア(1326)
NF金価格連動型上場投資信託(1328)
純金上場信託(金の果実)(1540)
NN金先物ダブルブルETN(2036)
SPDR ゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)
iシェアーズ ゴールド・トラスト(IAU)
ヴァンエック・金鉱株ETF(GDX)

(吉田 哲)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください