日経平均の今後を占う上での安川電機の決算はどうだった?
トウシル / 2024年7月11日 7時30分
日経平均の今後を占う上での安川電機の決算はどうだった?
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の白石 定之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「日経平均の今後を占う上での安川電機の決算はどうだった?」
安川電機の決算発表に注目!日経平均との関連性は?
日経平均株価(225種)は最高値を更新する強い動きとなっています。また、今後の動向を見る上で、今月下旬から続々と発表される3月決算銘柄の第1四半期決算発表の内容に注目している方も多いと思います。
日経平均の寄与度の高い銘柄の中にはグローバルに展開する製造業が多いので、関連する企業の決算には注目が集まるところかと思います。そういった企業の決算内容を推測する上で参考になるのが、2月決算銘柄で、3月決算銘柄よりも半月から1カ月程度早く発表される安川電機(6506)の決算です。
なぜ、私が安川電機の決算発表に注目しているかというと、もう5年以上も前になりますが、2018年10月に安川電機が中間決算を発表した時のことがあるからです。
2018年当時、安川電機を含む多くのグローバル製造業の業績は順調に推移していました。しかし、10月10日に安川電機が中間決算の発表で通期業績見通しの下方修正を出しました。
その後、10月下旬から3月にかけて決算銘柄の中間決算が続々と発表される中で、アナリストの業績見通しの下方修正が相次ぎ、2018年10月初めには2万4,000円を付けていた日経平均が、12月下旬には2万円を割り込む動きとなりました。
2025年2月期、安川電機の第1四半期決算のポイントと株価動向
このような動きを踏まえて、今回、第1四半期決算の発表が7月5日にありましたので、その内容について見ていきたいと思います。
見ていくポイントは次の4点です。
- 2025年2月期の第1四半期における売上高、営業利益のコンセンサス予想に対する達成率は?
- 足元の受注額の前期比、前年比は?
- 決算の発表前後で、会社の業績見通しとコンセンサス予想の変化は?
- 決算の発表後、株価の動きは?
では、一つ一つ見ていきましょう。
(1)売上高、営業利益のコンセンサス予想に対する達成率は?
安川電機の第1四半期における売上高、営業利益のコンセンサス予想に対する達成率は次のとおりです。
(表1)安川電機の売上高・営業利益のコンセンサス予想に対する達成率
第1四半期のコンセンサス予想は、もともと1年前に比べて減収減益の見通しとなっていましたが、そのコンセンサス予想に対して着地した数字は、売上高は97.6%、営業利益は75.8%とともに未達成でした。特に営業利益のほうはコンセンサス予想を大きく下回る形となっています。
(2)受注額の前期比、前年比は?
(表2)安川電機の受注動向
直近の第1四半期の受注額は1,351億円で、前期比で+22.7%、前年比で1.5%減となっています。
これは、安川電機の受注額には季節性があり、第1四半期は比較的多くなる傾向がありますが、前期比で22.7%という大幅なプラスになっているので、底を脱してきた感があります。
ただ、前年比で見てみるとまだ微減ながらも減少しており、1年前と比較してみると、大幅な円安というプラス要因がありながら、金額が横ばいということは、数量で見ると減少していることが考えられます。従って足元の受注動向は決して良い状態とはいえない状況であることが推測されます。
(3)決算の発表前後で、会社の業績見通しとコンセンサス予想の変化は?
(表3)決算発表前の安川電機の業績見通し(7月5日時点)
(表4)決算発表後の安川電機の業績見通し(7月9日時点)
そして、決算発表前後を見てみると、会社見通しは変わらずで、コンセンサス予想は、今期の営業利益は下方修正となっている一方で、それ以外は上方修正となっています。
ただ、7月5日に決算発表されたばかりで、安川電機をカバーしているアナリスト13人のうち、まだレポートを出していないアナリストが7人います。レポートを出したアナリストにおいても、今後、数字を修正してくる可能性があるので、今回の決算の発表後アナリストの見通しは、来期・再来期で上方修正とはまだ断言できないと考えています。
また、直近の第1四半期の受注額は1,351億円で、単純に4倍して年換算すると、5,404億円となります。
これに対して、会社見通しは5,800億円、コンセンサス予想は5,833億円と、400億円程度大きい数字となっているので、その達成には、今後さらに受注を伸ばしていく必要があると考えています。
(4)決算の発表後、株価の動きは?
決算発表前後の株価の動きは次のとおりです。
(表5)安川電機の株価の動き
決算を発表した翌営業日の7月8日は売り気配で始まり、その後、若干戻す局面もありましたが、終値は始値よりも低い262円の大幅安となっていて、ネガティブに捉えられた形となっています。
以上をまとめると、次のようになります。
- 2025年2月期の第1四半期決算は、コンセンサス予想に対して未達成
- 第1四半期の受注額は前年比より横ばいで、明確な回復はまだみえない状況
- 今期の会社見通し、コンセンサス予想は増収増益の見通しも、第1四半期の決算内容からは未達成の可能性があり、達成には今後、さらなる受注増が必要
- 株価は、決算が発表された翌営業日に下落し、ネガティブな反応
このような状況なので、今回の安川電機の決算においては、少なくとも良い内容だったとは言えず、先々、業績見通しの下方修正もあり得ると考えています。
安川電機の決算分析から見る製造業の現状とリスク
しかし、他のグローバルに展開する製造業も安川電機と同じような状況にあるかというと、半導体製造装置業界、自動車業界、電子部品業界など、新型コロナウイルス感染症が拡大した後の状況が各業界によって異なっているので、これから発表される3月決算銘柄の第1四半期決算において、安川電機と同じような形になっている企業は、安川電機と同じような業界にいる企業に限られると思っています。
ただ、工作機械の受注動向は、設備投資の動向をいち早く表すものといわれています。安川電機の決算内容は、強気にみることができる内容ではなかったので、製造業、強いては、日経平均の今後の動向を見る上で、強気一辺倒は危うく、やはり慎重さは必要になってくると私は考えています。
投資はあくまでも自己責任で。
(白石 定之)
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