10年後のS&P500を予想!相場上昇トレンドのドライバーは?(香川睦)
トウシル / 2024年7月12日 7時0分
10年後のS&P500を予想!相場上昇トレンドのドライバーは?(香川睦)
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著者の香川 陸が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「10年後のS&P500を予想!目先は「夏枯れ相場」のリスクも」
ナスダックの高値更新が寄与しS&P500の強気相場続く
米国市場ではS&P500種指数が年初来で37回目となる最高値更新となりました(10日)。6月・雇用統計などマクロ指標が労働市場とインフレ(物価上昇率)の減速を印象付け、債券市場では政策金利の行方に敏感とされる2年債金利が4.6%台に低下。
パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が9日と10日の議会証言で、高金利が労働市場に及ぼすリスクに言及しハト派寄りだったこともあり、金利先物市場(Fed Watch)は「9月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げ予想確率」を約76%、「12月FOMCでの一段の利下げ予想確率」を約98%と見込んでいます(10日)。
金利低下見通しを受け、S&P500とナスダック総合指数はともに7営業日連続で上昇しました。
図表1は、S&P500の主力構成銘柄を時価総額の降順に示し、「年初来騰落率」と「7月来騰落率」を一覧したものです。
6月18日に最高値を付けたエヌビディアが足場固めに転じた一方、AI(人工知能)を活用した収益化に取り組むGAFAM(アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズ)はそれぞれ7月に最高値を更新しました。
また、今年になり株価が出遅れていたテスラは「8月8日に公表されるロボタクシー(自動運転車)事業」への期待が先行し、7月は急反発しています。
ただ、例年の季節性(長期市場実績)に加え、大統領選挙を巡る不透明感が高まっている状況もあり、8月以降に株式市場が「夏枯れ相場」に転じる可能性はあり注意が必要です。
<図表1>S&P500の高値更新はビッグテック株がけん引している
「10年後のS&P500は1万4,000」を予想する前提条件
米国株式市場を象徴するS&P500の過去20年(2005年以降)における暦年騰落率を平均すると+9.4%でした。この20年には、2008年の金融危機(リーマン・ショック)でS&P500が38.5%下落、2022年のインフレショック(金融引き締め)で19.4%下落した年も含まれています。
こうした中、長期視点に立つと2004年末に1,221ポイントだったS&P500は20年かけて4.6倍に成長してきました。特に、2019年以降のS&P500の暦年平均騰落率は+15.7%と成長率を高めています。相対的に利益成長期待が高いビッグテック(時価総額が大きいGAFAMなどナスダック主力銘柄)のS&P500におけるウエートが増えてきたことが主要因です。
今後10年についても、米国は「世界最強の資本主義経済」であり続け、合法移民の流入で労働人口増勢が続き、AIの進展(後述)で産業界と企業の生産性が向上していくと予想しています。2025年から10年の平均騰落率を10%と仮定した上で「複利効果」を想定すると、2034年末までにS&P500が1万4,000に到達する道筋が視野に入ってきます(図表2)。
<図表2>S&P500は2034年末までに1万4,000を目指すと予想
特に、2022年末にスタートした「生成AIブーム」で、エヌビディアに象徴されるAI向け半導体企業だけでなく、クラウド事業やデータセンターに積極投資してAIの収益化を目指しているGAFAMなど関連銘柄が時価総額ウエートを増加させているトレンドは軽視できません。
とはいえ、今後も景気変動、金利変動、地政学的リスクなどに起因する需給変動次第で株価が揺れる局面も想定されますので長期投資が肝要となります。図表2の破線で示した株価軌道はあくまでイメージであり、その変動の大小や投資成果を保証するものではありません。
今後10年の成長ドライバーは「AI革命の進展」とみる
米国株の成長を見込む上で重要なドライバー(原動力)となるのが「AI革命の進展」とその経済的効果と考えています。株式市場は大小のスピード調整や新陳代謝を経ながら、AIの進化が生み出す経済、社会、生活の変化に応じた付加価値を提供していく企業群がS&P500の長期トレンドに寄与していくと見込んでいます。
米国の大手企業のCEO(経営者)は常にビジネスの効率化を考え、自社が保有しているデータの活用や業界データを分析し、事業やサービスの収益性を改善させることで(株価上昇を含む)株主還元と向き合っています。
図表3は、世界のAI市場規模(ハードウエア、ソフトウエア、サービス分野の合計規模)の長期見通しを示したものです。2032年には2兆7,450億ドル(約440兆円)に拡大し、2022年の実績(1,290億ドル)に対して約21.3倍に成長していくと予想されています。
<図表3>世界のAI市場規模は急拡大していく見通し
AIはチャットでの活用(生成AI)から広く製造業、サービス業、医療業界などに波及するAGI(汎用AI)に進化し、産業界の付加価値創造に寄与していくと見込まれています。こうした過程で、「AIが人類の英知を超えてくる局面(シンギュラリティー)」が想定していたよりも早く到来するとの見方が有力です。
AIの英知は指数関数的に進化し人類の英知の総和を超え、ASI(人工超知能=Artificial Super Intelligence)に進化するとの説も浮上しています。
ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長は6月21日、「AGIを目指すことが先端のAI研究者のテーマであり、5年以内、場合によっては3年ぐらいでAGIの時代が訪れる」「AGIが脳の神経細胞のようにつながり、人間の1万倍賢くなるのがASIである」と述べました。
AIの進化がロボティクス(ヒューマノイド)、自動運転、医療技術と結びつき、経済、社会、生活を変化させるダイナミズムを織り込む米国株式市場のトレンドを予想しています。
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(香川 睦)
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