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国内証券会社とはかなり違う!海外の証券会社で取引した場合の税金

トウシル / 2024年7月20日 11時0分

国内証券会社とはかなり違う!海外の証券会社で取引した場合の税金

国内証券会社とはかなり違う!海外の証券会社で取引した場合の税金

海外の証券会社で取引していますか?

 今や外国株式も国内の証券会社で気軽に買えるようになりました。それでも、さまざまな理由で海外の証券会社で取引をしている、という方もいると思います。

 例えば国内の証券会社では扱っていない銘柄を売買している、あるいは外資系企業に勤めていて、その親会社である外国企業の株をストックオプションなどにより取得し、保有しているケースなどです。

 実は、海外の証券会社で取引をしている場合、その税制の取り扱いが国内の証券会社と異なる点がいくつかあることをご存じでしょうか。

 今回は少しマニアックではありますが、海外の証券会社で取引した場合の税制の取り扱いを、国内の証券会社で取引した場合との比較をすることでご紹介したいと思います。

売却益や配当金の扱いは?

 海外の証券会社で取引をしていて、売却益が出たときの日本国内での課税は基本的に国内の証券会社の場合と同様です。売却益に対して20.315%の税率で課税されます。

 なお、例えば米国の証券会社であれば、租税条約により米国での売却益の課税はされません。

 ただし、海外の証券会社では特定口座を開設できませんから、売却益については確定申告が必要です。

 また、配当金については国内の証券会社を通じて購入した株であれば20.315%の源泉徴収がされますが、海外の証券会社での保有株からの配当金には源泉徴収がされません。

 そのため、原則として配当金を確定申告する必要があります。このとき、「総合課税」と「申告分離課税」のいずれかを選ぶことができます。他の所得が少ない方は総合課税が、多い方は申告分離課税が有利になることが多いです。

 もし海外の証券会社のほか、国内の証券会社での保有株の配当金もある場合、それらも確定申告するのであれば、確定申告する配当金の課税方法を「総合課税」か「申告分離課税」に一本化する必要があります。海外の証券会社での配当金と、国内の証券会社配当金の双方を合算して、有利な方法を選択することになりますので少し複雑です。

売却損が生じた場合は?

 海外の証券会社と国内の証券会社とで、税制面での最も大きな違いは、売却損が生じた場合です。

 国内の証券会社の場合、売却損が生じたときはまず配当金と損益通算することができます。そして、損益通算しても残ってしまった損失は、確定申告をすることで最大3年間繰り越すことができます。

 ところが海外の証券会社の場合は、売却損が生じたとき、配当金と損益通算することができないのです。

 さらに、売却損を翌年以降繰り越すこともできず、損失は事実上切り捨てとなってしまいます。

数値例で説明:海外の証券会社の取引がある場合

 例えば、国内の証券会社1社のみで取引しているケースであれば下記のように、

  1. まず同じ年の売却益と売却損を相殺(特定口座であればそのように証券会社が計算してくれます)
  2. 売却損が生じている場合は配当金を損益通算
  3. それでも残った損失があれば、確定申告して翌年度以降に繰り越すことができます

 下の事例でいえば、(1)売却損マイナス200と(2)配当金30を損益通算でき、(3)残った損失マイナス170は翌年以降に繰り越しできます。

  売却損益 配当金 損益通算後
A株 +300 20  
B株 ▲500 10  
  (1)▲200 (2)30 (3)▲170

 一方、海外の証券会社の取引がある場合は扱いがだいぶ異なります。国内R証券と海外S証券で取引がある場合、両証券で生じた同じ年の売却損益はネットして計算します。

 しかし、両証券をネットして海外S証券の売却損が残ってしまった場合、配当金との損益通算はできませんし、損失の翌年度以降の繰り越しもできません。

 下の事例でいえば、(1)売却損マイナス200を(2)配当金30と損益通算できず、売却損マイナス200は翌年以降へ繰り越しもできず、丸々切り捨てになってしまうのです。

  売却損益 配当金 損益通算後
国内R証券 +300 20  
海外S証券 ▲500 10  
  (1)▲200 (2)30 損益通算不可

 なお、上記とは逆で国内R証券が売却損、海外S証券が売却益の場合、(1)ネットした売却損マイナス200と(2)配当金30は損益通算でき、その後(3)残った損失マイナス170を確定申告により最大3年間繰り越すことができます。

  売却損益 配当金 損益通算後
国内R証券 ▲500 20  
海外S証券 +300 10  
  (1)▲200 (2)30 (3)▲170

 つまり、売却損の発生元が海外証券だったときは、配当金との損益通算も、翌年以降への損失の繰り越しもできないことになります。

オプション取引、海外FX取引なども要注意

 筆者の周りには、海外の証券会社にて、米国株の個別株オプション取引を活用して株式投資している方が結構います。また、海外のFX取引をされている方もいらっしゃるでしょう。

 実はこれら、海外の証券会社やFX事業者と先物、オプション、FXなどの取引をしている場合も、税制の扱いが国内の証券会社を通じた場合とかなり異なる点に注意が必要です。

 国内の証券会社を通じて、先物、オプション、FX、CFDなどの取引を行った場合、その利益に対して税率20.315%の申告分離課税の雑所得となります。また損失が生じたら確定申告することで翌年以降3年間繰り越しができます。

 しかし、これらを海外の証券会社で行った場合は、総合課税の雑所得となってしまいます。
利益が大きい場合は、50%以上の税率になってしまう恐れもあります。また、損失の繰り越しはできず、切り捨てになってしまうのです。

 海外の証券会社が絡むと、税金の取り扱いが国内の証券会社と異なる点があるため、かなり難しくなっています。不明な点は税務署や税理士に確認することをお勧めします。

(足立 武志)

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