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セブン&アイ、イオン:コロナ後の成長が見えてきた「小売株」投資戦略(窪田真之)

トウシル / 2024年7月18日 8時0分

セブン&アイ、イオン:コロナ後の成長が見えてきた「小売株」投資戦略(窪田真之)

セブン&アイ、イオン:コロナ後の成長が見えてきた「小売株」投資戦略(窪田真之)

小売業は成長産業

 人口が減少する日本で、小売業は衰退していくというイメージを持たれていたこともありました。ところが、実際は、その逆でした。コロナ前の2019年度決算で、東京証券取引所に上場している小売業で時価総額上位20社のうち、8割以上が最高益を更新していました。つまり、コロナ前は明確に成長産業でした。

 小売業はコロナ禍で一時、深刻なダメージを受けました。ただし、リオープン(経済再開)が進む今、再び活況になりつつあり、最高益を更新する企業が増えています。コロナ後の成長産業として、小売業に改めて注目します。

 ところで、人口の減少する日本で、小売業はなぜ成長産業なのでしょうか? 小売業は今、ただの内需産業ではありません。ただの流通業でもありません。商品開発・製造まで支配する「製造小売業」として、アジアや米国で成長する産業となっています。

 最高益を更新する小売業の成長ドライバーは、五つあります。【1】【2】【3】が特に重要です。

小売業の五つの成長ドライバー

出所:筆者作成

【1】海外(主にアジア)で成長

 内需株だった小売業が、近年は海外、特にアジアで売上・利益を拡大させています。品質やサービスに厳しい日本の消費者に鍛えられた小売業のビジネスモデルが、アジアで高く評価されるようになっています。アジアで、富裕な中間層が育ってきていることが、追い風となっています。

 カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(9983)など、利益の過半を海外で稼ぐ小売業も出ており、小売業はもはや純粋な内需産業とはいえません。

 アジアで高い競争力を有する日本の小売業も、欧米では苦戦を強いられています。そうした中、セブン&アイホールディングス(3382)傘下のセブン‐イレブン・ジャパンは、米国で高収益をあげています。米国で稼ぐ、数少ない日本の小売企業となっています。

【2】製造小売業として成長

 利益率の低いNB(ナショナルブランド品)の販売を減らし、自社で開発したPB(プライベートブランド品)を増やすことで利益率を高め、競争力を高め、売上・利益を拡大させてきました。

 自社ブランド品について、協力工場で商品開発・生産管理を全て自社で行い、全量を買い取ることから「製造小売業」とも言われます。初期のPBは、中国などで生産することにより、低価格を実現する「価格訴求型」PBが主体でした。今は、消費者に驚きを与える機能や品質を備えた優れものである「価値訴求型」PBが主体となって、小売業の成長をけん引しています。

 住居製品・家具店を展開するニトリホールディングス(9843)は、消費者ニーズを掘り起こすさまざまな住居・生活関連PBを開発し続けて、成長しています。早い時代から、消費者から高い支持を得てきた「無印良品」を展開する良品計画(7453)のお株を奪う商品開発力を発揮しています。

 一方、百貨店や家電量販店の一部はNBの販売が多く、この取り組みが遅れています。

 大手スーパーはかつてNB中心の販売で、PBで飛躍する専門店に売上を奪われていました。ところが、イオン(8267)は総合小売業として成長するビジネスモデルを完成させたと、私は判断しています。近年、衣料品・食品などで競争力の高いPBを開発し、消費者から高い評価を得ています。

【3】ネット販売で成長

 ネット販売が本格成長期を迎えています。ZOZO(3092)MonotaRO(3064)などがネット小売成長企業の代表です。大手スーパーや百貨店でも最近ネット販売を強化する努力を始めています。

 コロナ禍でリアル店舗での買い物ができなくなった2020年には、ネット販売が大きく伸びました。その後、コロナが去ってリアル経済が復活すると、一時ネット販売が鈍化しました。ただしそれは一時的でした。有店舗販売から、ネット販売へシフトする流れは今も続いています。

「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、これまで国内および海外の有店舗販売を中心に成長してきましたが、ネット販売を次の成長の柱にする方針を表明しています。

【4】サービス消費の拡大

 日本の消費構造の変化として、モノ消費からコト消費へのシフトがあります。少子高齢化が進む中、モノに対する需要は頭打ちとなってきています。一方、医療、介護、保育、旅行、ジムなど、良質なサービスに対する需要は拡大の一途です。

 サービス産業では、オリエンタルランド(4661)など数多くの成長企業が出ています。小売業も、さまざまな形でサービス消費の拡大を取り込んでいく必要があります。

 セブン‐イレブンなどのコンビニエンスストアは、早くから公共料金振り込み、銀行ATM、イートイン(店内飲食)などサービス業を取り込んだ展開をしてきました。イオンのモールや、セブン&アイ系列のセブンパークでは、外食や映画などさまざまなエンターテインメントを取り入れて、家族で楽しめる空間を作っています。

【5】インバウンド(訪日外国人客の買い物)需要を取り込んで成長

 コロナ前まで、訪日外国人客数の成長が続いてきました。百貨店や家電量販店などがその恩恵を受けてきました。ところが、コロナ禍で、インバウンド消費は一時、前年比99%近く減少しました。一時的に壊滅的なダメージを受けました。

 それが今、コロナ禍が去って、外国人客が再び急増しています。それに伴って、インバウンド消費が再び拡大しています。インバウンドが、百貨店などの売上拡大に寄与しています。

訪日外国人客数の推移:2003~2024年(1~4月)

出所:JNTO(日本政府観光局)より楽天証券経済研究所作成

 ただし、訪日外国人客による買い物需要が、今後右肩上がりで成長するとは考えられません。リピーター(日本に来るのが初めてではない外国人)が増えると、だんだん大量のお土産を買って帰ることは少なくなり、代わりに日本での体験にお金をかけるようになります。

 つまり、インバウンドでも、モノ消費からコト消費への移行が起こっています。観光業やテーマパーク、新幹線の収益拡大は続くと考えられますが、百貨店でのインバウンド消費拡大は、いずれ頭打ちになる可能性があります。

 実は、コロナ禍でダメージを受ける前にも、一度、インバウンド消費がダメージを受けた年があります。2016年です。2015年まで、インバウンド消費は中国人観光客の「爆買い」と言われる買い物によって、大きく伸びていました。

 高級炊飯ジャーを一人で10個も買うといった買い方がみられました。これは、お土産ではなく、中国に持ち帰って転売して利益を得る目的だったと考えられます。

 ところが、こうした転売目的の大量買いを中国政府が問題視し、2016年には海外で購入した商品を中国に持ち込む際にかかる関税を大幅に引き上げました。その後、中国人観光客による日本での大量買いは減少しました。

 今また、円安によって割安になった日本旅行が、世界中で人気となっています。昨年暮れから外国人客数が前年同月比で過去最高を更新しています。インバウンド消費も再び拡大しています。それでも、かつてのような転売目的の大量買いが復活することはないと考えられます。

コロナ後の投資戦略:セブン&アイHD、イオンなどに注目

 小売業の成長ドライバーが、コロナ前、ウィズ・コロナ、コロナ後でどう変わっていくか、私の考えを示したのが、以下です。

小売業の成長ドライバー:コロナ前、ウィズ・コロナ、コロナ後の評価

出所:筆者の見解、〇は好調、×は不振、△は好不調が分かれる状態を示す

 コロナ後も、コロナ前、ウィズ・コロナ時と同じ成長ドライバーが小売業の成長をけん引すると考えています。

 ウィズ・コロナ(コロナ禍のさなか)に伸びが加速したネット販売は、コロナ後も成長が続くと考えています。ただし、インバウンドによる成長はいずれ頭打ちになると考えています。

 小売業は、成長セクターとして投資を続けていきたいと考えています。株主優待なども楽しみながら長期投資していくのに適した銘柄として、8月・2月の優待人気トップのイオン(8267)、同じく8月・2月の優待人気第3位のセブン&アイHD(3382)を、私はアナリストとして「買い」と判断しています。

 この2社については、後日、別レポートにて、詳細な投資判断をお伝えします。

 最後に「株トレ」新刊出版のお知らせです。ダイヤモンド社より8月1日ごろ私の新刊が出版されます。

「2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの 株トレ ファンダメンタルズ編」

 一問一答形式で、株式投資のファンダメンタルズ分析を学ぶ内容です。

 2021年12月に出版した前作「2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの 株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書」の続編です。前作で、テクニカル分析(チャートの読み方)を学び、今回出版する続編でファンダメンタルズ分析(決算書の読み方など)を学びます。

 株式投資で個別株投資にチャレンジしたい方、決算書くらい読めるようになりたい、という方に役立つ内容です。

▼著者おすすめのバックナンバー

2024年7月11日:イオン、JR東日本、KDDI…優待投資&長期保有におススメな理由(窪田真之)
2024年4月11日:総合小売業の成長企業イオン!「買い」継続。2期連続で営業最高益へ(窪田真之)

(窪田 真之)

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