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円全面高に、来週の日米の金融政策決定会合で1ドル=150円目指すか

トウシル / 2024年7月24日 16時0分

円全面高に、来週の日米の金融政策決定会合で1ドル=150円目指すか

円全面高に、来週の日米の金融政策決定会合で1ドル=150円目指すか

「トランプトレード」のドル高から「ドル高是正」発言で円安に

 7月11日の米6月CPI(消費者物価指数)発表以来、日本当局の「為替介入」、トランプ氏暗殺未遂事件、トランプ氏のドル安発言、バイデン大統領の米大統領選撤退表明と怒涛(どとう)の出来事が起こりましたが、為替相場は1ドル=160円の上値が重たい地合いとなってきています。

 6月27日の米大統領選の第1回テレビ討論会以降の動きを振り返ってみます。

 このテレビ討論会後、トランプ氏優勢の見方が強まり、市場では財政拡大を期待した「トランプ・トレード」(金利高・米国債売り・ドル高)が活発化し、ドルは1ドル=161円台に押し上げられました。

 しかし、7月に入って、米雇用統計をはじめとした経済指標が弱かったことや日本当局の円買い介入への警戒感からドルは上値の重い地合いが続きました。

 そして、11日に発表された米6月CPIが市場予想を下回り、米CPI発表と同時に実施されたとみられる日本当局の為替介入によってドル売りが強まり、1ドル=161円台から157円台にドル安円高に振れました。

 その後いったん159円台になりましたが、米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)の9月利下げ観測が強まり、再び157円台の円高となりました。

 さらに河野太郎デジタル相が17日のブルームバーグのインタビューで日本銀行に円安是正のため利上げを求める発言をしたことが伝わり、円ショート(売り)ポジションの巻き戻しが起こって、円高が進みました。

 加えて、米国ではトランプ氏が米メディアのインタビューで、対ドルの円安と人民元安を名指しして、ドル高で米国の輸出産業が不利な立場に置かれていると批判したことから、18日には1ドル=155円台前半まで円高が進行しました。

 その後、ドルの実需買いによって158円台に戻す場面もありましたが、FRB高官からハト派発言も相次ぎ、ドルの上値は重たい地合いが続いています。

バイデン氏撤退・ハリス氏出馬でトランプトレード解消の動きも

 バイデン大統領が7月21日、米大統領選からの撤退を表明し、後任候補としてハリス副大統領を指名しました。そして、ハリス氏は22日に党指名に必要な代議員の過半数を確保し、民主党の指名が確実になりました。民主党は8月7日までに正副大統領候補を正式に指名する予定とのことです。

 ハリス氏が大統領候補者になったことで、優勢だったトランプ氏との差が縮まったとの世論調査結果が相次いで報じられています。24日のNHKニュースで報じられたロイター通信と調査会社イプソスの最新世論調査によると、バイデン氏撤退表明後の22~23日の全米対象調査でトランプ氏とハリス氏は支持率が拮抗(きっこう)しているようです。

 民主党の副大統領候補が判明すると、選挙戦の先行きは一層不透明感が強まるかもしれません。トランプ氏は副大統領候補にバンス連邦上院議員を起用すると発表しましたが、バンス氏は「ミニ・トランプ」とも称される人物。トランプ氏が二人いるような政権は誕生してほしくないとの世論も根強く、ハリス氏の副大統領候補が誰になるかによって浮動票を引き寄せる可能性があります。

 こうしたことから、「ほぼトラ」と断じるにはまだ紆余(うよ)曲折がありそうです。「トランプ・トレード」も解消の動き(反対取引)がみられています。為替相場は、FRBの利下げと日銀の利上げの観測によって円高に動きやすい地合いとなっています。

 IMMが19日に発表した16日時点の円ショートポジションは、15万1,072枚(約1.9兆円)と前週から3万0,961枚の大きな減少となりました。CPI発表前の7月2日時点の円ショートポジションは、18万4,223枚(約2.3兆円)と過去2番目の大きさでした(過去最大は2007年6月の18万8,077枚)。

 2週間でポジションが大きく減少したことから、再び円を売りやすい水準にあるとみるのは早計かもしれません。円売り余力があるというよりは、この先の大統領選の先行き不透明感や日米の金融政策の変更から変動が激しくなることが嫌気され、さらに円売りポジションを調整してくる可能性も警戒する必要がありそうです。

来週の日米の金融政策決定会合で、1ドル=150円を目指すか

 6月の米CPI発表以降の一連の動きによって、1ドル=160円以上は重たくなり、来週30~31日の日米の金融政策の方向によって150円を目指すのかどうか注目したいと思います。31日の正午前後に日銀が決定し、FOMC(米連邦公開市場委員会)は31日の深夜、日本時間では8月1日午前3時に政策決定が発表されます。

 日銀の利上げについては、河野氏に加えて、自民党の茂木敏充幹事長が利上げ検討も含めて金融政策の正常化への方針を明確化する必要があると発言しました。こうした発言から海外勢の7月利上げ期待は高まっています。政府の介入への側面支援として、自民党幹事長の発言はかなり気になるところです。「介入」効果が続いている間に日銀が利上げをすれば、円安是正にはかなり効果があると思われますが、市場の7月利上げの見方は分かれています。

 そのため、利上げがなかった場合でも失望感からの円売りも限定的と思われます。また、利上げがなくても利上げへの道筋が示されると、円売りはかなり限定的になると思われます。示されなければ失望感からの円売りが想定されますが、ただ、その場合でも31日の深夜(日本時間)にはFOMCが控えているため、限定的な動きになることが想定されます。

 市場ではFRBの9月利下げはほぼ織り込まれていますが、パウエル議長が来週30、31日のFOMCで9月利下げを示唆するのかどうか注目です。複数回の利下げが示唆されれば、さらにドル安円高が進むことが予想されます。

 一方、来週のFOMCでは利下げを示唆しても、利下げ時期までは明示しない可能性もあります。そうなると、利下げ期待で売られてきたドルは買い戻される可能性があります。その場合は8月22~24日の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」まで、9月利下げを示唆しないかもしれません。

今週発表の米4-6月期GDPや6月PCE物価指数、年内利下げ3回期待浮上も

 日米金融会合の前の25日には、米2024年4-6月期GDP(国内総生産)速報値が発表されます。この内容次第では、FRBの年内3回の利下げ期待も浮上するかもしれません。

 GDPでは、特に個人消費に注目したいです。個人消費は、1-3月期は年率換算で前期比1.5%増と前期(3.3%増)から伸び率が大きく鈍化しています。4-6月期は拡大予想ですが、消費はどの程度回復するのか焦点です。

 そして26日には、FRBが重要視する米6月個人消費支出物価指数(PCE)コア指数(除く食品・エネルギー)が発表されます。前月(前年同月比2.6%上昇)よりは低下する予想となっています。GDPが強い数字で発表されてもPCEコア指数が予想通り低下していれば、FRBの利下げ期待は変わらないと見込まれます。

 先週からドル安円高の地合いが続いています。円は対ユーロや対ポンド、対豪ドルなどでも円高に動いており、円は全面高となっています。

 米大統領選が不透明要因として相場を覆い始めていることや、30~31日には日米の金融会合が控えていることから、円ショートポジションを安心して増やしていく、あるいは増やさなくても円キャリー取引を続けていくことは慎重になると予想されます。円安リスクを取りにくい地合いになってきているようです。

(ハッサク)

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