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株安氷河期に備え、個人投資家はどう振る舞えばよいか?

トウシル / 2024年8月6日 7時30分

株安氷河期に備え、個人投資家はどう振る舞えばよいか?

株安氷河期に備え、個人投資家はどう振る舞えばよいか?

※この記事は2022年5月12日に掲載されたものです。

どのような思想で投資をしているかによって振る舞いは変わる

 FRB(米連邦準備制度理事会)は5月に0.5%のFF金利引き上げを決めるなど、世界的にQT(量的金融引き締め)の方向にある中、この先、景気が悪くなり、世界の株式市場が下落するのではという声も増えてきています。このような状況において、個人投資家はどう振る舞えばよいのでしょうか?

 まず、前提として、どのような思想で投資しているかによって変わってくるので、その点からお伝えしていきたいと思います。

 もし、「分散投資×長期保有」という考えで投資をしているとしたら、難しく考える必要はなく、どんなことがあろうとも長期保有を貫くということになります。そもそも長期保有の根本の考え方は、「景気の先を読んだり、タイミングを計ったりしても、先にならないと分からない。だからタイミングを計らずに長期保有する」です。

 この先、本当に景気が悪くなって株が下がるかは分かりませんし、先を読んだり、タイミングを計ったりすること自体が矛盾する行為となってしまいます。このため、長期保有を貫くだけです。

 積み立てをしている方も同様です。積み立ての根本の考え方は、「先を読まず、タイミングも計らず、コツコツ積み立てる」です。このため、積み立てにおいても続けるだけです。

 もし、長期保有ではなく、「タイミングを計って運用する」という考えで投資をしている(もしくは、これまでは長期保有や積み立てでやってきたが、今後はタイミングを計っていきたい)としたら、この先、どのように、そのタイミングを計っていくかが重要となってきます。

 私自身、タイミングを計って運用する派なので、この点について、私なりの考えをお伝えしたいと思います。

 まず、私は、タイミングを計る上では日経平均株価をウオッチしていて、米国株をはじめとする世界株式も日経平均と同じような動きをするという考えを前提としています。このため、「日経平均ではなく、米国株や世界株をどうみるか」については、日経平均が売りであれば米国株や世界株も売り、買いであれば買いという見方をしています。

 国際分散投資であっても同様で、結局、日経平均と同じような動きをしているので、日経平均が売りであれば売り、買いであれば買いという見方になります。

 では、どのようにタイミングを計っていくかですが、景気循環をベースに考えています。景気が悪くてマーケットが下落しているときに投資比率を高め、景気が良くマーケットが上昇しているときに現金比率を高めるという考えです。

(図1)景気循環における株価のイメージと、投資比率のイメージ

 この先、インフレや金利、為替、政治、国際情勢がどうなるかというのはありますが、どうなろうと結果としてマーケットは景気循環を繰り返して動いています。この景気循環を利用していくというものです。

 その景気循環を捉える1つの指標として、私はファナック(6954)の在庫循環をみています。(2022年1月13日掲載「日経平均、ファナックの在庫循環から測る絶好の買いタイミングとは?」参照)

(チャート1)日経平均株価とファナックの在庫循環から計る買いタイミング

*買いタイミングは、ファナックの四半期ごとの決算において売上高、棚卸資産がともに前年比でマイナスになった最初の決算発表日
出所:日本経済新聞社公表データ、ファナック株式会社の決算短信を基にマネーブレインが作成

 まず、このチャートにおいて、日経平均の長期の推移をみると、2013年以降いかに上昇してきたかがみて取れます。ここ10年ほどは、下がったところを買って待っていれば資産は増えたという、多くの投資家にとって、とても幸せな時期だったと言えます。

 この背景としては、リーマンショック以降、つい最近まで続いた世界的な大規模な金融緩和が大きな要因の1つと言えるでしょう。しかし、既に世界的には金融引き締めのほうに転じています。

 このため、今後はここ10年のような上昇とならない可能性も十分に考えられますし、ITバブル崩壊やリーマンショックほどではないとしても、大幅な下落がないとも言えません。

 別の見方をすると、2009年以降に投資を始めた方は、下がったところを買えばうまくいくという成功体験を積み重ねてきている一方で、ITバブル崩壊やリーマンショックのような大きな下落があり、その後に低迷した状態が続くという経験はしていないということになります。

 このため、マーケットが下落したときにこれまでの成功体験から買いを入れるのですが、そのタイミングが下がり始めで、その後にさらに下落してしまい、資産が減った状態が続くという経験を初めてすることになるかもしれません。皆さんも、そのような状態になることは是が非でも避けたいところでしょう。

資産が減っていく状態を避けるには?

 では、どうやって避ければよいのでしょうか?

 まず、現時点において、(図1)の春・夏・秋・冬のどこに位置しているのかですが、「秋」と判断しています。「夏」から「秋」に変わるタイミングは、日経平均の予想EPS(1株当たり利益)が前年比でピークアウトしたタイミングで計っていて、次のようになっています。

(グラフ1)日経平均株価と予想EPSの前年比増減率

*予想EPSは、来期予想と再来期予想を独自に調整し、5週平均したものを用いています。
*丸印は予想EPSがピークアウトした時期。そのうち、赤丸は、ファナックの四半期ごとの決算において売上高、棚卸資産がともに前年比でプラスになった以降で最初にピークアウトした時期
出所:IFIS提供データを基に、マネーブレインが独自分析し作成

 このグラフにおいて、赤丸で示した時期が「夏」から「秋」に変わるタイミングで、直近では2021年10月に出現しています。「秋」は、株価がどんどん上昇するというのは止まって、よくて横ばいという局面です。

 通常、「秋」の次には「冬」があります。「冬」は企業業績が実際に悪化してくる時期で、とくに「冬の前半」に、過去においては大きな下落が起こっています。

「冬の前半」から「冬の後半」に移るタイミングは、(チャート1)のファナックの在庫循環から計る買いタイミングとしていて、現時点では、次のタイミングは来年の4月下旬になるのではと推測しています。

(チャート1)をみると、買いタイミングの前の「冬の前半」に大きな下落があり、買いタイミングが現れた後の「冬の後半」は、おおむね日経平均の底値圏になっていることがみて取れると思います。

 時系列でみると、次のようになります。

2021年10月から「秋」…現金比率を高める時期
 ↓
現在
 ↓
?年?月から「冬の前半」…大きな下落がある可能性が高い時期
 ↓
2023年4月下旬(現時点での推測)から「冬の後半」…投資比率を高める時期

 このため、今は既に投資比率を下げ、現金比率を高めておく時期になっていて、私自身は少なくとも50%は現金にしておいたほうがよいと考えています。

 短期でどうこうせずに、ゆったりと景気循環に伴って投資比率を変えていくのであれば、この先、「冬」にならずに「夏」に戻る可能性もあるので、現時点で投資比率を25%にして、大きな下落があったら50%に増やし、ファナックの在庫循環から計る買いタイミングが現れたら100%にするという形もよいでしょう。

 大きな下落に巻き込まれるのはどうしても嫌だということであれば、今の時点で現金を100%にして、ひたすら買いタイミングを待つというのもありでしょう。

 この買いタイミングは、ITバブル崩壊があろうがリーマンショックがあろうが良い時期を示してくれています。このため、次の買いタイミングも日経平均の底値圏を示してくれるものと考えています。

 それまでは慎重姿勢を取り、少なくとも50%は現金化して資産を大きく減らさないように備え、次の買いタイミングの出現を待つ時期と考えていますが、いかがでしょうか?

 投資はあくまでも自己責任で。

(白石 定之)

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