株価急落で売却したらどうなる?税金の扱いを口座の種類ごとに解説
トウシル / 2024年8月17日 11時0分
株価急落で売却したらどうなる?税金の扱いを口座の種類ごとに解説
株価急落で多くの投資家が持ち株を売却
8月2日、そして8月5日と記録的な株価急落に見舞われた日本株。持ち株を売却した個人投資家の方も数多くいたことでしょう。
また、信用取引をしている個人投資家で、株価急落による追証(おいしょう:追加証拠金の差し入れ義務)が発生したものの、証拠金を差し入れできずに強制決済されてしまった方も2020年のいわゆるコロナ・ショック以来の記録的な水準に達したもようです。
そこで今回は、株価が急落したことにより持ち株を売却した場合の税金の扱いについて、口座の種類ごとに解説していきたいと思います。
源泉徴収ありの特定口座の場合(1):売却により利益が生じたケース
個人投資家の方の多くは源泉徴収ありの特定口座で株取引をしていると思います。売却に利益が生じているケースは、さらに二つに分かれます。
まず、今年の源泉徴収ありの特定口座によるこれまでの売却損益がトータルでプラスの状況で売却益が生じた場合、売却益に対して20.315%の税金が源泉徴収(天引き)されて、残りが口座に入金されます。
また、今年の源泉徴収ありの特定口座による売却損益がトータルでマイナス(=売却損)のときは、これまで積みあがった売却損と今回の売却による売却益が相殺されます。その上でまだ売却益が残れば、残った売却益に対して20.315%の税金が源泉徴収されます。相殺してもまだマイナスであれば、今回の売却益は課税されません。
源泉徴収ありの特定口座の場合(2):売却により損失が生じたケース
売却により損失が生じているケースも同様にさらに2パターンに分かれます。
今年の源泉徴収ありの特定口座による売却損益がトータルでマイナスの状況でさらに売却損が生じた場合、課税はなされず売却額の全額が口座に入金されます。
一方、今年の源泉徴収ありの特定口座による売却損益がトータルでプラス(=売却益)のときは、これまで積みあがった売却益と今回の売却による売却損が相殺されます。
これまでの売却益合計の方が今回の売却損より大きい場合は、売却益と売却損が相殺され、過去の売却益が生じたときに源泉徴収された税額のうち、今回の売却損に対応する額が還付され、口座に入金されます。もちろん売却額そのものも入金されます。
これまでの売却益合計よりも今回の売却損の方が大きい場合は、これまでの売却益合計に対して源泉徴収されていた税額が全て還付されますし、売却額そのものも入金されます。
源泉徴収なしの特定口座、一般口座の場合
源泉徴収なしの特定口座や一般口座の場合は、源泉徴収ありの特定口座とは異なり、売却の都度税金が源泉徴収されたり、逆に過去に源泉徴収された税金が還付されることはありません。売却額が丸々口座に入金されます。
なお、源泉徴収なしの特定口座は、売却益の源泉徴収はされませんが、年間の損益計算は証券会社の方で行ってくれます。年明けに交付される「特定口座年間取引報告書」に、年間のトータルの売却益もしくは売却損が記載されているので、それをもとに確定申告することになります。
一般口座の場合は、売却益の源泉徴収もされませんし、年間の損益計算も自分自身で行う必要があります。年間トータルで売却益のときは確定申告が必要ですし、売却損のときは確定申告することにより損失を翌年以降最長3年間繰り越すことができます。
NISA口座で保有していた株を売却した場合は?
最後にNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で保有していた株を売却した場合です。
これは、令和5年までの旧NISA口座で保有していても、令和6年以降の新NISA口座で保有していても同じ扱いです。
売却により利益が生じた場合は非課税となります。一方、売却により損失が生じた場合は切り捨てになってしまいます。
特定口座や一般口座であれば、損失が生じたときは売却益や配当金と相殺することで節税できますし、年間トータルで損失が残れば確定申告することにより損失を最長3年間繰り越して、翌年以降の売却益や配当金と相殺することもできますが、NISA口座で売却損が生じた場合、この恩恵が受けられなくなっていますのでご注意ください。
(足立 武志)
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