バフェット、ドラッケンミラー、タレブの相場観
トウシル / 2024年8月22日 16時30分
バフェット、ドラッケンミラー、タレブの相場観
バフェットとドラッケンミラーは手じまいしていったん市場から撤退!?
ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイの運用資産全体に占める手元現金残高の割合は6月末に45.5%に達している。これはバフェットの運用の歴史の中でも極めて異常な事態と思われる。
バークシャー・ハサウェイの手元現金残高とNYダウの推移
バフェットはアップル(AAPL)の保有を半分に減らした。バフェットはかつてアップルについて「バークシャーが保有する財産の一つ」と評していた。また、今年5月の株主総会で、アップルは「極めて素晴らしい事業。2024年末時点で最大の保有株である可能性が極めて高いと思う」と述べていたが、ここに来て3四半期連続でアップル株の売却を進めている。
これまでの売却はあくまでポジションのリバランスということで片付けられる程度であったが、今回アップルの保有株数を半減させたことはバークシャーによる「意思ある売却」であることは間違いない。
バークシャーが持つ上場株式の保有割合(2024年6月末時点)
資産家で著名投資家のスタンレー・ドラッケンミラーは、ジョージ・ソロスの元部下で世界最高の投資家の一人と称されている。そのドラッケンミラーが運用するファミリーオフィス、デュケーヌ・ファミリーオフィスが、引き続きAI関連銘柄の保有を減らしていることが分かった。
8月14日にデュケーヌがSEC(証券取引員会)に開示した資料によると、前四半期(1-3月期)に111万株保有していたマイクロソフト(MSFT)の株式を64%削減した他、メタ・プラットフォームズ(META)については前四半期に再投資し約6万株を保有していたが、今四半期に持分を全て手放した。
前四半期に保有を7割削減させたエヌビディア(NVDA)については、6月末時点の保有株数は21万株と3カ月前に比べて4万株ほど増加している。ただし、エヌビディアは6月10日に1:10の株式分割を実施している。このため、6月末のデュケーヌが保有するエヌビディアの株式数は増えているが、分割を考慮しなければ保有株数は9割弱減少していることになる。
デュケーヌ・ファミリーオフィスのAI関連株保有株数の推移(単位:株)
ドラッケンミラーはエヌビディアの売却について、「ちょっと休みたいんだ。私たちはとんでもない成功を収めた。私たちが認識したことの多くは、今や市場によって認識されるようになった」と述べている。
2023年5月にオマハで開催されたバークシャーの年次株主総会においてバフェットは「我々の事業の大部分は、今年は昨年より低い収益を報告するだろう」と語り、この半年ほど続いていた、「米国経済の信じられないような時期が終わりつつある」と述べた。
同じ2023年の5月にドラッケンミラーは、「2、3年後には信じられないようなチャンスが到来する」と述べ、「業界内には多くのばらつきがあり、チャンスが訪れるまで資金を温存しておくことが大切だ」と語った。
バフェットやドラッケンミラーはいったん株式市場から身を引き、静かに次の展開を待っている。
S&P500、10年・2年イールドカーブ、FFレートの推移
8月20日、名著『ブラック・スワン』の著者であるナシーム・ニコラス・タレブは、「バブルに賭けて全てを危険にさらさないでください。誘惑に駆られるのは分かりますが、我慢してください。スピッツナーゲルの悟りの瞬間:目を閉じて、20%の利益と50%の損失を想像してください」とXに投稿した。
タレブの見方では、今の市場はリスク/リターン比が合わないと言っているのだ。そして、米国の債務問題については、「ブラック・スワン」より想定しやすい「ホワイト・スワン」であり、この問題の解決には「奇跡が必要だ」と発言している。
ブラック・スワン的なイベントに備えるファンドを運用するタレブの弟子のマーク・スピッツナーゲル(ユニバーサ・インベストメンツ)は、以下のように述べている。
「私の見解(相場観)よりも重要なのは、ユニバーサの顧客が、顔を引き裂くような上昇と、1929年以来最悪の暴落の両方に対して、どのような立場にあるのかということだ」
カマラ旋風とカマラノミクス
米国は1970年代に価格統制を試みた。そして今、またカマラ・ハリスが「価格統制」を宣言した。
【金曜日にノースカロライナ州で開かれた集会で、民主党の大統領候補であるカマラ・ハリス副大統領は、共産主義的な経済計画である「価格(物価)統制」を発表した。彼女とバイデン大統領の下での無謀な政府支出が、特に食料品店での物価高騰の主な原因であるという現実があるにもかかわらず、彼女の主張は悪の資本主義と企業によるインフレのまん延である。
滑稽なのは、ワシントン・ポストのコラムニスト、キャサリン・ランペルでさえ、食料品の「価格破壊」を止めるために価格統制を実施するというハリス副大統領の経済計画を批判したことだ。
「この政策がどれほど悪いものか、誇張するのは難しい」とランペルは書いている。彼女はこの論説のタイトルを、「相手があなたを『共産主義者』と呼ぶなら、価格統制を提案しない方がいいのでは?」とした】
8月18日ゼロヘッジ 「Kamala Harris' Proposed Price Controls May Lead To "Communism, Mass Starvation, & End Of America"」
*価格統制:価格統制商品価格、サービス料金、賃金、利子率などの決定を市場の自由な決定に任せずに、政府当局などが政策的に指定あるいは規制すること。それは価格水準に一定の枠をはめるだけで、その水準における需給量には直接干渉しないという点で、数量そのものに干渉する数量統制(割当制、配給制など)とは異なる。
カマラ・ハリスがこれまで述べた経済政策は以下の四つである。
- 価格統制
- 28%の法人税
- キャピタルゲイン税44.6%
- 株の含み益に対する25%の課税
カマラ・ハリスは、長期キャピタルゲイン税率を44.6%に引き上げるバイデンの2025年キャピタルゲイン税提案を支持した。これは1922年以来最高の長期キャピタルゲイン税率となる。この計画では、富裕層の未実現資本利得に25%の税金を課すことも提案されている。バフェットが株を売りたくなるのも当然かもしれない。
このカマラ・ハリスの経済政策を受けて、債券王ジェフリー・ガンドラックは、「市場の冷酷な判決を尊重してください。今日の発表は、補助金の増額と紙幣増刷、そして食料(すぐに他の物も)の価格統制を同時に提案しており、ゴールドの急騰を即座に引き起こしました」とXに投稿した。
ゴールド(週足)
フリードリヒ・ハイエクは、「歴史とは大きくはインフレの歴史であり、通常インフレは政府の利得のために政府が仕組んだものといっても過言ではないだろう」と述べた。
FRB(米連邦準備制度理事会)が金融引き締め策の実施を望まなければ、政府は難なく価格統制を導入して、少なくとも目先のインフレを抑えられる。価格統制のうまみは、政府による完全な経済支配である。
「価格統制の結果、民間企業を公的機関に引き渡すことになるかもしれない。つまり、完全なる計画経済に向けての大きな一歩となるのだ」
(シュンペーター)
米国経済はすでに景気後退に入っているのだろう。だが、それで米国株がただちに下がるということではない。
ピーター・オンジェは、「先週、年間インフレ率が2021年以来初めて3%を下回ったため、主流のジャーナリストたちは大喜びした。ただ一つ問題がある。それは、不況が近づいているためインフレが下がっているということだ。全てが下落しているが、大統領選挙が終わるまでは不況にならない」と述べている。
主流メディアとFRBは、11月過ぎまで「景気後退」を隠しながら、「インフレの低下」を囃し立てるだろう。
S&P500CFD(日足)
日経平均CFD(日足)
ドル/円(日足)
8月21日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
8月21日のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』は、荒地潤さん(楽天証券FXアナリスト)をゲストにお招きして、「植田日銀総裁は国会で何を言う?」「個人投資家のポジション動向」「人気のポンド/円と南アランド/円」「バフェットとドラッケンミラーはこのバブルから撤退した?」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。
ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
8月21日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
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2024年9月7日(土)10:00~15:15
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(石原 順)
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