「株価急落は買い」は正解なのか?逆張りと損切りのリスクに要注意
トウシル / 2024年8月29日 11時0分
「株価急落は買い」は正解なのか?逆張りと損切りのリスクに要注意
ここにきて叫ばれる「株価急落は買い」
8月5日の悪夢のような株価急落から一転、日本株は大きく反発しました。8月23日時点では日経平均株価も25日移動平均線を回復していますし、個別銘柄もおよそ半数は25日移動平均線を超えています。
最近になって目立つのが、「株価急落!自分はこう動いた!」といった内容の記事です。例えばある記事では「凄腕投資家4人のうち3人が今回の急落で買い向かい、1人は静観した」と書かれていました。
またSNSでは株価急落時に果敢に買い向かった結果、大きな利益を上げたことをアピールする個人投資家も少なくありません。
では、今回のような株価急落時に買い向かうことは正解なのでしょうか?それとも買い向かった結果たまたま今回はうまくいっただけで、買わずに静観するのが正解なのでしょうか?
株価急落で「買う」のも「買わない」のも正解。両者の違いは?
筆者の個人的な感覚からすれば、株価急落時に買うのも正解ですし、買わずに静観するのも正解です。
では両者の違いはどこにあるかといえば「大きなリスクを取りに行くかどうか」です。
株価が急落している時に買い向かうのは、まさに「落ちてくるナイフをつかみに行く」行為であり、ハイリスクです。しかし、上手につかむことができれば大きな利益を上げることができます。
今回の下落で、例えば8月5日に買い向かって成功したという声も聞きますが、これをうのみにするのは特に投資初心者・初級者の個人投資家にとっては危険です。
例えば2020年2月~3月のいわゆる「コロナ・ショック」時も株価は急落しましたが、この時ベテラン投資家であればその多くが「株価が下がる中を買い向かうならここしかない!」と半ば確信していたであろうタイミングがありました。それが25日騰落レシオの60%割れの水準です。
ところが今までであれば100%下げ止まっていたその水準から株価はさらに急落し、半ば確信を持って買い向かったベテラン投資家は大きなダメージを受けたのです。
もし、今回の株価急落でうまく買い向かって安値で買うことができた方は、「自分はかなり大きなリスクを取ったから大きな利益を得ることができたのだ」と十分理解するようにしてください。
自分はかなり大きなリスクを取った行動をしているにもかかわらず、それに気が付けていないのであれば、それは非常に危ないです。
資金力が乏しいと「株価急落で買い」は意外と難しい
投資家の中には、「8月5日の急落で買いまくった」と豪語している方もいるようですが、ではその投資家が、8月2日までの下落は手を出さず、ピンポイントで8月5日の下落時に大量に買うことができたかと言えば、おそらく否、です。
逆張りで安いところを買い向かうのであれば、8月5日のような、数年に1度レベルの急落を待っていたら、普段は買うことができません。
8月2日の下落も、1年に1度程度という出現頻度ですし、それ以前の段階で実は多くの個別銘柄はかなり値下がりしていましたから、8月5日はもとより、2日より前の段階ですでに買っていたはずです。
つまり、今回のケースでいえば、8月2日より前にすでに買っていて、2日の大幅下落で買い増し、5日の歴史的下落でさらに買い増している、というのが実際のところでしょう。
くれぐれも、8月5日の急落だけに照準を合わせて買い向かうことは事実上不可能であることは理解しておいてください。
資金力の乏しい個人投資家であれば、おそらく8月2日より前に買って、2日と5日の急落時は追加投資する資金がなく、冷や汗をかきながらマーケットを眺めていた、という人も多いのではないでしょうか。
損切りを設定するとドツボにはまる可能性も
筆者は株式投資で大きな損失を避けるため、損切りルールを設定することの重要性を常にお伝えしていますが、株価急落時の買いは、これが当てはまりにくいのが難点です。
今回のケースでいえば、例えば8月2日に買った株は、筆者の基準では5日の急落でおそらく損切りに引っ掛かります。
そのルールを遵守し、実際に損切りを実行したら、翌6日以降の急騰に乗ることができないどころか、損失だけが残ってしまうのです。
また、5日までの急落は静観し、反発を待って買おうとしても、6日は朝から株価が急騰していて、5日の安値から10%以上、上昇した銘柄も少なくありませんでした。今回はその後も株価が反発を続けたので問題ありませんでしたが、もし7日以降再び株価が下落し、安値を割り込むようなことになっていたならば、やはり損切りが必須だったでしょう。
ところが、損切りをした翌日から再び株価が急騰する、ということも良くある話で、この場合も株価の急騰に乗ることができず、損切りによる損失だけが残ってしまうこととなります。
従って、損切りルールを遵守しつつ株価急落時に買うのであれば、例えば直近の安値から数%上昇したところで買い、直近安値を割り込んだら売る、というように、損切りによる損失が小さく収まるようなタイミングで買うことが求められます。
こうして考えてみると、「株価急落=買い」という考え方は、損切りをしない、逆張り志向の投資家に向いた手法なのではないかと感じているところです。
順張り志向の投資家は、例えば移動平均線超えを待って買うなど、上昇トレンドになることが見えてから動いても遅くないと思います。
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