令和のブラックマンデー続報、歴史的暴落にプット売りが影響(窪田真之)
トウシル / 2024年9月2日 7時0分
令和のブラックマンデー続報、歴史的暴落にプット売りが影響(窪田真之)
8月5日の日経平均株価は1日でマイナス12.4%の暴落となり「令和のブラックマンデー」とも呼ばれます。今回のショック安が終わったとはまだ言えませんが、現時点で分かる範囲でその原因を振り返り、今後の展望を考えます。
日経平均テクニカル分析
8月最終週の日経平均は、1週間で283円上昇して、3万8,647円となりました。
日経平均株価週足:2024年1月4日~8月30日
激しく乱高下する日経平均ですが、2024年のこれまでの動きを俯瞰(ふかん)すると、3万8,000円台前半(上のチャートで赤い線で囲んだ長方形)から、大きくは上にも下にもいけない展開が続いているとみることができます。
3月に日経平均は上に抜けて一時4万円を超えましたが、4月には急落して3万8,000円台前半に押し戻されました。7月にもう一度上に抜けて4万円を超えたがすぐに打ち返されました。
日経平均は次に下値トライして一時3万1,500円辺りまで売り込まれましたが、そこからV字回復して3万8,000円台に戻ってきました。
テクニカル分析の視点から、「3万9,000円より上は売り圧力が強く」「3万8,000円から下は買い圧力が強い」と考えられます。
今、何が起こっている?
日経平均に歴史的乱高下を起こした要因を振り返ると、以下の通りと考えています。
今、起こっていること
7月10日まで、米景気好調とみられる中、いつまでも「円安・株高」が続くとの見方を背景に、外国人投資家が、日経平均を4万2,000円超えまで押し上げました。
ところが、7月11日からストーリーが変わりました。米景気に不安があるとの見方が広がり、米金利が低下、円高急伸を嫌気して、日経平均が急落しました。つまり、7月11日から「円高・株安」の流れとなり、日経平均は一時3万1,500円以下まで売り込まれました。
8月5日から、またストーリーが変わりました。米景気はそれほど悪くないとの見方が広がり、円安・株高に戻り、日経平均は急反発しました。米景気への見方が強気→弱気→やや強気に変わったことを原因に、日経平均が乱高下したことになります。
ただし、歴史的な急落急騰を引き起こすほどの、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の変化があったわけではありません。海外投機筋によるデリバティブズ(日経平均先物・オプション)によって、値動きが増幅され、経済実態とは無関係に、激しい乱高下を引き起こしたと考えられます。
外国人によるデリバティブ取引が急騰・急落を増幅
日本株は過去30年以上、外国人投資家が動かしています。外国人は、買う時は上値を追って買い、売る時は下値をたたいて売る傾向があるので、短期的な動きは外国人次第です。7月以降の日経平均急騰・急落も、外国人投資家の売買によって引き起こされました。中でも、デリバティブズ(日経平均先物・オプションなど)の影響が大きかったことが分かります。
日経平均と、外国人投資家の日本株売買動向(売り越し・買い越し):2024年6月24日~2024年8月30日(外国人売買は8月23日まで)
上のグラフを見ると、令和のブラックマンデーを演出したのは、外国人の売買であることが分かります。上のグラフに示されている外国人売買は、「株式現物の売買」と「株価指数先物の売買」の合計です。驚くべきは、その内訳です。以下をご覧ください。
日経平均騰落幅と外国人売買(買い越し・売り越し):2024年6月24日~8月23日
「円売り・日経平均先物買い」ポジション、「日経平均プット売り」ポジション整理進む
7月11日~8月5日まで、日経平均を4万2,000円超えから3万1,500円以下まで急落させたのは、海外投機筋のデリバティブ売買でした。
ただし、下げの前半と後半で、主なけん引役が異なります。
4万2,000円超えから3万6,000円辺りまでの下げは、主に海外投機筋の「円売り・日経平均先物買い」ポジション解除の売りがけん引しました。3万6,000円より下の歴史的急落は、日経平均プット売りポジションの解除に伴う売りがけん引しました。
詳細な説明は割愛しますが、以下のデータから、投機筋の「円売り」・「日経平均先物買い建て」「日経平均プット売り」が解消されていっていることが分かります。
日経平均と裁定買い残高の推移:2021年7月1日~2024年8月30日
日経平均3万5,000円PUTオプション(8月限)の価格推移:2024年7月11日~8月8日
8月限3万5,000PUTは、日経平均が4万2,000円を超えていた7月11日には10円でした。そこでPUTを100枚など、大量に売っていた投機筋がいたと考えられます。ところが、日経平均が3万5,000円を割れて急落した時には、一時4,000円以上まで上昇しました。デルタ値の急上昇によってリスクが急激に高くなったPUT買戻しの必要が出たと考えられます。
日経平均急落の最終局面でPUT解消の売りが出ることは多い
日経平均下落の最終局面で、日経平均がサプライズとなる暴落に見舞われることがあります。2016年の下落(チャイナショック、ブレグジットショックの下げ)にも影響がみられました。
2016年の日経平均
今回の歴史的急落・急騰は、米景気への見方が揺れていることから起こったものですが、デリバティブ売買によって、過剰反応ともいえる大きな動きとなりました。
株は、短期は需給、長期はファンダメンタルズで動きます。海外投機筋のデリバティブ売買の影響が短期的に極めて大きいものの、長期的な動きは、投機筋の売買では決まりません。ファンダメンタルズで決まります。
日本株は割安で、5年以内に5万円まで上昇すると予測しています。
ただし、短期的な波乱はまだ続く可能性があります。だからリスク管理が大切です。短期的な急落・急騰に惑わされることなく、時間分散しながら日本株を買い増ししていくことが、長期の資産形成に寄与すると判断しています。
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(窪田 真之)
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