【前畑うしろさん】世の中に役立つ商品を発明したい／投資は夢をかなえる手段

成功者が語る「資産を築いた今、人生の満足度は？」

　あなたの一番ほしいものは何ですか？――。資産運用や投資において大事なことは、お金を増やす方法論ではなく、目的を明らかにすること。その答えは十人十色で、正解はありません。自分が大事にしたい価値観を見つめ直し、何のためにどのくらいの資産が必要なのかを考えることが、あなたにとって満足度の高い人生につながるはずです。

　実際に、投資で多くの資産を築いた個人投資家は自分の人生に満足しているのか？　これから手に入れたいものは何か？　投資の成功者がたどり着いた人生観を知ることで、あなたにとって「一番ほしいもの」を探す手がかりが見つかるかもしれません。

前畑うしろさんのプロフィール

元信用組合職員、現コンビニ店員という異色の個人投資家。投資歴は20年に及ぶが、約8年前から日経平均株価の動きに連動する2種類のETFに投資を始め、コツコツと堅実に稼いでいる。ブログ「コンビニ店員　前畑うしろの『欲張ったらあきまへん！』」やメルマガ「コンビニ店員兼投資家 前畑うしろの『初心者がETF投資のプロになる計画！』」、X（@maehata_ushiro）などで投資情報を発信。著書に「ETFで始める、かんたんゆる投資」「スマホさくさくポイント投資、少額投資」（ぱる出版）など。

※以下の取材は2024年7月29日に実施しました。

投資で十分なお金を手に入れたと実感できたのはいつですか？

　私にとって投資はお金を稼ぐための一つの手段で、まだ十分な資産額には達していないというのが大前提になります。しかし、その中でも一番、実感できたのは2008年9月のリーマン・ショックで出した損失をETF（上場投資信託）投資で取り戻し、どのような状況でも負けにくい自分の投資法を身につけたときです。

　十分な資産と思える「金額」でいうと、過去に話題となった老後資金の目安である2,000万円に到達したときです。

なぜ、その金額で十分だと思いましたか？

　もちろん、2,000万円では老後資金としては足りないと思っていますが、金額よりも、自分独自の手法で資産を増やし続けられたこと、そして、負けにくい投資法を身につけられたことが何よりも私の財産だからです。あとは2,000万円を元手にこの先も減らすことなく増やし続ければいいだけなので。

　そして、投資だけでなく、書籍の出版やメディアの取材、メルマガの配信など、投資に関連して仕事の幅が広がったことも、今の自信につながっています。

十分な資産を得て、初めて行ったことは何ですか？何かモノを買われましたか？

　いつが「初めて」になるか分からないのですが、最近でいうと、ちょうど冷蔵庫が壊れたので、思い切って一気にまとめて身の回りの家電製品や調理器具、パソコンなど約100万円分を買い替えました。投資で思ったより利益が出たときは、いつもより高級な食材で料理してみたり、家族と旅行に出かけたり、すこしぜいたくな外食を楽しんだりしています。

資産を得たことで、特に満足度や幸福度が高かったと思えることは何ですか？

　まずは、ただの中年コンビニアルバイト店員の私が、個人投資家として、世間からも少しですが認められるようになったことを、とてもうれしく感じています。中でも一番は、長年の夢の一つでもあった本を出版できたこと。いろんな出版社に企画書を出し、100回断られたら人生を諦める覚悟で臨んだ結果、運よく30回目の企画書が採用され、出版の夢がかないました。

　自分の本が書店に並んでいるのを見たときの感動は一生忘れません。私のペンネームは「前畑うしろ」ですが、年老いた母に最期の親孝行ができればと考え、母の旧姓「前畑」を使うことにしました。店頭に並ぶ前には、出版社から著者に見本が送られてくるのですが、最初の1冊目を母にプレゼントすることができて、とてもよかったと思っています。

十分な資産を得られたからこそ、今できていることを教えてください。

　自由でストレスのない時間を手に入れたことです。時間だけは皆、平等です。年収数千万円の人でも不規則な生活をして、体を壊しているなんて話をよく聞きます。

　私の場合はもともと早起きが得意なので、コンビニの早朝勤務が嫌いではありません。生活のためだけに働いているわけでもないので、ストレスもなく健康的で規則正しい生活が送れています。コンビニでは最新の電子マネー決済や時代を先取りしたサービスをいち早く導入するので、社会の変化についていきやすいという利点もあり、投資にも役立っていると思っています。

　その他、家事をしながら投資の勉強や今後の夢に向けてアイデアを考えたり、メルマガやSNSなどで情報を発信したり、自由な時間を過ごせています。

人生は続きます。この先、あなたが手に入れたいものは何ですか？

　私の父は発明家で、数々の特許を取得して企業からロイヤリティを受け取って家族を養ってくれていました。そんな父を見てきたので、いつか私も人の役に立てる商品を発明するのが生涯のテーマになっており、達成したいことでもあります。

　ただ、商品を開発したり、特許の申請や登録をしたりするためにも資金が必要なので、投資でもうけた資産は全部使わずに、複利で増やすことを心がけています。10年後には今の資産を2倍にすることを目標にしています。

　また、投資においてもアイデアは必要だと思っているので、これからも新たな投資法を生み出せるよう、私が専門としているETFについて勉強するなど視野を広げていきたいです。

　大事なことは、私にとって富を築くことがゴールではなく、投資は夢をかなえるための手段の一つということです。

十分な資産を持っていなかった過去の自分にアドバイスするなら、どんなことを言いますか。

　まずは負けない投資をすることです。初心者が10年で100万円を1億円に増やすなんて絶対に無理。それなら投資を始める前にシミュレーションで1年間の売買記録をつけ、負けない投資ができていると確信を持てたところで、初めて実際の投資をスタートするべきだと考えています。

　市場や経済の流れを把握しながら利益を出すことで、投資の楽しさを知りましょう、とアドバイスしたいです。

　また、翌日の株価を気にしながら眠れぬ日々を過ごすような投資はやめなさい、と。過去の私は、一発大もうけを狙っていました。そんな私には、今の私のモットーでもある「欲張りは最大の敵」という言葉も贈りたいと思います。

現在の自分の満足度を100点満点で表すなら、何点ですか。

　過去の私からすると、現状は100点満点です。ただし、もちろん足りない部分はあります。それは何事においても、こだわりが強すぎて、好きなことは追及するのですが、その他は忘れがちになること。

　そういう意味では今の投資法だけに固執することなく、今後はリスクヘッジのために私の専門分野以外のETFも研究しなければいけないと最近考え始めています。例えば、ダウ工業株30種平均に連動したETF、金（ゴールド）に連動したETFなどです。

　ただ、毎日生活をしていると不満な点なんて数えきれないくらいあります。不満を口に出すと周りにも悪影響を及ぼすので、「言霊」を大切にして、できるだけ言わないようにしています。

生涯を終えるまでに達成したいことを教えてください。

　私の残された人生の最大テーマでもある「健康寿命」を87歳まで手に入れることです。著書でも述べているのですが、私の寿命は88歳と自分で決めています。

　十分な資産を手に入れても、体を壊し、入院生活をしながら残りの人生を過ごすようだと人生、楽しくありません。せめて87歳くらいまでは旅行に出かけたり、好きな料理を作ったり、好きなものを食べたりして人生を過ごしたい。もちろん投資でも現役であり続けたいと思っています。

　今はバランスの良い食生活と規則正しい生活、睡眠を心がけています。大事なリズムを崩さないためにも、将来は日本最高齢のコンビニ店員を目指したいと思っています。私の肩書きでもあるコンビニ店員はアルバイトなら何歳になっても続けられますから。

（トウシル編集チーム）