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トランプなら買い、ハリスなら売り~9月のビットコイン見通し~

トウシル / 2024年9月5日 16時0分

トランプなら買い、ハリスなら売り~9月のビットコイン見通し~

トランプなら買い、ハリスなら売り~9月のビットコイン見通し~

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の松田 康生が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
トランプなら買い、ハリスなら売り~9月のビットコイン見通し~

8月のビットコインイベント

NEW! 8月24日 ロバート・ケネディ・ジュニア撤退、トランプ支持
NEW! 8月28日 SEC、web3最大手OpenSeaに訴追予告

*2024年1月以降の主なビットコインイベントは記事最終ページにまとめています。
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材料面から見た9月見通し

8月の振り返り

8月のビットコイン価格(円)とイベント

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 8月のBTC相場はドル建てで見ると分かりやすい。7月末に7万ドルを付けると8月月初にかけて5万ドル割れに急落。その後、反発し6万ドルを挟んでのもみ合い推移が続いている。

BTC/USDで見た相場急落の三つの要因

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 この2万ドルを超える下落要因は主に三つのフェーズに分かれる。

 まず第1フェーズの7万ドルから6万5,000ドルまでの下落は中東情勢の悪化と米大統領選挙に立候補した、民主党のカマラ・ハリス氏の追い上げが大きい。7月27日のビットコインカンファレンスで、ドナルド・トランプ氏は暗号資産に敵対的なSEC(米証券取引委員会)ゲーリー・ゲンスラー委員長の解任と、米国政府が準備資産としてビットコインを保有することを提唱し、ビットコインが7万ドルにワンタッチした。

 しかし、劣勢だったバイデン大統領からバトンを受け継いだハリス氏がトランプ氏との差をどんどん追い上げると、「ほぼトラ」で積み上がったポジションの巻き戻しもあり、ビットコインはずるずると値を下げていった。

 中東ではイスラエルがベイルートに滞在していたイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高幹部フアド・シュクル氏を空爆で殺害、またイラン新大統領就任式でテヘランを訪問中のハマス幹部が殺害された。イスラエルは犯行声明を出していないが、イランとサウジアラビアはイスラエルの関与を明言し、イラン・イスラム共和国のハメネイ最高指導者は報復を命令した。

 ガザ地区での戦闘がイランVSイスラエル、さらには中東戦争に飛び火することを市場は懸念した。

 第2フェーズの6万5,000ドルから6万1,000ドルへの下落は米国の景気悪化懸念が主因だ。ISM製造業景況感指数や雇用統計が悪化。これまで景気後退を示す指標には利下げが近くなるとリスクオンで反応していた市場だが、景気悪化懸念からリスクオフとなり、ビットコインも売られていった。

FF先物利下げ織り込み回数

出典:Bloombergから楽天ウォレット作成

 第3フェーズの6万1,000ドルから4万9,000ドルに至る急落は、円高と日本株の暴落による。7月末に日本銀行は利上げを実施し、植田和男総裁はさらなる利上げを示唆した。すると円キャリー取引のアンワインドが殺到して、企業収益の悪化懸念から日本株は急落した。8月5日にはドル/円が1日で5円下落、日経平均株価はブラックマンデーに次ぐ史上2番目の下落率を記録した。

日経平均とドル/円相場

出典:Bloombergから楽天ウォレット作成

下落からの反発

 これに驚いた当局が財務省・日銀・金融庁の3者会談を開催した。内田真一日銀副総裁が市場が混乱している間は利上げを行わないとすると、ドル/円は反発し、日本株も値を戻した。ビットコインも6万2,000ドル台に反発、第3フェーズの下落は全戻しした。

 また、米景気悪化懸念も後退した。ISM非製造業景況感指数や小売売上高などが好転したことに加え、さらにジャクソンホールでパウエル議長が「政策を調整する時期が来た」と9月利下げ開始を事実上認めたこともあり、BTCは6万5,000ドルにワンタッチ、第2フェーズの下げも全戻しした。

世論調査(RealClearPolitics)におけるトランプVSハリス支持率

出典:Bloombergから楽天ウォレット作成

予想市場(Polymarket)におけるトランプVSハリス当選確率

出典:Bloombergから楽天ウォレット作成

 ただ、第1フェーズの下落は戻しきれていない。ハリス氏の勢いは止まらず、足元の世論調査ではトランプ氏を追い抜いている。

 トランプ氏が当選すればイーロン・マスク氏やロバート・ケネディ・ジュニア氏の政権入りなど、暗号資産業界にとってドリームチーム結成がささやかれているのに対し、ハリス氏当選の暁にはゲンスラーSEC委員長の財務長官登用が報じられた。ハリス氏は暗号資産に対する政策を明らかにしていないが、ハリス優勢ならビットコインは売りとの見方が広まりつつある。

 フェアリー・ディキンソン大学の調査によれば、暗号資産を保有している有権者の支持率ではトランプ氏がハリス氏を12ポイント(50対38)リードしており、逆に保有していない有権者の支持率ではハリス氏が12ポイント(53対41)リードしている。

 副大統領時代から人前で話すことに難があるとされたハリス氏だが、民主党大会での指名受諾演説は成功裏に終わり、弱点とされたインタビューも無事に終えた。ただ、それらの内容もさることながらCNNやABC、WSJなど大手メディアのハリス推し姿勢が目立ち、そうした違和感が市場参加者の不安をかき立てている部分がありそうだ。

 また中東情勢も混迷を続けている。イランはガザ地区での停戦が実現するならば報復攻撃を自重すると表明。ブリンケン米国務長官はイスラエル入りし「最後のチャンス」と停戦を促したが、結局、イスラエル側のガザ・エジプト境界地区へのイスラエル軍の駐留要求がネックとなり交渉は決裂。その後も交渉が続くが合意には至っていない。

 こうした大統領選や中東情勢の不透明感が相場の重しとなっている。

9月見通し

 9月はどうなるだろうか? まず危機が去ったと思われた円高・日本株暴落の火種はくすぶっている。8月月初の株暴落を受けた国会閉会中審査で、植田総裁は経済・物価見通しが実現するならば利上げを継続するとして、暴落の引き金となった追加利上げ方針を繰り返し、経済諮問会議でも同様の主張を繰り返したもようだ。

 円安を是正したい政府の意向が見え隠れするが、世界に流動性を供給してきた円キャリートレードの巻き戻しは、一つ間違えれば植田ショック第2弾を引き起こしかねない。

 米景気動向もまだ予断は許さない。緩やかなインフレの低下が確認され、パウエル議長は9月からの利下げ開始を示唆した。一方で、雇用の減速から利下げ幅が0.25%でなく0.5%との見方もくすぶっている。FRB(米連邦準備制度理事会)はインフレと雇用の二つの政策目標を定めているが、インフレの調整でなく雇用の悪化対策として利下げをする必要があるとの見方だ。

 その判断として先行指標であるNFP(非農業部門雇用者数)が注目されるが、8月にこのNFPの大幅改定が行われた。すなわち、これまで堅調と思われていた雇用が実はそうでもなかった可能性が出てきた訳で、今後の数字にどれだけ影響するかが注目される。

 一方で、中東情勢と大統領選関連では少し明るい兆しが見えてきた。

 ガザ地区ではハマスに人質とされた6名の遺体が発見された。これに対しイスラエルではネタニヤフ首相が合意を遅らせているとして、即時停戦を求めるゼネストと50万人規模のデモが発生。同首相にプレッシャーをかけるべく英国は武器輸出を一時停止、米大統領も首相の停戦努力は不十分と非難した。ただ、首相側は譲歩に応じない構えで、まだ先行きは不透明だ。 

 米大統領選ではハリス氏の勢いが弱まった。バイデン大統領のTV演説の覇気の無さを契機にトランプ氏との差が開き、同氏の暗殺未遂を受け大統領選の結果は決まったかに思われた。

 バイデン降ろしの結果、後継に指名されたハリス氏はいわば民主党の希望の星だった。反トランプで民主党が一丸となる中、民主党大会も無難に通過し、世論調査でも予想市場でもトランプ氏を逆転した。

 しかし、徐々に勢いが薄れ、予想市場ではトランプ氏が再逆転している。当初はイメージだけで支持を集めていったが、具体的な政策が徐々に明らかになるにつれ賛否が分かれ始め、また立候補後、初めてのインタビューもおおむね無難だったが、評判通り意味不明な言動を繰り返した部分も指摘された。こうした中、トランプ氏が苦手とする9月10日のTV討論会に注目が集まる。

 ただハリス氏がよほどの失点をしない限り、9月中に「もしトラ」トレードが再開する可能性は低い。さらに、トランプ氏が暗号資産のドリームチームを結成、米国を暗号資産の首都にすると息巻いているのに対し、ハリス氏は暗号資産に対する態度を明らかにしていない。

 しかし、少なくともバイデン政権は暗号資産に敵対的で、また大統領の休暇中にSECはNFTを売買するマーケットプレース最大手のOpenSeaに訴追予告を出した。

 すなわち、特定の暗号資産だけでなくNFTも証券に該当すると言い始めた責任者がハリス氏だ。これだけ、共和党・民主党の暗号資産に対するスタンスに隔たりがある中、機関投資家も11月の選挙の結果が出るまでは暗号資産に手を出しにくい、そうした動きがETF(上場投資信託)フローの減少につながっていそうだ。

BTC・ETH ETFフローとBTC/USD

Bloomberg・Farside Investorsより楽天ウォレット作成

テクニカルから見た9月見通し

テクニカル

BTC/USD(日足)その1

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 BTCはドル建てで史上最高値を更新した3月以降、下降チャネルを形成。8月に下ひげを付けて割り込んだが、結局ダマしに終わりレンジ内に値を戻している。上昇フラッグと呼ばれ、最終的に上抜けを示唆するといわれているが、足元ではレンジの中央付近で方向感も見られず、9月中にレンジブレークしそうには見えない。

BTC/USD(日足) その2

出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 もう少し細かく見ると4万9,000ドルから6万5,000ドルまで反発、その半値押しとなる5万7,000ドルでサポートされている。7万ドルからの下落の半値戻しはクリアしており、この5万7,000ドルを割れない限り上目線で良さそうだ。

 一目均衡表で見ると雲の上限で跳ね返され、雲の下限に上値を押さえられていたが、雲の中に入っている。これはしばらく方向感が薄れることを示唆しているが、雲が薄くなる月後半には上下どちらかに振れることとなる。

アノマリー

BTC月別騰落一覧

Bloombergから楽天ウォレット作成

 アノマリー的にはBTCは1年で最も弱い時期に入っており、8月は案の定、陰線となった。8月の陰線となった8回中5回は9月も陰線となっているが、その逆も3回ある、ただ、その3回の上昇率はいずれも1桁台だ。

まとめ

 9月のBTC相場はもみ合い推移か。BTCは半減期後の低迷期に入っており、アノマリー的にも8月9月は1年で最もパフォーマンスが悪いシーズンだ。材料的にも明るい兆しは見えてきたが、まだ方向感が出るには至っていない。

 特に注目は大統領選挙で、この結果が出るまでは機関投資家の動きも鈍そうだ。ただ、9月からいよいよFRBが金融緩和に移行する可能性が高く、BTCは底堅く推移しそうだ。

BTC半減期の価格イメージ

 

2024年 時事イベントと暗号資産イベント(最新順)

7月28日 トランプ氏、BTCを外貨準備(戦略準備資産)に
7月23日 ETH ETFローンチ
7月16日 独当局、5万BTC売却完了
7月5日 Mt.GOX、14万BTC弁済開始
6月24日 Mt.GOX 7月初めから14万BTC債権者に弁済
6月4日 BTC ETFオーストラリアでローンチ、タイ証券取引委員会も承認
5月24日 ETH ETF承認
5月23日 米下院FIT21可決、民主党からペロシ含む71名造反
5月15日 退職年金運用するウィスコンシン州投資委員会、ビットコインETF保有
5月9日 トランプ候補、暗号資産支持を明確化
5月1日 バイナンスCZ前CEO禁固4カ月
4月20日 BTC半減期
4月4日 ビットコインキャッシュ(BCH)半減期
3月13日 ETHデンクンアップデート
3月5日 ドル建てで史上最高値更新
2月29日 ブラックロックのIBITが史上最速7週間で100億ドルファンドに
2月19日 週次の暗号資産ファンドへの流入が過去最高の24.5億ドルに
2月15日 円建てで史上最高値更新
1月11日 BTC現物ETF10件ローンチ
1月10日 SEC、ETF承認(日本時間11日)

*マイニングとは:暗号資産(仮想通貨)は一般的にブロックチェーンと呼ばれるネットワーク参加者が誰でも見られる元帳上に取引を記録していきます。そのブロックチェーン上に取引データを記録する際に、膨大な計算を行うことで新たなブロックを生成する暗号を見つけ出し、その報酬としてコインを手に入れる行為のことです。マイニングの主な役割は「暗号資産の新規発行」と「取引の承認」です。

**BlockFiとは:暗号資産融資プラットフォームBlockFi(ブロックファイ)が提供する暗号資産を預かって利息を払うサービス(レンディング)が証券法に違反したと提訴された事件に関する和解として、SEC(米国証券取引委員会)に1億ドル(約115億円)を支払うと発表。

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(松田 康生)

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