投資のマイナスは失敗なのか?ポイントは「最終的に増やす」こと
トウシル / 2024年9月10日 18時50分
投資のマイナスは失敗なのか?ポイントは「最終的に増やす」こと
一瞬でもマイナスになったら、運用は失敗なのか
先日、著名な方が「山崎元さんの言うとおりにしていたら、今頃とんでもないマイナスになっていたので、投資方法の箇所はまねしなくてもいい」という趣旨のブックレビューをされていて驚きました(人生訓など他の箇所は絶賛していた)。
トウシルの読者からすれば、「山崎元さんの本で資産運用のところを参考にしなくてどうする」とお感じになるでしょう。私もそう思いましたが、「なるほど、投資に通じていない普通の人の感覚はこういうものか」とも思いました。
というのも、ブックレビューの掲載時期が8月頭のジェットコースター相場のタイミングにあたり、日経平均が大幅な下落をしていた時期だったからです。長期積立分散投資をほったらかしアプローチでやっていたら、含み損が出ている可能性もあった時期でした。
このとき、「一時的でもマイナスになったら投資としては失敗である」というのが普通の人の感覚でしょう。マイナスになった段階で手放してしまえば、定期預金で持っていた場合と比べて負けてしまうことになります。ほったらかしはダメということにもなります。
あるいは「機動的に売買して、値下がりを回避するのが投資だ」という感覚でしょうか。投資をする以上は常にマーケットウオッチをして下げ相場を回避しなくてはいけない、というイメージです。
投資のポイントは「最終的に増やせるかどうか」
まず、一度もマイナスにならないのが投資の重要なポイントではありません。「最終的に増やせるかどうか」がポイントです。
私は長期投資をおすすめしますが、短期投資でも投資をしていてマイナスになることはありえます。「マイナスで終わるトレードとプラスになるトレードは当然あって、全体としてプラスにする」と考えて投資をしているからです。
彼らの場合は損切りが一つのテクニックですし、判断ミスや結果としての失敗はありえます。マイナスになることは投資の可能性として当然と受け入れています。
長期投資のスタンスにおいても、短期的な上がり下がりは当然にあるものと考えて投資に臨むべきです。このとき、値下がり局面は「投資済み資金」の価値の減少であると同時に、「新規購入資金」の安値購入チャンスと考えられます。そして、中長期的には市場の回復と成長があると考えます。
そう考えれば、一時的な値下がりを気にしすぎなくて済みます。なお、経済の回復や成長を信じられないという人は長期投資をするべきではないので、そもそも投資から手を引くことをおすすめします(投機には経済成長は不要ですが……)。
いずれにせよ、投資家として、短期投資と長期投資のどちらの場合でも、マイナスになることそのものを失敗とは考えていないことは共通しています。
私たちは「時価評価」という違う価値観に慣れていく必要がある
やはり銀行預金を通じて「金融機関に預けたお金が減るのはおかしい」という感覚がある人にとっては、時価が大きく変動する投資はなじみにくいところがあります。
しかし、投資資金の「時価」が変動するということは、経済の銀行預金より大きく上回るというだけの話ではないという、二面性を理解しなくてはなりません。
このとき、「投資をするならマイナスにならないような選別眼がなければならない(下がる前に売り抜けるなど)」というイメージもあるでしょうが、これも現実の投資とは異なることを知る必要があります。百戦無敗の天才相場師はドラマの中にしかいないのです。
時価が変動するということは悪いことばかりではありません。先ほど「投資済み資金の価値減少」と同時に「新規購入資金の安値購入」とさらりと表現しましたが、これを自分自身の理解として腑に落ちるかどうかが、投資を続けるカギではないかと思います。
投資経験を積みながら、一時的なマイナスに慣れていこう
新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)が始まって以降、7月までのマーケットは、おおむね値上がりが続いていましたので、「とにかくお金が増えるのが投資だと思っていた」という人もいたでしょう。しかし、これこそが投資の現実です。
もしあなたが、投資経験がまだ浅く、「初めて元本割れの状態になってびっくりした(でも手をこまねいていたら株価が回復してくれて助かった…)」というような人であれば、今回の経験を踏まえて、一時的な元本割れに慣れていきましょう。
実経験がある人ほど、耐性も高まっていきますので、最初はドキドキしたとしても大丈夫です。「含み損は損ではない、まだ確定はしていないのだから」ということを自分の感覚として理解できるようになっていきます。
「どうしても怖くて売ってしまった…」という人は、今のうちにリスタートしたほうがいいと思います。もし、株価が回復してまた日経平均株価が4万円をうかがうようになると、悔しくて買えなくなるからです(あるいは少額積立でリスタートする)。
購入済みの資産価値が下落しても「今月の新規積立は安く買えて良かった良かった」と思えるようになれば、あなたは立派な長期積立投資家のひとりといえるでしょう。
(山崎 俊輔)
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