円高一服、今後の為替相場は米FRBの利下げ次第、焦点は大統領選後の12月!?
トウシル / 2024年9月25日 16時0分
円高一服、今後の為替相場は米FRBの利下げ次第、焦点は大統領選後の12月!?
7月後半からの円高は一服、米景気鈍化懸念がFOMC後に後退
9月17~18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では市場の予想通りとはいえ、0.50%の大幅利下げが決定されました。この直後にドルが売られ、1ドル=140円台半ばへと円高に傾きましたが、その後FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長の記者会見を受けて、1ドル=142円台後半へとドルは反発しました。
また、19~20日の日本銀行の金融政策決定会合では政策金利は据え置かれましたが、植田和男総裁の記者会見を受けて、1ドル=144円台半ばまで円安となりました。
その後は1ドル=143円、144円台の動きとなっています。一連の動きで1ドル=140円近辺が底堅くなり、7月後半からの円高は取りあえず一服したようです。
FOMC前には、メディアの観測記事や前ニューヨーク連邦準備銀行総裁の0.50%利下げ示唆発言によって、一時1ドル=140円割れのドル安円高となりました。この動きによって0.50%利下げがかなり織り込まれたため、FOMCで実際に0.50%の利下げ決定となっても、再び1ドル=140円を割る円高にはなりませんでした。
そして、パウエル議長がFOMC後の記者会見で「0.50%利下げが今後継続するペースだと想定すべきではない」、「今後の利下げペースは急がない」と発言すると、米金利の下げ幅縮小とともにドルは1ドル=142円台後半へ反発しました。
ドル反発の背景には、FOMCの経済・金利見通しで2024年末までの利下げが0.50%と市場予想より利下げ幅が小さかったことや、2024年の実質GDP(国内総生産)見通しが、前回6月時点の2.1%から2.0%に下方修正されたものの、修正幅は0.1%と小さく、2025年、2026年の予想は2.0%で修正が全くなかったこともあるようです。
この見通しによって景気鈍化懸念が後退し、株高、金利上昇、ドル高となったようです。また、0.50%の大幅利下げによるハト派色を、利下げペースは急がないとの発言によって弱め、景気はそれほど悪くないとの安心感を市場に与えたようです。
日銀は追加利上げに前向きトーンから慎重姿勢、円安に傾く
一方、日銀の植田総裁は前回7月の会合では、政策金利について「0.50%を壁として特に意識していない」と追加利上げに前向きなトーンでしたが、今回は追加利上げ時期を慎重に見極める考えを示しました。
植田総裁は9月会合後の記者会見で、「経済・物価見通しが想定通りなら少しずつ利上げをしていく姿勢に変わりはない」ことを強調しましたが、一方で、7月会合後の円高進行によって「物価が上振れするリスクは減少している。政策判断には時間的な余裕がある」と述べ、追加利上げを急がない考えを示しました。
同時に「米国経済の先行きは不透明で、金融市場も不安定な状況にある。当面、これらの動向を極めて高い緊張感で注視する」との考えを示しました。追加利上げについて7月の前向きトーンから慎重姿勢に大きく変わったことを市場に印象付ける内容であったため、次回10月利上げ期待は後退し、円安が進行しました。
利下げは急がないと記者会見で強調したパウエル議長と利上げに慎重姿勢を示した植田総裁によって、日米金利差縮小期待が7月から大きく後退し、縮小ペースが鈍くなるとの思惑からドルは買い戻され円安に動いています。
1ドル=145円の円安まで振れないのはなぜ?米景気に市場は確信持てず
しかし、ドル買い戻しの勢いは1ドル=145円が近づくにつれて鈍くなり、150円には届いていない状況です。
その背景として本邦大手輸出企業の社内レートが1ドル=145円近辺であることも影響しているのかもしれません。1ドル=160円だと、社内レートから大きく円安になっているため安心して相場を見ることができたのですが、わずか2カ月で約20円も円高に動き、しかも一時1ドル=140円を割る円高になった動きを見ています。1ドル=145円に近づくとやれやれの安心感からドル売りヘッジの為替予約をしてくることが予想されます。そのことがドルの上値を重たくしているようです。
そして、ドルが1ドル=145円を超えて150円方向になかなか行かないのは、米国景気動向や米国利下げペースについて、市場はまだ確信していないからかもしれません。
ドル/円は日銀要因しばらく封印、焦点は12月の日米の金融政策会合!?
FOMCの金利見通しでは、2024年末金利見通しは6月の5.1%から4.4%に大きく下方修正されました。9月利下げ後の政策金利(4.75~5.00%)から、年内の残り2回(11、12月)のFOMCで0.50%利下げする見通しということになります。0.25%刻みだと、11、12月にそれぞれ0.25%の利下げです。そして2025年末は3.4%(2024年末から1%利下げ)、2026年末は2.9%(2025年末から0.50%の利下げ)の見通しとなっています。
しかし、市場には2024年末までの利下げは0.50%ではなく、0.75%の期待がくすぶっています。CME(シカゴ先物取引所)のフェドウオッチでは12月までに0.75%の利下げ期待が最も高く48%となっています。市場は年内にもう1回の0.50%の利下げがあるかもしれないと期待していることになります。そのことがドル円の上値を重たくしているのかもしれません。
FOMC後、タカ派のウォラーFRB理事も「ディスインフレの進展が一段と確認できた場合や、労働市場が予想外に悪化した場合再度0.50%の利下げの可能性もある」と発言しています。
パウエル議長は物価よりも雇用の下振れリスクを警戒していることから、今後の相場は雇用指標によって敏感に反応することが予想されます。雇用指標が悪ければ大幅利下げの期待が高まってドル安となり、改善していれば大幅利下げ期待が後退し、ドル高になることが予想されます。
物価再燃を警戒する意見もFRB内にはあります。タカ派のボウマン理事は0.25%利下げを主張して今回の0.50%利下げに反対しました。理事の反対は19年ぶりとのことです。
今回の0.50%利下げは全会一致ではありませんでした。FOMCの金利見通し(ドットチャート)も、FRB内では意見が分かれていることを物語っています。19人のメンバーの内、2024年末4.4%見通しは9人ですが、4.6%見通しも9人います。4.6%見通しということは、年内残り2回のFOMCで0.25%の利下げ1回ということになります。
このようにFRB内で意見が分かれる状況のため、物価や雇用のデータ次第ではFRBの政策スタンスが容易に変わる可能性があり、相場の波乱要因になりそうです。まだ市場の方が利下げ方向に前のめりしている状況のため、物価上昇や雇用改善を示す指標が出た場合には、年内利下げ幅が後退し、ドル高円安につながるというシナリオにも留意しておく必要があります。
また、日銀は追加利上げに慎重なため、10月利上げ期待はかなり後退しています。そして12月に利上げをするかどうかは、米国景気次第ということになりそうです。
もちろん、日本の物価が再燃し上昇し始めれば、追加利上げ期待が高まりますが、原油が下がり、円安が修正されている現状では大きな物価変動はなさそうです。従って、今後のドル/円は、日銀要因はしばらく封印され、米国要因によって動くことが予想されます。
11月のFOMCは6~7日に開催されます。5日の米大統領選挙直後に利下げをするのかどうか、市場の思惑は相当混乱しそうです。FRBは11月を避け、12月に0.50%の利下げをするシナリオも想定されます。
そして、日銀が米国経済がそれほど後退しないことを見極めた上で、12月に利上げすることも考えられます。12月の日米それぞれの金融政策決定会合でいずれも政策変更をした場合には、ドル/円は再度1ドル=140円割れを目指すかもしれません。
(ハッサク)
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