特定口座特有のルールと対処法を知ろう(2):四つの対処法と注意点
トウシル / 2024年9月28日 11時0分
特定口座特有のルールと対処法を知ろう(2):四つの対処法と注意点
「特定口座特有のルール」を回避するには?
前回のコラムにて、特定口座には特有の売却損益の計算ルールがあること、そしてそのルールのために、自身が想定していた損益とは大きく異なる損益が生じることがあることをご説明しました。
今回はそれを踏まえ、この「特定口座特有の損益計算ルール」を回避し、自身が想定している損益と同じ損益を実現させるための対処法をご紹介したいと思います。
この対処法には次のようなものがあります。順に説明していきます。
- 一般口座を併用する
- 異なる証券会社の特定口座を併用する
- 信用取引を併用する
- 同一日の買い直しを避ける
対処法1:一般口座を併用する
一般口座と特定口座で同じ銘柄を保有していたとしても、取得価格や売却損益の計算上は、別々の銘柄を保有しているものとして計算されます。
例えばA社株を一般口座で1,000株保有(1株当たり取得単価300円)、特定口座で1,000株保有(1株当たり取得単価500円)という状況であれば、A社株の取得単価を一般口座と特定口座とで合算して「400円」とはしません。
あくまでも一般口座で保有している分は1株300円、特定口座で保有している分は1株500円として別々に管理されます。
そこで、特定口座で売却した株をその日のうちに買い直す時に、特定口座ではなく一般口座で買い直せば、両者は別々に管理されますので、特定口座特有の計算ルールにより取得価格や売却損益が想定と異なることは回避できます。
ただ、一般口座で保有している株を売却した際は、売却損益の計算や申告・納税を自分自身でしなければならないという点がデメリットになります。
対処法2:異なる証券会社の特定口座を併用する
特定口座は証券会社ごとに一つ持つことができます。そして、異なる証券会社で同じ銘柄を持っていたとしても、特定口座の場合はその取得価格や損益計算は合算せず、特定口座ごとに別々に行うことになっています。
例えば甲・証券会社の特定口座でA株を1株300円で1,000株保有しており、500円で1,000株売却したとします。これをその日のうちに480円で1,000株買い直しをすると、取得単価は「(300円×1,000株+480円×1,000株)÷2,000株=390円」となり、売却益は「(500円-390円)×1,000株=11万円」となります。
一方、上記のケースで甲・証券会社の特定口座でA株を売却した後、同日に乙・証券会社にてA株を480円で1,000株買い直しした場合は、取得単価は480円となりますし、売却益は「(500円-300円)×1,000株=20万円」となります。
デメリットとしては、複数の証券会社で株取引をすることになりますし、ネット証券であれば必要な購入額をあらかじめ入金しておかないといけないため、資金管理の面でも煩雑になることです。
対処法3:信用取引を併用する
特定口座にて現物取引も信用取引もできますが、同一銘柄であっても、現物取引と信用取引とでは取得価格や売却損益の計算は別々に行います。
そのため、特定口座特有のルールにより取得価格や売却損益が想定と異なってしまうということは避けられます。
対処法2の例で考えれば、1株300円で1,000株現物にて保有しているA株を500円で1,000株売却し、同日中に信用取引にて480円で1,000株購入すると、取得単価は480円となりますし、売却益は「(500円-300円)×1,000株=20万円」となります。
デメリットとしては、別途信用口座を開設しなければならないこと、信用取引の金利を支払わなければならないことです。
対処法4:同一日の買い直しを避ける
特定口座特有のルールは、あくまでも同じ日に同じ銘柄を複数回購入したり、もともと持っていた銘柄を売却した後に、同日中に同じ銘柄を買い直すときに影響があるものです。
ですから、そもそも売却した日と同じ日に買い直しをするのではなく、翌日以降に買い直しをすれば全く影響を受けることはありません。
ただし、翌日以降に買い直しをする際の株価が、当日の株価と大きく乖離(かいり)してしまう恐れもある点はリスクとなります。
筆者個人的には対処法3を使うことが多いです。想定通りの取得価格、売買損益となるようにするため、上記のような対処法があることを押さえておきましょう。
(足立 武志)
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