国慶節休暇前夜のテコ入れで中国株が急騰。「今度こそ」景気回復はあるか?
トウシル / 2024年10月3日 7時30分
国慶節休暇前夜のテコ入れで中国株が急騰。「今度こそ」景気回復はあるか?
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著者の加藤 嘉一が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「国慶節休暇前夜のテコ入れで中国株が急騰。「今度こそ」景気回復はあるか?(加藤 嘉一)」
国慶節長期休暇を前に、中国株が急騰
この期間、一定の盛り上がりを見せてきた米国株や日本株などとは裏腹に、長らく低迷を続けてきた中国株が、ここに来て上昇の気配を見せています。
国慶節長期休暇(建国記念日:10月1~7日)前の最終日である9月30日、上海または深セン証券取引所に上場するA株300銘柄で構成される「CSI300指数」が9営業日続伸し、8.5%高で引き、同日の終値で2008年以来の上昇率を記録しました。また、上海と深セン両証券取引所の売買代金は30日、合計で約2兆6,000億元(約52兆8,600億円)と過去最大を記録しました。
上海総合指数だけを見ても、30日は9日続伸。終値は節目の3,300を上回りました。同指数の上昇率は2008年9月19日(9.45%高)以来の大きさとなりました。
1週間に上る長期休暇期間中、延べ19億4,000万人が公共交通機関や自家用車で移動すると中国政府は予想していますが、当然期待されるのは個人消費を中心とした景気刺激でしょう。
この株価急騰→長期休暇というタイミングと流れも作用したのか、市場関係者の間では、「いよいよ中国株が戻ってくるか」「グローバル投資家が割安な中国株に目を向けるか」「中国経済は底打ちし、これから回復するか」といった声が上がっているようです。
中国政府が景気回復を視野に投じたパッケージ型支援策
そもそも、なぜ中国株は突然上昇したのか。言うまでもなく、何の予兆や引き金もなく、株式市場が盛り上がるほど、中国経済は楽観的ではなく、この期間の迷走を鑑みれば、何らかの原因・背景があって、上昇という現象が巻き起こったと考えるべきです。
それで言うと、一つのきっかけとなったのは、9月24日に中央政府が打ち出した金融緩和、不動産支援、株式市場支援というパッケージ型の景気支援・刺激策が、市場関係者にポジティブな印象を与えた点が挙げられると思います。
具体的には、以下のような政策が打ち出されました。
- 預金準備率を0.5%引き下げ、金融市場へ約1兆元(約20兆円)の資金を供給
- 7日物リバースレポ(債券購入)金利を1.7%から1.5%に0.2ポイント引き下げ
- 既存の住宅ローン金利を平均で0.5%引き下げ
- 全国一律で2軒目の住宅購入時の頭金比率の下限を25%から15%に引き下げ
- 機関投資家による株式投資や企業の自社株買い資金の調達を支援
中央政府はなぜこのタイミングでこれらの政策を打ち出したのか。
私から見てその理由は明白で、最近のレポート「8月の中国経済は失速。『鬼門の夏』が過ぎ、景気回復は見られるか?」でも検証したように、この期間、中国政府としても、財政出動、金融緩和、不動産支援などを小刻みに出してきたにもかかわらず、景気がなかなか回復しないどころか、生産、消費、投資含め、軒並み低迷、減速していく流れに歯止めがかからなかったからでしょう。
故に、国慶節休暇前というタイミングを戦略的に見据え、リーマンショック直後に打ち出したようないわゆる大規模な景気刺激策とまではいかないものの、「小バズーカ」と言える程度の刺激策を、複数の分野で、しかも同時に打ち出すことで、中央政府として景気を下支えしていくという意思を示そうとしたのでしょう。
このままではまずい、という危機感の裏返しだったと私は理解しています。
今度こそ、景気回復は実現するか?注目はやはり不動産
「複数の分野で同時に打ち出した」一方で、もう一つ注目すべきなのが、中央政府と地方政府による連携でしょう。9月24日の発表を受けて、国慶節休暇に入る前、北京、上海、広州、深センという中国4大都市が相次いで、不動産支援策を地方自治体の立場から後追いするように発表したのです。
不動産を巡って、中国では中央政府が大きな方針を出しますが、具体策を立案、発表するのは地方政府自身です。要するに、不動産政策・市場に関して言えば、中国では相当程度「地方分権」が進んでいるということです。この点も、我々の中国不動産市場に対する見方や分析を迷わせる要因になっている、というのが私の基本的な見立てです。
4都市の中で最もラディカルな政策を出したのは広州市で、規制を全て撤廃するとまで言い切りました。Tier1と呼ばれる1級都市で規制を全廃したのは広州が初めてです。
上海市と深セン市では、より多くの人が郊外の住宅を購入できるようにし、一部購入者を対象に購入可能な住宅の軒数を増やすとしました。また、住宅ローンの頭金の最低比率に関して、1軒目を15%、2軒目を20%に引き下げています。
そして、不動産規制が最も厳しいといわれる首都・北京市でも、上海と深セン同様、住宅ローンの頭金の最低比率を1軒目は15%、2軒目を20%に引き下げました。また、従来は厳格に規制されていた非居住者の住宅購入に対する制限も緩和されました。
中国不動産市場の回復は、住宅価格が最も高い4大都市のパフォーマンスに相当程度かかっていますから、上記の緩和策は朗報と言えます。一方、この手の緩和策は今になって始まったわけではなく、これまでも取られてきた中でのさらなる措置であり、私が見方を聞いた複数の知人たちの間では「今更感」も漂っていました。
今回の措置を受けて、中国不動産市場が比較的明白な回復を見せるのかどうか。中国株の上昇は続くのか、あるいは一時的な現象で終わってしまうのか。そして、国慶節という今年最後の長期休暇を経て、中国の実体経済を巡る各指標が上昇気流に乗るのかどうか。
今月発表される7-9月期の主要統計結果を含め、中国の景気・市場動向に引き続き注目していきたいと思います。
(加藤 嘉一)
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