印刷された膨大なマネーは深刻なインフレへと発展か!?
トウシル / 2024年10月3日 16時34分
印刷された膨大なマネーは深刻なインフレへと発展か!?
米大統領選挙まではバブルの崩壊は起きにくい
米大統領選挙まではバブルの崩壊は起きにくい。印刷された膨大なマネーが市場に溢れかえっているからだ。日本も米国もMMT(現代貨幣理論)で無制限の金融政策をずっと続けている。資産と負債を両方膨らませるというポンジスキームをずっと続けてきた結果、レバレッジが巨大となり、もうFRB(米連邦準備制度理事会)も日本銀行も身動きがとれなくなってしまっている。
*MMT(現代貨幣理論):独自通貨を持つ国は債務返済のための自国通貨発行額に制約を受けないため、借金をいくらしても財政破綻は起きないと説く経済理論。いったん財政規律や中央銀行への信認が失われてしまうと、通貨の下落や輸入物価の上昇を通じ、深刻なインフレと経済の大混乱が発生する恐れがあり、実現困難な理論ともいわれている。
2008年から米国は12年間で3.5兆ドルを印刷した。2020年から米国は4年間で5兆ドルを印刷した。米民主党は選挙に勝つために2024年末までに1.5年間で10兆ドルを印刷する必要がある。
米国の連邦債務 2018~2024年
これだけカネをばらまいていてもインフレがいったん終息しているのは、米民主党が大統領選挙に勝つために戦略石油備蓄を放出し、大手メディアや先物市場も使って人為的に原油市場をコントロールしているからである。全ての物価は原油市場が決める。
戦略石油備蓄を使い果たした米国
NY原油CFD(日足)
以前、ジョージ・カラヘリオスという運用者が『2020年の書「MMTの世界で信仰を探して」』という論文を寄稿した。ジョージ・カラヘリオスによれば、ステファニー・ケルトン博士が著した『財政赤字の神話』(早川書房)は画期的な方法を教えてくれる。それは革命的であり、刺激的であり、誰が大統領に選ばれようとも、新しい常識になる運命にあるという。
【国は支出よりも前におカネを稼いだり借りたりせざるを得ない典型的な「家計」経済学の対象ではありません。そう認識することで、 従来の経済学が一変するのです。経済学の教授はさもありなんとし、大の大人が魔法のカネのなる木(マジカル・ミステリー・ツリー MMTの適切な定義)を信じているとは…。私は言葉を失い、一瞬 思考停止に陥った。普通、サンタクロースは思春期にいなくなる。もしケルトンが「MMTは米国の債務を他国のバランスシートに移すため、調整に必要な時間をかせぐのに考案された貿易戦争戦略である」と主張したならば、私はケルトン派にいくらか敬意を払うだろう。だが、そのような謀略ではない。物価と資源の制約を除き、MMT擁護者たちは通貨を「発行している」政府が通貨をいくら使おうと厳密な制限はないと吹聴している。では、富の格差など、こうした政策で引き起こされる不均衡についてはどうするのか。確実に続くことになる低成長についてはどうするのか。均衡政策についてはどうするのか。消費者物価指数によるインフレ示唆が遅すぎて債務累積の速度を落とせない場合はどうするのか。その間に起こり得る弊害を想像してほしい。明らかにMMTでは必然的に、より良い世界――ただし私たち庶民よりもはるかに賢い学者様が計画した世界――を生もうとして、短絡的な愚策が次々と考案される。そして、取り返しのつかない大失敗がもたらされるだろう】
『2020年の書「MMTの世界で信仰を探して」』(ジョージ・カラヘリオス)
これは非常に興味深い指摘だ。誰が首相になっても同じである。石破茂新首相もMMTだ。MMTでは大衆人気に気を使い、短絡的な愚策が次々と考案される。
石破首相が「追加の利上げをするような環境に現在はない」と異例の発言
植田和男日銀総裁と石破首相は10月2日、官邸で会談し、金融、経済、物価情勢について意見交換した。石破首相が「追加の利上げをするような環境に現在はない」と異例の発言をしたことでアルゴリズム取引の円売りに拍車がかかり、ドル/円は147円まで円安が進んでいる。
市場では「日本が追加利上げを断念した」と受け取られ、円は暴落し、円キャリートレードは勢いを取り戻している。
ドル/円(30分足)
ドル/円(4時間足)
ドル/円(日足)
「日銀は7月会合で円安に伴う物価上振れリスクの高まりも理由に利上げを行っており、難しい状況に直面する可能性がある」(「日銀正常化路線に政治の逆風、石破首相発言で年内利上げ観測が後退」 10月3日 ブルームバーグ)
石破首相が何をしたいのか全く分からないが、中央銀行が常に政治家の言いなりになっていることがよく分かる話だ。金融政策に関しては、「西側」の中央銀行は独立した存在ではない。中央銀行が独立したことはない。
さて、多くの人は、S&P500種指数やオルカンが資産運用に必要な全てだと考えている。これは実現しない仮定だと思う。最終的にはインフレが金融システムを破壊する。今後数年間、インフレは加速するだろう。なぜなら、FRBは支出を奨励するために金利を引き下げ始めているからだ。米国政府はより多くの支出を始めようとしている。
S&P500CFD(日足)
リン・オールデンの言うように、「現時点では、今陥っている負債バブルから抜け出す方法を考えることが先決になる。この負債バブルは、このまま行けば、より一層深刻なインフレへと発展してしまうからだ」。
筆者は現在、来年以降のインフレに向けてのポートフォリオの組み換えに着手している。投資家は潜在的なリスクに留意し、分散されたポートフォリオを維持すべきであろう。
CPI(消費者物価指数) 1970年代 vs 2020年代
経済学者のルートヴィヒ・フォン・ミーゼスは書いた。
「介入主義の社会哲学の本質的なポイントは、永遠に絞られる無尽蔵の資金の存在です。この噴水が枯渇すると、介入主義のシステム全体が崩壊します。サンタクロースの原則はそれ自体を清算します」
10月2日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
10月2日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、愛宕伸康さん(楽天証券経済研究所チーフエコノミスト)をゲストにお招きして、「日銀の次回利上げはいつか?」「日本国債の買い手はいるのか?」「米国は借金で火の車、巨大な債務の壁が満期を迎える」「マネーの量が多すぎ!」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。
ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
10月2日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
日本最大規模の投資家のためのイベント【投資戦略フェアEXPO2024大阪】
投資戦略フェアは、自らの意志で主体的な判断と行動ができる自立した投資家育成を目的としています。熱意と努力を惜しまない投資家にさまざまな分野で活躍しているゲストが発信するノウハウを存分に楽しんでいただける場をご提供します。
【投資戦略フェアEXPO2024大阪】
日時:2024年10月26日(土)10:00 - 18:30(受付開始 9:30)
開催場所:マイドームおおさか (大阪市中央区本町橋2-5)
10月26日(土)に大阪で「投資戦略フェア」が開催されます。楽天証券さんの提供で私も登壇いたします。
石原順講演の【参加者特典】として、楽天MT4版の売買ツール【メガトレンドフォローシグナルのお試し版】を参加者全員にプレゼントする予定です。ぜひご参加ください。
【楽天MT4版の売買ツール【メガトレンドフォローシグナルのお試し版】
ドル/円(日足)メガトレンドフォローシグナルの売買シグナル
ポンド/円(日足)メガトレンドフォローシグナルの売買シグナル
ナスダック100CFD(日足)メガトレンドフォローシグナルの売買シグナル
日経平均CFD(日足)
(石原 順)
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