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PER何倍なら割安株?PER(ピーイーアール)の見方をわかりやすく解説(窪田真之)

トウシル / 2024年10月10日 8時0分

PER何倍なら割安株?PER(ピーイーアール)の見方をわかりやすく解説(窪田真之)

PER何倍なら割安株?PER(ピーイーアール)の見方をわかりやすく解説(窪田真之)

 今日は、読者から質問の多い「PERの見方」を解説します。

PERは、株価割安度をはかる最も代表的な指標である

 PER(株価収益率)は、「ピーイーアール」または「パー」と読みます。日本だけでなく、世界中の投資家が見る重要指標なので、PERの見方をきちんと理解しておくことは、株式投資をやる上で重要です。

 PERは以下のように計算します。

 PER=【株価】÷【1株当たり利益】

 株価を、1株当たり利益で割って計算します。言い換えると、PERは、「1株当たり利益の何倍まで株価が買われているか」を示しています。一般的に、倍率が高いほうが株価は「割高」、低い方が「割安」と判断されます。

PERは株式市場全体の値も計算できる

 PERは、以下の計算式からも、計算できます。

<PER別の計算方法>

 PER=【株式時価総額】÷【純利益】

 これは、先ほどの計算式と、同じ計算をしていることになります。

 なぜならば、

【株式時価総額】=【株価】×【発行済み株式総数】

【純利益】=【1株当たり利益】×【発行済み株式総数】

 この方法から、株式市場全体に対してPERを計算することもできます。

 例えば、東証プライム市場の平均PERは以下のように計算します。

 東証プライム市場のPER

=【東証プライム上場企業の株式時価総額】

÷【東証プライム上場企業の純利益合計額】

 世界の、主要株式市場の平均PERは、古今東西、おおむね10~20倍で推移しています。成長性が低いと見られている株式市場ではPER10倍を割れることもあり、成長性が高いと思われている市場では、PERが20倍を超えることもあります。

<主要国株式市場の予想PER:2024年10月9日時点>

出所:各種資料より楽天証券経済研究所が作成、米国はS&P500種指数、日本は東証プライム

「何年で元が取れるか」という考え方から、PER評価が出てきた

「PER10倍は、PER20倍より割安」といっても、どういう意味か、少し分かりにくいですね。そこが、分かるように説明します。

 PER10倍は、「もし毎年同じ純利益が得られるならば、10年で元が取れる」という意味です。株価が1,000円で、1株当たり利益が100円ならば、PERは10倍です。毎年100円の純利益を10年間得られれば、10年で1,000円の利益が得られます。投資元本(1,000円)と同額の利益を回収できるわけです。

 同様に、PER20倍は、「同じ利益を上げ続ければ、20年で元本を回収」という意味です。PER40倍は、「同じ利益を上げ続ければ、40年で元本を回収」という意味です。

 他の条件が同じならば、PER10倍が一番割安で、20倍が次に割安で、40倍が一番割高となります。

 以下【参考】は、PERという評価方法が出てきた背景をさらに詳しく知りたい方のみ、お読みください。

【参考】PERという評価が出てきた背景

 会社には、倒産リスクがあります。近年、上場企業の倒産はまれですが、昔は、もっとたくさん倒産がありました。「何年で元が取れるか」という評価は、いつ破綻するか分からないリスクの高いビジネスに投資する際に重要です。PERは、投資元本を回収するのに必要な年数の目安を示しているわけです。

 株式会社は、17世紀のオランダや英国で誕生しました。英国からインド、オランダから東南アジアなどに貿易船を出すのは、リスクが極めて高いビジネスでした。途中で、船が難破する、あるいは海賊に襲われると、投資したお金がゼロになることもあります。その代わり、無事、航海を終えると、莫大(ばくだい)な利益がもたらされました。

 そういうハイリスクのビジネスへの投資リスクを、たくさんの投資家で分担する仕組みが、株式会社だったのです。そのようなハイリスク投資で、貿易船が何回無事に帰ると投資元本が回収できるかは、投資のうまみを知るのに重要な指標でした。

 その延長線上に、現代の株式会社の評価もあります。従って、欧米では、PER何倍かで、株価の割安度をはかるのが、普通となっています。

PERだけ見て、割安割高を判断することはできない

 PERだけ見て、割安・割高を判断するのは、適切ではありません。PERの問題をよく理解した上で、PERを見る必要があります。

 それを説明するために、まず、個別銘柄のPERを、具体例に見てみましょう。

<PERの低い銘柄群:2024年10月9日前引け時点>

出所:PERは、2024年10月15日(前引け)の株価を、今期会社予想1株当たり利益で割って計算。今期とはINPEXだけ2024年12月期、他は2025年3月期

<PERの高い銘柄群:2024年10月9日前引け時点>

出所:PERは、2024年10月15日(前引け)の株価を、今期会社予想1株当たり利益で割って計算。今期とはファストリは2024年8月期、MonotaRoは2024年12月期、他は2025年3月期

 上の表を見ると分かりますが、PERは、銘柄ごとにかなり開きがあります。トヨタ自動車のPERは9.6倍です。東証プライム市場の平均PER(加重平均)が、15.5倍であることを考えると、PERで見て、株価は割安と見えます。

 一方、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド(4661)のPERは50.1倍です。東証プライムの平均と比較して、割高に見えます。

 ただし、PERを単純に比較して、割安割高を判断するのには問題があります。PERは、あくまでも、今期予想利益に対して、株価が何倍まで買われているか示しているだけです。

今期と同じ利益が、今後ずっと得られるわけではない

 今期と同じ利益が、これから毎年ずっと得られるならば、PERだけで割安割高を判断して問題ありません。ただし、現実には、今期と同じ利益が将来も続くわけではありません。将来の利益がどうなるか、増えていくのか減ってしまうのか? そのイメージによって、今期PERで高い水準まで株価が買われるか、低い水準に放置されるか、決まります。

 PERの低い銘柄群には、一般的に以下の特色があります。

(1)利益の成長性が低いと考えられている銘柄

(2)利益が不安定と思われている銘柄(景気敏感株など。景気が悪化すると業績が大幅に悪化する)

(3)特別利益(株や土地などの売却益など)によって、一時的に利益水準が高くなっている銘柄

 PERの高い銘柄群には、一般的に以下の特色があります。

(1)利益の成長性が高いと考えられている銘柄

(2)利益が安定的と思われている銘柄(ディフェンシブ株。景気悪化の影響が小さい)

(3)特別損失(不採算事業からの撤退損など)によって、一時的に利益水準が低くなっている銘柄

不当に低PERに放置されている銘柄は「買い」、過剰な期待で高PERに買われている銘柄は「売り」

 さて、PER何倍だったら、株価は割安と言えるのでしょうか? 一般的には、東証プライムの平均PER15.5倍より、低ければ割安、高ければ割高と言えます。

 ただし、そういう画一的な見方には問題があります。利益の成長性や安定性が考慮されていないからです。

「PER何倍なら割安」という問いへの私の答えは、以下の通りです。

  • PERだけでは、割安割高の判断はできない
  • 利益の成長性・安定性を総合的に考慮した上で、割安割高を判断すべき
  • 利益の成長性や安定性を考慮すると、PER10倍でも割高、PER40倍でも割安な銘柄もある

 PERが低いということは、株式市場の評価が低いことを意味します。ただし、中には、不当に低い評価を受けている銘柄もあります。私は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)INPEX(1605)三菱商事(8058)トヨタ自動車(7203)は、割安株として「買い」と判断しています。

 逆に、PERの高い銘柄で、株式市場の評価が高すぎる銘柄は、「売り」判断となります。

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