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今月の質問「いよいよ米大統領選挙、投資への影響は?」

トウシル / 2024年10月11日 16時0分

今月の質問「いよいよ米大統領選挙、投資への影響は?」

今月の質問「いよいよ米大統領選挙、投資への影響は?」

はじめに

 今回のアンケート調査は、2024年9月30日(月)~10月2日(水)にかけて実施しました。

 9月末の日経平均株価は3万7,919円で取引を終え、前月末(3万8,647円)からは728円安、月間ベースでは3カ月連続の下落となりました。

 あらためて、月間の日経平均の値動きを振り返ると、月の半ばに日米の金融政策イベントが控える中、米景況感への警戒や思惑、国内メジャーSQ(特別清算指数)といった需給要因などに揺さ振られながら、3万8,000円台から3万6,000円台へと、株価水準を切り下げる展開が続きました。

 その後、利下げ実施が決定したFOMC(米連邦公開市場委員会)を通過してからの株式市場は、上昇基調へと転じ、日経平均は再び3万8,000円台を回復してきました。

 さらに月末にかけては、インパクトの大きかった中国の金融緩和策を受けた国内外市場のリスクオンムードが強まったほか、国内政治(自民党総裁選)に対する期待と不安で乱高下する場面も見られました。

 このような中で行われた今回のアンケートですが、2,200名を超える個人投資家からの回答を頂きました。

 日経平均のDIについては、1カ月・3カ月の見通しがともに前回から低下したほか、為替のDIについても、前回よりも円高の見通しが強まる結果となり、株価と為替の先行きに対して不安がちらつく印象となっています。

 次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。

日経平均の見通し

「DI低下から透けて見える複雑な心理」

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

 今回調査における日経平均の見通しDIは、1カ月先がマイナス22.31、3カ月先は+13.54となりました。

 前回調査の結果がそれぞれマイナス4.04、+15.88でしたので、両者ともに前回よりもDIの値を悪化させたことになりますが、とりわけ1カ月先DIの下振れが目立っています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 実際に、回答の内訳グラフを見ると、今回調査の1カ月後の強気派の割合は17.04%と、前回の19.03%から小幅に低下した一方、弱気派の割合(39.35%)は、前回(23.07%)から大きく増やしています。つまり、今回の1カ月先DIの悪化は弱気派の増加が寄与した格好です。

 しかしながら、3カ月先の見通しはそこまで悪化していません。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 3カ月先DIの回答の内訳グラフについても見ていくと、強気派が前回の35.22%から36.30%へと増加、弱気派も前回の19.35%から22.76%へと増加しており、中立派の減少分が強気派と弱気派に振り分けられた格好です。それでも強気派が3割以上を占めていることもあり、中長期的には強気の見通しが維持されていると言えそうです。

 今回の調査は、いわゆる「月またぎ」の9月30日(月)~10月2日(水)にかけて行われました。9月30日は、前週末に行われた自民党総裁選の結果を受けて、日経平均が前日比で1,900円を超える急落を演じた日であり、10月に入ってからも、中東情勢の緊迫化による警戒感が相場の重しとなっていたことなどが今回の1カ月先DIの悪化につながったと考えられます。

 目先の相場状況に対する不安が一時的であるならば、3カ月先DIが示す通り、中長期的な株式市場は上昇へと向かっていくことになりますが、そのためには、足元の株式市場が前提としている「米国経済のソフトランディング」シナリオを実現できるかが焦点となります。

 10月4日に発表された米9月雇用統計では、非農業部門雇用者数をはじめ、失業率や平均時給が市場予想よりも強い内容で、米経済のソフトランディングシナリオへの自信を深める結果となりました。これを受けた日米株式市場が上昇で反応したことを踏まえると、今のところ、10月相場は幸先の良いスタートを切ったと言えます。

 今後は、日米企業の決算発表が本格化していきますが、企業業績面の後押しがあれば、さらに株価水準を切り上げていく展開もありそうです。

 ただし、米経済については依然として景気後退懸念が根強いほか、警戒されている中東情勢についても油断できない状況です。現在は、イスラエルによるイランへの報復攻撃が警戒されていますが、その対象がどこになるのか、そして、その規模がどのくらいになるのかが注目されています。

 イランの核施設への攻撃について、バイデン政権は否定的な見解を述べている一方、大統領候補のトランプ氏は肯定的な発言をするなど、中東情勢が米大統領選の動向にも影響し始めています。それだけでなく、米大統領選挙の結果次第で中東情勢への警戒度が異なってくることも想定されるため、中東情勢のリスクは思っているよりも高いかもしれません。

 また、10月は「オクトーバーサプライズ」で相場が荒れやすいタイミングでもあります。最近までの強気相場が正念場を迎え、しばらくは値動きの荒い展開も覚悟しておく必要があるかもしれません。

今月の質問「いよいよ米大統領選挙、投資への影響は?」

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 ここからは、テーマを決めて行っている「今月の質問」について書きます。9月のテーマは「いよいよ米大統領選挙、投資への影響は?」でした。投開票日が11月5日(火)であることを記した上で、四つの質問にお答えいただきました。

 質問1では、米国の大統領選挙が投資判断に与える影響について、どの程度関心を持たれているかを尋ねました。

質問1:米国の大統領選挙が投資判断に与える影響について、どの程度関心を持っていますか?

※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 最も多くの人が選択したのが「非常に関心がある」(54.1%)で、次いで「やや関心がある」(35.2%)となりました。これらを合わせた89.3%の人が、米国の大統領選挙が投資判断に与える影響に関心を示していることが分かりました。

 もともと、超大国である米国の大統領を決める選挙は、政治、経済、文化などを含んだ広い範囲に影響を及ぼしますが、この質問の回答結果は、多くの個人投資家の皆さまが「自身の投資判断」にも影響が及ぶとイメージしていることを示しています。

 質問2では、米国の大統領選挙の結果によって、投資戦略を変更する予定があるかどうかを尋ねました。

質問2:米国の大統領選挙の結果によって、投資戦略を変更する予定はありますか?

※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 最も多くの人が選択したのが「いいえ」(40.6%)で、次いで「わからない」(33.8%)となりました。

 質問1の結果から、多くの個人投資家の皆さまがご自身の投資判断への影響を想定していることがうかがえましたが、実際に投資戦略を変更するかどうかについては、「いいえ」「わからない」が比較的多く、「はい」(同選挙の結果によって投資戦略を変える)とした人は25.6%にとどまりました。

 同選挙がご自身の投資判断に影響を及ぼし得ると認識をしつつも、選挙結果によって投資戦略を変更する予定がない人が多いことが分かりました。同選挙の重要性を認識しつつも、冷静に投資判断を下す気持ちが固まっていることや、積立投資などで長期資産形成をされている方が多いことがうかがえます。

 質問3では、米国の大統領選挙が与える影響について、どの分野に注目しているかを尋ねました。

質問3:米国の大統領選挙が与える影響について、どこに注目していますか?(複数選択可)

※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 最も多く選択されたのが、「金融政策」(24.1%)、次いで「外交政策」(20.2%)、「貿易」(12.8%)、「エネルギー」(10.1%)、「ハイテク」(9.8%)でした。

 米国では先月のFOMCを機に、利下げ(金利の引き下げ)が始まりました。今年8月にトランプ氏は「大統領は金融政策運営に対して発言権を持つべきだ」という趣旨の発言をし、選挙に勝利した場合、金融政策に介入することをほのめかしました。バイデン政権が利下げを求めても金融政策に反映できなかったことを受けての発言とされています。

 利下げは、個人や企業の資金調達を促すきっかけとなり、景気回復を推進する要因になり得ます。トランプ氏が勝利すればこうした流れが加速する可能性が高まる、という思惑から、「金融政策」が上位に入った可能性があります。

「外交政策」が上位に入った背景には、米国がもともとイスラエルやイラン、サウジアラビアなどの中東地域のほか、ウクライナやロシア、これらと結びつきが強い欧州各国、さらには中国や日本などのアジア諸国など幅広い国々と関わりを持っており、新しい大統領が誕生した際にこれまでの関係に(良くも悪くも)変化が生じ得ることが挙げられます。

 また、「貿易」は、トランプ氏が勝利した場合、中国との貿易において関税の引き上げ合戦が起き得ること、「エネルギー」は、トランプ氏が勝利した場合、地球温暖化を食い止める目的で結ばれたパリ協定を再度離脱する可能性があることなど、(主にトランプ氏が勝利した場合に)大きな変化が起き得ることが念頭に置かれて、上位に入った可能性があります。

 質問4では、米国の大統領選挙についての考えや思いを、自由に書いていただきました(128文字以内。)大変たくさんのご回答をいただき、全てを紹介することはできないため、以下のとおり、象徴的なキーワードとその出現回数を確認します。

質問4:米国の大統領選挙についての考えや思いを、自由にお書きください(128文字内)

 筆者が注目したキーワード(カッコ内は出現回数)は「トランプ」(169回)と「ハリス」(79回)で、トランプの出現回数は、ハリスの2倍以上でした。出現回数は、良くも悪くも注目度を示します。その意味では、日本の個人投資家の皆さまの間では、トランプ氏の方が注目されていると言えます。

 良い意味では、利下げを拡大させて景気回復期待を増幅させる可能性があること、膠着(こうちゃく)状態にあるウクライナや中東での戦争に進展をもたらす可能性があること、台頭する中国の動きを抑制的にできる可能性があることなどです。

 悪い意味では、パリ協定を再離脱して地球環境を悪化させる可能性があること、強引な政策によって世界を混乱に陥れる可能性があることなどです。

 ここまで、「いよいよ米大統領選挙、投資への影響は?」というテーマで行った各種質問の回答結果をまとめました。今後もさまざまなテーマを用意し、個人投資家の皆さまのお考えを伝えていきます。

為替DI:10月のドル/円、個人投資家の予想は?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示します。

出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

「ドル/円は、円安、円高のどちらへ動くと予想しますか?」楽天証券がドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家1,538人のうち71%の1,097人が、10月のドル/円は「円高/ドル安」に動くと予想していることが分かりました。前月は81%でした。

出所:楽天DIのデータを基に筆者作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 円安見通しを持つ個人投資家の割合から円高見通しの割合を引いて求めたDIは、マイナス42になりました。DIのマイナスは3カ月連続ですが、前月のマイナス62より大きく減りました。

 DIは、マイナス100から+100までの値をとり、DIのプラス値が大きくなるほど、円安見通しの個人投資家の人数が多いことを示し、逆にマイナス値になるほど、円高見通しの個人投資家の人数が多いことを示します。

出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

With A Little Help From My Friends

 新型コロナウイルス世界的流行が終息したあと、先進国では三つのインフレの波が発生しました。第1のインフレの波は、家の中で過ごす時間が長くなったことで家電や家具の購入や買い替えが引き起こした「需要主導型インフレ」です。

 しかし、「巣ごもり需要」が一巡するとこのインフレも終了しました。テレビなどの耐久財は、今や過去20年間で最悪のデフレ状況に陥っています。

 第2のインフレの波は、新型コロナによるサプライチェーンの混乱や地政学リスクによるエネルギー価格や商品価格の上昇が引き起こした「供給主導型インフレ」です。このインフレもサプライチェーンの修復と共にディスインフレ(物価上昇率が低くなり、インフレの進行が抑えられている状態)へと移行していきました。

 第3のインフレの波は、原材料費高騰などを理由に値上げをする際に自分たちの利益(マージン)もたっぷり上乗せすることによって発生する「利益主導型(マージン上乗せ型)インフレ」です。このインフレは需給の不均衡が理由で起きるものではありません。欧米では下火になったようですが、日本ではまだまだ続いているようです。

 そして現在、労働者不足による賃金コストの上昇が第4のインフレの波を引き起しています。ECB(欧州中央銀行)が追加利下げに慎重なのは、欧州の賃金上昇が止まらないことが理由であり、FRB(米連邦準備制度理事会)も最後まで賃金の高止まりを問題視していました。

 賃金コストの絶え間ない上昇にさらされる企業は、労働者つなぎ止めのために給料を上げ続けるよりも、テクノロジーへの投資に資本を使うことを検討し始めています。これまで人手に頼ってきた作業をロボットに行わせることによって、より少ない労働者でより多くの生産を増やそうとしているのです。

 また、飲食店や小売店では人手不足解消の手段として、店に来る「お客を働かせて」います。最近の居酒屋やスーパーは、多くがセルフレジやスマホアプリを導入していますが、これは労働の観点からすれば、本来店の従業員が行うべき仕事を客が代わりにしているのです。

 そのために必要なスマホというインフラやその通信費さえも客側の負担です。セルフ居酒屋の値段が安く思えても、それは客の労働賃金(の一部)が引かれただけです。店がするべき仕事が減るということは、従業員の時間当たり給料が上昇するという意味でもあります。

ユーロ/円

 楽天証券がユーロ/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家1,126人のうち73%の822人が、10月は「円高/ユーロ安」に動くと予想していることが分かりました。前月は81%でした。

出所:楽天DIのデータを基に筆者作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、マイナス46になりました。対ユーロで円高予想が円安予想を上回ったのは3カ月連続ですが、前月のマイナス62よりは少なくなりました。

出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

豪ドル/円

 楽天証券が豪ドル/円相場の先行きについてアンケート調査を実施したところ、個人投資家1,049人のうち71%の748人が、10月は「円高/豪ドル安」に動くと予想していることが分かりました。前月は80%でした。

出所:楽天DIのデータを基に筆者作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 円安見通しから円高見通しを引いたDIは、マイナス42でした。対豪ドルで円高予想が円安予想を上回ったのは3カ月連続ですが、前月のマイナス60よりは少なくなりました。

出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後投資してみたい金融商品」で「金やプラチナ地金」を選択した人の割合に注目します。各質問の選択肢は、ページ下部の表のとおり13個です。(複数選択可)

図:「金やプラチナ地金」を選択した人の割合の推移

出所:楽天DIのデータを基に筆者作成

 2024年9月の調査で、「金やプラチナ地金」を選択した人は18.22%でした。同選択肢を選択した人の割合は2カ月連続の上昇となり、ウクライナ戦争が勃発した2022年2月の17.3%を上回りました。主な要因は、国内外の金(ゴールド)価格が歴史的高値を更新したという報道が目立ったことだと考えられます。

 金(ゴールド)価格の上昇の背景は、9月18日のFOMCで利下げの開始を決定したこと、そして中東情勢が悪化したことなどが挙げられます。

 筆者が提唱している金(ゴールド)相場を分析する際のテーマは七つあり、そのうち時間軸が短中期のものが三つ、中長期が三つ、超長期が一つです。米国の利下げ開始は「代替通貨」、中東情勢の悪化は「有事ムード」という、いずれも短中期のテーマに分類でき、足元それぞれ金(ゴールド)相場に上昇圧力をかけています。

 諸メディアによれば、米国では今後も利下げが続く可能性が浮上しています。中東情勢については、イスラエルが隣接するレバノンで活動するイスラム武装組織のヒズボラに対して攻撃を強め、それを嫌気して同武装組織を支援するイランがイスラエルに対して空爆を仕掛けるなど、攻撃の応酬が拡大しています。

 これにより目先では、「代替通貨」「有事ムード」の二つをきっかけとした、金(ゴールド)相場への上昇圧力が続く可能性があります。引き続き、米国の金融政策、中東情勢の方向性、そして「金やプラチナ地金」を選択する人の割合の推移に注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2024年9月調査 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2024年9月調査 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成

(楽天証券経済研究所)

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