トランプ?ハリス?米大統領選の勝者は誰か。日本株への影響は?(窪田真之)
トウシル / 2024年10月21日 8時0分
トランプ?ハリス?米大統領選の勝者は誰か。日本株への影響は?(窪田真之)
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。著者の窪田 真之が、みずほ証券マーケットストラテジスト中島氏とともに解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
米大統領選の勝者は?ハリス氏かトランプ氏か?
米大統領選がいよいよ2週間後に迫りました。民主党候補のハリス氏が勝利するか、共和党候補トランプ氏が勝利するかによって、米国だけでなく、世界中の政治経済・株価に大きな影響を及ぼすため、注目が集まっています。
支持率は僅差で、どちらが勝っても負けても、おかしくない状況です。
米国の世論調査:2023年8月1日~2024年10月2日
バイデン氏が次期大統領候補から撤退を表明した2024年7月21日までは、トランプ氏が支持率で圧倒的に優位を保っていました。バイデン氏の高齢不安に焦点が当たっていたからです。ところが、民主党の候補がハリス氏に代わってから、ハリス氏の支持率が急上昇してトランプ氏を上回りました。ただ支持率の差は、1~2ポイントとわずかです。
この支持率を見て、ハリス氏の当選する可能性が高いと考えることはできません。実際の選挙では、ここに表れる支持率とは異なる結果が出ることがあります。
参考となるのは、2016年の大統領選挙前の支持率の推移です。
米国の世論調査:2016年大統領選挙前
この時、民主党の大統領候補だったクリントン氏が、支持率で1~2ポイント、トランプ氏を上回っていました。ところが、大統領選では、トランプ氏が勝利しました。今回も、この時と同じで支持率は僅差で、大統領選ではどちらが勝っても負けても、おかしくありません。
選挙公約は「真逆」、トランプ氏公約の方が株式市場にはフレンドリー
株式市場にとって一番重要なのは、法人税の行方です。トランプ氏は減税、ハリス氏は増税を検討しています。この一点から、トランプ氏の公約の方が、株式市場にフレンドリーと言えます。
ハリス氏・トランプ氏の税制・環境政策についての公約(抜粋)
環境政策でも、公約内容は正反対です。ハリス氏は環境フレンドリーで、電気自動車(EV)の普及促進を図り、石油・ガス関連の補助金を撤廃する方針です。トランプ氏は、EV支援策を撤廃し、石油・ガス産業の促進策を取る方針です。
ハリス・トランプ氏のインフレ対策・産業・移民政策についての公約(抜粋)
インフレに対する米国民の不満が高まっていることを受け、両候補ともインフレ抑制策を取る方針です。ただし、中身をよく見ると、ハリス氏の公約の方がより踏み込んだ内容が入っています。トランプ氏の政策は景気刺激策が中心で、株式市場にポジティブに見える半面、インフレ再燃のリスクが高いと考えられています。
産業政策の中身を見ると、ハリス氏の政策は医薬品産業にマイナスです。独占の疑義がかかるハイテク大手にもややマイナスです。一方、トランプ氏の公約は暗号資産やAI(人工知能)に関連する産業にプラスです。株式市場にとっては、トランプ氏の政策の方がプラスになる面が多いと言えます。
移民政策についても違いがあります。トランプ氏は、不法移民の大規模な強制送還を実施するなど、移民排斥に強硬です。一方、民主党はもともと移民に友好的でした。ただ、バイデン大統領になってから移民流入が加速したことに米国民の不満が高まっていることから、ハリス氏も国境警備は強化する方針です。
ただし、トランプ氏のように、不法移民を強制送還する方針までは打ち出していません。
ハリス氏・トランプ氏の外交通商・国防政策についての公約(抜粋)
外交通商政策でも、両氏の公約は違いがあります。トランプ氏は、輸入製品に対して一律10%の関税引き上げを提唱しており、さらに保護主義を強める方針です。もし本当に実施したら、中国などが報復関税導入に走る可能性もあり、米中対立激化のリスクがあります。
また、米国が関税を引き上げれば、米国内の生活必需品の価格が一段と上昇し、インフレを悪化させる可能性もあります。通商政策においては、トランプ氏公約は、株式市場にマイナスと言えます。
ハリス氏は、トランプ氏ほど強烈な保護主義を打ち出してはいません。ただし、民主党も共和党と同様に、保護主義に傾きつつあります。民主党バイデン政権は、トランプ政権時代に導入された関税をそのまま引き継ぎ、さらに一部保護主義を強化しつつあります。ハリス氏も、中国などに対して、保護主義的な政策を出していく方針です。
このように、選挙公約の中身は、ハリス氏とトランプ氏で大きく異なり、どちらが勝つか分からない状況で、不透明感が高まっています。
ただ、一つ、注意すべきは、大統領になればなんでも公約通りに実施できる、というわけではありません。
米国の大統領には極めて大きな権限がありますが、それでも独裁者ではありません。トランプ氏が勝っても、ハリス氏が勝っても、全ての公約がそのまま実現するわけではありません。大統領選と同時に行われる議会選挙の結果も重要です。大統領が共和党でも、議会が民主党優勢ならば、トランプ氏の政策は制約されます。
また、大統領が民主党でも、議会が共和党優勢ならば、ハリス氏の政策は制約されます。
仮に、トランプ氏が勝利して、議会の上院下院とも共和党が過半数を握る「レッドウエーブ」が実現すると、トランプ氏の大統領としての権力は一段と強くなります。それでも、全てトランプ氏の公約が実現するとは言えません。共和党内にも、トランプ氏と異なる考えを持つ議員もいるからです。
日本株への影響
米国大統領選が終わった後、米国株が順調に上昇していけば、日本株にも追い風となります。
勝者がハリス氏であれトランプ氏であれ、米景気が失速することなく緩やかな拡大を続け、かつ、インフレが再び高騰することがなければ、米国株にも日本株にも追い風となります。
つまり、どちらが大統領になっても、最終的には米景気がソフトランディングに向かうことができるか否かで、株式市場の方向性は決まると思われます。米景気ソフトランディングが実現し、日本も緩やかな景気拡大が続くならば、日米株式は好調に推移すると思います。楽天証券では、70%の確率で、米景気はソフトランディングに向かうと予想しています。
一方、30%の確率で、米景気がハードランディングに向かうリスクもあります。ハリス氏が勝利して、法人増税など株式市場にネガティブな政策を強く押し出す場合、あるいは、トランプ氏が勝利して、輸入関税の引き上げを強く押し出し、米国のインフレが再び高騰させる場合には、注意が必要です。
さらに詳しい分析は、動画にてご視聴ください
米大統領選のさらに詳しい分析、また、来週に迫った日本の衆院解散総選挙の分析、日本株への影響については、冒頭でも紹介した以下の動画でご視聴ください。
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(窪田 真之)
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