好業績なのに年初来安値?「信用買い残」を見ればその理由が分かる
トウシル / 2024年10月24日 11時0分
好業績なのに年初来安値?「信用買い残」を見ればその理由が分かる
業績と株価の関係
当たり前の話ですが、業績と株価は連動します。好業績が続く銘柄は株価も右肩上がりになることが多いです。
しかしこれは20年、30年といった長期的に見た話であり、数カ月~1年程度の期間で見れば必ずしも当てはまらないことが、株価の動きを見ていると分かります。
もう一つ言えるのが、確かに足元では好業績に見えても、将来の業績に懸念を感じる投資家が増えてくると、株価は下落してしまうという点です。
長期的な株価上昇の一時的な下落なのか、それとも業績の伸びの鈍化や業績悪化を織り込んで株価がピークアウトして中長期でも下落してしまうのかは、個人投資家レベルでは早期に判断をするのは難しいと言えます。
好業績なのに年初来安値を更新する個別銘柄
足元でこんな銘柄があります。会社四季報や、企業発表の業績予想などでは高水準の増収増益が続き、明らかに高成長・好業績です。
しかし株価は毎日のように下がり続け、2カ月足らずで半値以下にまで下落、年初来安値を日々更新している状況です。
実はこのように、足元では好業績が続いているように見えるにもかかわらず、株価が下落を続ける銘柄はよく見かけます。
そして、これは筆者の推測にすぎないのですが、そうした銘柄というのはやはり将来の業績の伸びに対する懸念を投資家から持たれているために、株価下落が続いているのではないかと思います。
「好業績+株価下落」の銘柄に共通することとは?
こうした「好業績+株価下落」となっている銘柄には共通する特徴があります。全ての銘柄で、というわけではありませんが、多くのケースで同じ事象が発生しているのです。
それは「信用買い残の増加」です。
信用買い残とは、信用取引でその銘柄を買い、まだ決済せず保有を続けている残高のことを言います。
制度信用取引であれば、信用取引で買った株は、6カ月以内に決済しなければいけません。言い換えれば「信用買い残」は将来の売り需要になるのです。
特に株価が下落を続ける一方、信用買い残が増え続けているような銘柄は、需給を考えれば最悪と言ってよいかもしれません。
そこで起きているであろうことは、プロ投資家が成長の鈍化を懸念してその銘柄を売り続けている一方、表面的な好業績を信じた個人投資家が、信用取引で逆張り買い、ナンピン買いを続けているという構図だからです。
自分で自分の首を絞めている個人投資家
株価が下がり続けていく中、なぜ個人投資家は逆張り買いやナンピン買いで買い続けているのでしょうか? それは表面的には好業績が続いているため、「業績が良いのにこんなに株価が下がっているのだからお買い得だ!」と思っているからです。
しかし、個人投資家が買っても買っても株価が下がり続けるということは、プロ投資家の目から見ればその銘柄は将来の業績懸念からもはや投資対象とはなっていないわけで、最後は含み損を抱えた塩漬け株となってしまう可能性が高いです。
現物で買うなら塩漬け状態で何年も我慢していれば報われるかもしれませんが、信用取引を使って、株価が下がるたびに買い続けるという行為は、まさに個人投資家が自分で自分の首を絞めているとしか思えません。
なぜなら、信用買いをして株価が下がると、たちまち含み損を抱えることになります。そして信用取引には期日がありますから、6カ月以内に決済売りをしなければいけません。
そのため、「株価下落+信用買い残の増加」が同時に生じると、「含み損を抱えた個人投資家が、株価が少しでも戻ったらすぐに売りたいと思っている」という構図が出来上がってしまいます。
もし成長率が鈍化したとしても、好業績そのものが今後も続くのであれば、長い目で見れば株価は上昇に転じる可能性は高いです。しかしそのときに、信用取引で買い下がる個人投資家が多く、信用買い残が積みあがっているのであれば、少なくともそれらの決済期日が到来し、売り圧力が解消しない限りは株価の本格的な上昇はなかなか難しいと言わざるを得ません。
制度信用取引は6カ月以内に決済が必要ですから、信用買い残の推移を見て、買い残がピークアウトして減少し、需給状況が好転したのを確認してからでの買いでも遅くないと筆者は思います。
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(足立 武志)
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