ドル/円153円台。日銀の利上げ効果が完全消滅
トウシル / 2024年10月24日 9時34分
ドル/円153円台。日銀の利上げ効果が完全消滅
今日のレンジ予測
[本日のドル/円]
↑上値メドは153.50円
↓下値メドは151.05円
総選挙:英国民が右翼に投票した結果、50年間で最も左寄りの政権が誕生
FRB利下げ:利下げは緩和ではなく「引締めの調整」
フランス:対GDP比政府債務112.4%はEUが定める債務残高の2倍。格下げも
中国経済:GDPが減速。輸出の伸びは国内需要の弱さをカバーするには不十分
利下げ賛成:シカゴ連銀総裁「長すぎる金利据え置きは不必要な引締めにつながる
前日の市況
10月23日(水曜)のドル/円相場の終値は152.76円。前日比1.66円の「円安」だった。
2024年213営業日目は150.99円からスタートした。朝から全く下がらず、東京時間朝につけた150.97円がこの日の安値となった。昼すぎには前日の高値(151.20円)をあっさり抜いて152円台に乗せた。米長期金利が4.26%約3ヵ月ぶりの水準に上昇したこともドル買いに弾みをつけて、東京時間夜遅くには7月31日以来となる153.19円まで円安に動いた。24時間のレンジ幅は2.21円。
米大統領選のトランプ共和党の勝利と日本の衆院選での石破自民党の苦戦の予想が伝えられるなかでFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ期待と日銀の利上げ期待が共に後退した。ドル/円はドル買いだけではなく円売りも同時発生して、日銀が7月31日に利上げを決定した直前の高値水準まで大きく円安が進んだ。円に関しては日銀の利上げ効果は全て消えてしまった。
来週行われる会合で、日銀が政策金利の据え置きを決定するならば、日銀の円安容認と受け取られて一段と円安が進む可能性がある。
円安の物価上昇に与える影響を日銀は警戒していて、それが7月の利上げ決定の要因でもあった。しかし仮に石破自民党が衆院選で敗北して株価が不安定になれば日銀の利上げは難しくなるだろう。
週末から来週前半のドル/円見通し サポートとレジスタンス
レジスタンス:
155.99円 07/24 H
155.22円 07/30 H
153.90円 07/31 H
153.19円 10/23 H
サポート:
150.97円 10/23 L
150.49円 10/22 L
149.09円 10/21 L
148.86円 10/16 L
ドル円短期:(高値+安値)x 1/2 =146.39円
9月15日から10月23日までのドル/円のレンジは、139.58円から153.19円。
レンジ幅は、13.61円。
高値と安値の50%(中間点)は、146.39円。現在のレートは中間点よりも「円安」。
高値と中間点の50%は、149.79円。::現在のレートはこの水準よりも「円安」。
2024年 主要指標
今日の為替ウォーキング
今日の一言
非理法権天 (「非」は理に勝たず、「理」は法に勝たず、「法」は時の権に勝たず、その「権」も天道に勝たない、天道は明にして私がない。 天道をあざむくことはできないから、天道に従って行動すべきであるという戒め。楠木正成の旗印)
Maneater
新型コロナウイルスの世界的流行が終息したあと、先進国では「4つのインフレの波」が発生した。
第一のインフレの波は、ロックダウンで家の中で長い時間過ごすための家電や家具の買い替えが引き起こした「需要主導型インフレ」だ。しかし、「巣ごもり需要」が一巡するとこのインフレも終了した。テレビなどの耐久財は、今や過去20年間で最悪のデフレ状況に陥っている。
第二のインフレの波は、新型コロナによるサプライチェーンの混乱や地政学リスクによるエネルギー価格や商品価格の上昇が引き起こした「供給主導型インフレ」だ。しかし、このインフレもサプライチェーンの修復と共にディスインフレ(物価上昇率が低くなり、インフレの進行が抑えられている状態)へと移行していった。
第三のインフレの波は、原材料費高騰などを理由に値上げをする際に自分たちの利益(マージン)もたっぷり上乗せすることによって発生する、利益主導型(マージン上乗せ型)インフレ」である。このインフレは需給の不均衡が理由で起きるものではない。欧米では下火になったようだが、日本ではまだまだ続いているようだ。
そして現在、労働者不足による賃金コストの上昇が、第4のインフレの波を引き起している。インフレと賃金上昇のスパイラルは、ECB(欧州中央銀行)に追加利下げを慎重にさせている。FRBも利下げ直前まで賃金の高止まりを問題視していた。
賃金コストの絶え間ない上昇にさらされる企業は、労働者繋ぎ止めのために給料を上げ続けるよりも、テクノロジーへの投資に資本を使うことを検討し始めている。これまで人手に頼ってきた作業をロボットに行わせることにより、より少ない労働者でより多くの生産を増やそうとしているのだ。
飲食店や小売店では、人手不足解消の手段として、店に来るお客に働いてもらっている。最近の居酒屋やスーパーは、多くがセルフレジやスマホアプリを導入しているが、これは労働の観点からすれば、本来店の従業員が行うべき仕事を、客に強制ボランティアさせているのと同じだ。さらに言えば、これらの作業に必要なスマホというインフラやその通信費さえも客側の負担が当たり前となっている。このように、企業はコスト削減を図る一方で、顧客に新たな負担を強いるケースが増えている。
中央銀行による利上げは景気を冷やし、最終的にはインフレ抑制に成功するだろう。しかしそこに至るまでの副作用も大きい。利上げという手段を使うよりも、「値上げを受動的に受け入れない」ように消費者を説得する方が害も少ないだけでなく、より効果的かもしれない。便乗値上げに対抗するためにソーシャルメディアが果たすべき役割は大きい。
今週の注目経済指標
ヒートマップ分析
(荒地 潤)
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