「米国株独り勝ち」は日経平均の敵?味方?12月マーケット見通し
トウシル / 2024年12月2日 12時0分
「米国株独り勝ち」は日経平均の敵?味方?12月マーケット見通し
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「【テクニカル分析】今週の株式市場 様々な思惑が交錯する12月相場はどうなる?~「独り勝ち」の米国株は敵か味方か~<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し>」
11月の最終営業日だった29日(金)の日経平均株価は3万8,208円で取引を終えました。
前週末終値(3万8,283円)からは75円安と、単純な週末終値の比較では小幅な下落にとどまりましたが、週間の値幅(高値と安値の差)は1,200円を超えていて、「方向感に欠けるものの、値動きはそれなりにあった」展開となりました。
ちなみに、週間ベースでは3週連続で下落していますが、この期間の下げ幅合計(1,252円)は、先ほどの週間の値幅とあまり変わっていません。
日経平均はレンジ相場のまま12月に突入
そんな中、今週からは12月に入りますが、日経平均はレンジ相場を続けたまま2024年相場の最後の月を迎えることになります。
図1日経平均(日足)の動きとMACD(2024年11月29日時点)
日経平均のレンジ相場については、これまでのレポートでも何度となく指摘してきましたし、上の図1を見ても分かるように、日経平均は3万8,000円から4万円の範囲内での株価推移を約2カ月間にわたって繰り返しています。
この期間中には、国内の衆議院選挙や米大統領選挙といった政治イベントから、日米の金融政策イベント、そして企業決算シーズンと、相場に方向感を与えそうな出来事が相次いだのですが、結局、日経平均は中長期の相場の行方を見いだせなかったことになります。
その一方で、レンジ相場が長く続くということは、「市場のエネルギーが蓄積されている」ことも意味します。この先、レンジを抜けた方向に大きく株価が動く可能性があります。
つまり、12月の日経平均は、「レンジを抜ける動きが出てくるか?」と、「抜ける方向は果たして上か下か?」の2点が最大の焦点になります。
テクニカル的に見た日経平均は下方向への意識が強い?
この二つの焦点について、日経平均の週足をベースに、テクニカル分析的にいくつかのチャートを確認して行きたいと思います。
図2日経平均(週足)のボリンジャーバンド(2024年11月29日時点)
まずは、ボリンジャーバンドです。上の図2でも確認できますが、バンドの傾きが水平で、一定の幅を保つ中、ここ2カ月間の株価がプラスマイナス1σ(シグマ)の範囲内で動いています。
また、ボリンジャーバンドの一般的な見方として、トレンドが発生する前には、バンドの幅が狭くなる「スクイーズ」というサインが出ることが多いのですが、夏場以降の株価の動きが大きい(ボラティリティが高い)こともあり、現在のバンド幅は比較的広くなっていますので、ボリンジャーバンド的には、「まだまだレンジ相場が続きそう」という見方になります。
続いて、別のトレンド系指標でも確認していきます。
図3日経平均(週足)と多重移動平均線(2024年11月29日時点)
上の図3は、同じく日経平均の週足チャートに、多重移動平均線と52週移動平均線を重ねたものになります。
多重移動平均線は、2週から28週移動平均線を2週間刻みで14本描いたもので、短期間から中期間のトレンドの強さや変化を捉えやすくするのを目的として使われます。
実際に、足元の多重移動平均線は短期線と中期線が複雑に入り混じり、トレンドレスになっている様子がうかがえます。
さらに、トレンドレスが続く中で、52週移動平均線と株価の関係も注目されるようになってきました。とりわけ、8月以降の日経平均は52週移動平均線がサポートとして機能している格好ですが、ココを下抜けてしまった場合には注意です。
さらに、チャートを過去に遡ると、2021年の夏場から年末にかけて似たような場面がありました。52週移動平均線がサポートとして機能しなくなった2022年から株式市場が下落トレンド入りしていることが分かります。
必ずしも歴史が繰り返されるわけではありませんが、「多重移動平均線がトレンドレスとなり、夏場から年末にかけて、52週移動平均線がサポートとして機能していた」という共通項が多いことを踏まえると、株価が52週移動平均線を下抜けた際には注意が必要になります。
そして、最後に線形回帰トレンドでも確認してきます。
図4日経平均(週足)の線形回帰トレンド(2024年11月29日時点)
線形回帰トレンドは「内在系のトレンドライン」と呼ばれ、株価の値動きの大きさや推移を回帰直線で描くことで、相場の方向感を探ろうとするものです。
線の傾きがトレンドの方向性を示し、株価が中心線よりも上に位置していれば強気、下に位置していれば弱気となります。上の図4は、2023年あたまを起点とし、現在までの値動きを回帰分析したものとなります。
図4を見ると、現在のトレンドは上昇基調となっていますが、株価はマイナス2σ近くに位置しており、「トレンドの勢いとしてはかなり弱い」と判断できます。
そのため、図4から読み取れるものとしては、このままマイナス2σを下抜ける展開に注意であるほか、仮に、12月の株価が上昇して行ったとしても、中心線を上抜けるほどの力強さを見せることは難しいかもしれないこと、そして、マイナス1σを突破できれば、図4の株価水準的に4万円をクリアすることになることなどが挙げられます。
つまり、「今後の株価が4万円台を回復することができても、それが今後の中長期の上昇トレンドにつながるとは限らない」ことが重要なポイントとなりそうです。
目立つ米国株の「独り勝ち」
ここで、視点を変えて米国株市場の状況についても見て行きたいと思います。
図5各主要株価指数のパフォーマンス比較(2023年末を100)(2024年11月29日時点)
上の図5は、前回のレポートでも紹介した、昨年末を100とした各国の主要株価指数のパフォーマンス比較のチャートなのですが、引き続き米国株の強さが際立っています。
足元の米国株の強さについては、こちらのレポートでも言及していますが、米財務長官候補として、金融業界出身のスコット・ベッセント氏が指名されたことや、今月17日から18日に開催されるFOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げ期待などを受けて、米国の金利が低下したことが挙げられます。
図6米10年債利回り(日足)の推移(2024年11月29日時点)
実際に、上の図6を見ても、9月半ばから上昇基調にあった米10年債利回りが足元で低下していることが分かります。
一般的な相場のセオリーとして、金利上昇は株式市場にとっては逆風になることが多いのですが、ここに来て金利上昇が落ち着き、今後も低下傾向が続くのであれば、さらに米国株の上昇が見込めることになります。
今週の注目ポイントは?
その一方で、図5にもあるように、日本や中国、インドなど米国以外の株式市場が米国株の上昇について行けるのかが気になるところですが、今週は二つのイベントが注目されることになりそうです。
一つめは、今週3日(火)に公表される、世界半導体市場統計(WSTS)です。
図7米主要株価指数のパフォーマンス比較(2023年末を100)(2024年11月29日時点)
上の図7は米国の主要株価指数のパフォーマンス比較ですが、半導体関連銘柄で構成されるSOX指数が足元で低迷しています。夏場までの半導体株は相場の牽引役として存在感を発揮していたことを踏まえると、かつての勢いを無くしている格好です。
今週発表される統計で半導体の需要増が示された場合には、半導体関連銘柄に見直し買いが入り、SOX指数が大きく反発していくことが考えられます。日本株でも、半導体関連銘柄は株価指数への寄与度が大きいだけに、日経平均などが米国株にキャッチアップするような動きになることも想定されます。
そして、もう一つの注目ポイントが米国の景況感と金利動向です。
今週の米国では、11月分のISM(米サプライマネジメント協会)景況感指数(製造業・非製造業)や、雇用統計などの経済指標の発表が予定されていますが、これらの経済指標の結果が市場の予想以上に強い内容となった場合には、FOMCでの利下げ期待が後退し、米金利が上昇することで、株式市場の重石となる可能性があります。
したがって、米国で今週発表される経済指標は、市場の予想通りか、ちょっと悪いぐらいの結果の方が、株式市場にとってプラスなのかもしれません。
もっとも、現在「独り勝ち」の状況となっている米国株も、「危うさ」がないわけではありません。
図8米国株価指数の株式益回りと米10年債利回りの推移(2024年11月29日時点)
確かに、足元の米金利は低下傾向にありますが、上の図8が示すように、米10年債の利回りと、株式の益回りを比較すると、あまり変わりない水準となっています。
本来であれば、リスク資産である株式の益回りの方が、安全資産である債券の利回りよりも高くなるのが自然であるため、まだ株式がかなり割高であると言えます。
また、トランプ氏の発言で市場が揺さぶられやすい不確実性もあるほか、クリスマス商戦の動向なども注目されると思われ、今週は年末相場に向けた良好なムードを醸成・維持できるかがポイントになりそうです。
(土信田 雅之)
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