[今週の日本株]今年の「掉尾の一振」への期待度は?~2024年は株価上昇の意味が問われる年末に~
トウシル / 2024年12月23日 12時0分
[今週の日本株]今年の「掉尾の一振」への期待度は?~2024年は株価上昇の意味が問われる年末に~
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「【テクニカル分析】今週の日本株 今年の「掉尾の一振」への期待度は?~2024年は株価上昇の意味が問われる年末に~<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し>」
先週末12月20日(金)の日経平均株価は3万8,701円で取引を終えました。前週末終値(3万9,470円)比では769円安、週間ベースでも3週ぶりの下落に転じています。
日米の金融政策イベントという12月相場の「ヤマ場」を通過した先週でしたが、大納会が来週の30日(月)の1日のみの取引となるため、実質的に今週が2024年相場の最終週となり、一気に年末モードへと突入します。
株式市場では例年、年末を迎えるタイミングで、「掉尾の一振(とうびのいっしん)」と呼ばれるキーワードを耳にする機会が増えます。掉尾の一振とは、年末にかけて株価が上昇しやすいという経験則(アノマリー)です。
そこで、今回のレポートでは、その掉尾の一振への期待度について考えて行きたいと思います。
日経平均の見た目は変わらず。ただし、、、
まずは、いつものように足元の日経平均の状況からチェックしていきます。
図1 日経平均(日足)の動き(2024年12月20日時点)
上の図1で先週末時点の日経平均の株価水準(3万8,700円)を確認すると、株価の位置的には、10月から続くレンジ相場(3万8,000円から4万円)の範囲内にとどまっており、ここ2カ月以上にわたって見てきた「いつもの相場の景色」という印象になっています。
確かに、株価位置はあまり変化していないのですが、日経平均は週を通じて前日比で下落する日々が続いたり、週末20日(金)時点で6日続落となったほか、今週5営業日のうち、3営業日が「安値引け」だったりと、値動きは弱かったと言えます。
今のところ、75日移動平均線がサポートとなっていますが、ココを株価が下抜けしてしまった際には注意が必要です。
図2 日経平均(日足)の動き その2(2024年12月20日時点)
次に見て行くのは上の図2で、先ほどの図1に複数のトレンドラインを書き加えたものです。
このチャートは前回のレポートでも紹介したのですが、その際に、ポイントとして挙げていたのは以下の2点です。
(ポイント1)8月5日と10月15日を起点とした上向きのギャン・アングルの「2×1」ラインに沿った動きを維持して4万円台トライができるか?
(ポイント2)株価が下落した際、7月11日と10月15日を結んだ「上値ライン」をサポートにできるか?
その結果として、先週の日経平均はポイント2の動きに近いものとなりました。今後は、上値ラインから反発して再び「2×1」ラインに向かって上昇できるか、もしくは、株価が「上値ライン」や移動平均線を意識しながら「3×1」ラインへと向かっていくのかが焦点になります。
株価の現在位置からすると、「2×1」ラインよりも「3×1」ラインの方が近いため、目先は下値が意識されやすいと思われますが、「3×1」ライン自体が足元でレンジ相場の範囲内に入ってきたことや、「4×1」ラインを目指すほど相場の地合いが悪化していないことを踏まえると、「もうしばらくレンジ内で値固めすることができれば、株価は再び上値を試しやすい」状況と考えることもできます。
TOPIXの判断は強弱が分かれる格好
続いて、TOPIX(東証株価指数)の動きも見て行きます。
図3 TOPIX(日足)の動き(2024年12月20日時点)
上の図3はTOPIXの日足チャートですが、日経平均が一定の値幅のレンジ相場を続けていたことに対して、TOPIXはいわゆる「上昇ウエッジ」型の保ち合いを形成し、先週末にかけてこの上昇ウエッジの下限の線を下抜けしつつあるように見えます。
上昇ウエッジとは、「株価がもみ合いを繰り返しながら、上値を切り上げる線が下値を切り上げる線の角度よりも緩やかになっている」形状のことを指し、見た目の印象は強そうなのですが、実際には下落することの方が多いとされています。「頑張って下値を拾っているのに、それに見合うだけの株価上昇とならず、やがて買い方が力尽きて行く」という考え方が背景にあります。
確かに、TOPIXにおける上昇ウエッジの存在は株価下落のサインとなる可能性がありますが、上昇ウエッジを形成してきた時期の株価と75日移動平均線の関係性を見て行くと、9月から10月にかけては、「移動平均線が下向きの中で株価の抵抗」として機能していたのが、11月の半ばを過ぎると、「移動平均線が上向きの中で株価のサポート」として機能しつつあり、こちらは前向きな兆候です。
それだけに、TOPIXの強弱の判断は、株価が75日移動平均線を維持できるかが重要なカギになります。
なお、図2で見てきた日経平均のトレンドラインをTOPIXに当て嵌めたものが下の図4になりますが、基本的な見方は日経平均と同様に、上向きのギャン・アングルの「2×1」ラインと「3×1」ラインを意識しながら方向感を探っていくことになります。
図4 TOPIX(日足)の動き その2(2024年12月20日時点)
日本株は「株価位置は堅調だが、値動きは弱い」
このように、テクニカル分析的に見た日本株は、「株価位置は堅調だが、値動きは弱い」ということになり、積極的に上値をトライしにくい状況であると言えますが、続いて、株価材料の面でも今後の相場展開について考えて行きたいと思います。
まずは、「先週の日米金融政策イベント通過後の余韻」についてです。
米国のFOMC(連邦公開市場委員会)では、「利下げが決定したものの、今後の見通しは利下げペース鈍化」という結果となり、日本銀行金融政策決定会合では、「利上げの見送りが決定され、今後の利上げについても明確なヒントはなし」という結果となりました。
米FOMCの結果を受けた米国株市場の反応については、こちらのレポートでも触れたため、ここでは細かい説明を省きますが、総じて大幅下落という初期反応となり、日本株の反応については、米国株と比べると限定的ながらも下落となっています。
また、外国為替市場は円安方向に向かい、債券市場については、それぞれの金融政策の方向性を示すような格好で、米国の金利が上昇し、国内の金利は低下となりました。
こうした状況を受けた国内株市場の物色動向を見ると、国内金利の低下を受けて不動産株が買われる一方で銀行株が売られたり、円安進行を受けて自動車など輸出関連が上昇したりするといった動きを見せています。
とりわけ、円安傾向が続くと株式市場の追い風になるとの見方に期待したいところですが、さらなる円安進行は日銀の利上げ観測を高めてしまうことも予想されるため、手掛けづらさが燻っていると思われます。
また、手掛けづらさという点では、今週の海外株市場はクリスマスで休場となるところが多く、取引量の少ない日が増えることが想定されます。
薄商い商状は、インパクトのある材料が出てきてしまうと株価が大きく動きやすい面があり、注意が必要ではありますが、経済指標の公表などイベントが少なめであることを踏まえると、基本的には方向感が出にくい展開がメインシナリオとなりそうです。
そんな中、国内株市場では、企業決算やIPO(株式の新規公開)など、国内の個別物色が手掛かり材料として注目されるかもしれません。
具体的に見て行くと、百貨店のJ・フロントリテイリング(3086)や高島屋(8233)をはじめ、衣料販売のしまむら(8227)、ドラッグストアのクスリのアオキホールディングス(3549)、ホームセンターのDCMホールディングス(3050)など、小売関連企業の決算が多くなっています。
また、IPOについても、20日(金)時点で8銘柄が今週内に初日を迎える予定ですが、東証グロース市場への上場銘柄が多く、新興株市場の値動きが注目される場面もありそうです。
さらに、米国株市場についても、株価指数どうしのパフォーマンスの差が目立ち始めています。
図5 米主要株価指数のパフォーマンス比較(2023年末を100)(2024年12月20日時点)
上の図5は、2023年末を100とした、米主要株価指数のパフォーマンス比較のチャートですが、ダウ工業株30種平均と中小型株で構成されるラッセル2000の軟調さが読み取れるほか、ここに来てS&P500種指数も上値が重たくなりつつあります。
その一方で比較的好調なのが、ナスダック総合指数と、半導体関連株で構成されるSOX指数となっており、足元ではグロース(成長株)が優位な状況となっています。
グロース株が相場全体を牽引するという構図自体は珍しくはないのですが、米大統領選挙後の11月下旬までの米国株は幅広い銘柄や業種が買われ、全体的に上昇していたことを踏まえると、現在は「買える銘柄や資産」に資金が集中している面が強く、仮に今週の株価が上昇できたとしても、市場全体のムードが改善し、再び強気に傾けるのかは微妙なところです。
したがって、今週も結局はレンジ相場内での株価推移が見込まれることになり、2024年相場における「掉尾の一振」への期待度はあまり高くはないかもしれません。ただし、下値の堅さを示すような値動きとなれば、「次」の株価上昇に向けた買いが入ることも想定されるため、過度に悲観的になる必要もなさそうです。
(土信田 雅之)
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