米大統領選の勝者は誰か?米国株と為替の反応は?直前の分析(窪田真之)
トウシル / 2024年10月31日 8時0分
米大統領選の勝者は誰か?米国株と為替の反応は?直前の分析(窪田真之)
世論調査では「トランプ氏が僅差でリード」
米大統領選がいよいよ5日後に迫りました。世論調査のデータでは、全米平均の支持率で、トランプ氏が僅差でリードしています。
米国の世論調査(2024年大統領選挙候補者としての支持率):バイデン氏が大統領候補から撤退を表明した7月21日以降の推移、2024年10月29日まで
高齢不安で支持率が低かったバイデン氏が民主党大統領候補から撤退を表明した7月21日までは、トランプ氏が支持率で圧倒的にリードしていました。民主党候補がハリス氏に代わってから、ハリス氏の支持率が急上昇してトランプ氏を上回りました。
ところが、10月から逆の流れが出ました。トランプ支持率が上昇、ハリス支持率が低下して、10月29日にはわずか0.4ポイントの差で、トランプ氏がハリス氏を上回りました。
ただ支持率の差は、僅差です。この程度の差ならば、浮動票の動向しだいで、どちらが勝つことも負けることもあり得るように見えます。
賭けサイト予想では「トランプ氏勝利の可能性が極めて高い」と出ている
賭けサイトでは、トランプ氏勝利の可能性が極めて高いとみられています。
米国の賭けサイトに表れている大統領選に勝利する確率の推移:2024年10月24日まで
全米支持率で僅差なのに、市場コンセンサスでは、トランプ氏が圧倒的に優位とみられています。それには、二つの理由があります。
【1】「隠れトランプ」存在の可能性
「トランプ氏支持者は、世論調査の回答率が低い」という推論があります。世論調査は、年代や職業などいろいろな要素から分散された調査としています。ただし、アンケート回答を拒否すると、集計に表れません。
世論調査への回答を拒否する「隠れトランプ」が多いという仮説があります。
参考まで、トランプ氏が、民主党の大統領候補クリントン氏に勝利した2016年の大統領選では、直前まで世論調査では、クリントン氏が僅差でリードしていました。選挙結果は、トランプ氏の勝利でした。
米国の世論調査:2016年大統領選挙前
【2】接戦州でトランプ氏がリード
共和党トランプ氏と、民主党ハリス氏の支持率が接近していて、どちらが勝つか分からない州として、ミシガン・ウィスコンシン・ペンシルベニアの3州があります。この接戦3州で、トランプ氏支持率が優位であることから、トランプ氏勝利の可能性が高いと考えられています。
この3州に、ネバダ・アリゾナ・ジョージア・ノースカロライナの4州を加えて、接戦7州ということもありますが、その7州で見ても、トランプ氏が優位となってきています。
この点をきちんと理解していただくため、大統領選の仕組みについて以下、説明します。
11月5日の米大統領選は、全米の有権者の投票を集計して、得票数によって勝敗を決めるものではありません。
州別に人口比に応じて割り当てられた「選挙人」を選ぶのが、11月5日の投票です。全部で538人の選挙人のうち、過半数に当たる270人を獲得した候補が、大統領選の勝者となります。
全米の有権者の投票は、州ごとに集計されます。州ごとに、トランプ氏またはハリス氏を勝者と決めて、勝った方の選挙人が、大統領選への投票者として選ばれます。
得票比によって選挙人を割り振るのは2州だけで、それ以外の州は、勝った方が選挙人を総取りする方式を取っています。従って、接戦州では、死票(当選者の決定に結びつかなかった票)が大量に出ます。
現時点で、共和党が勝つのがほぼ確実な州と、民主党が勝つのがほぼ確実な州を集計すると接戦となっています。従って、勝敗は「総取り方式」の接戦州の勝敗で決まります。
大統領戦がこの方式をとっているため、全米の支持率は僅差でも、トランプ氏勝利の確率がかなり高い、と現時点で予測されています。
トランプ氏優勢を織り込んで米国株・米ドルが上昇
トランプ氏公約は、法人減税など景気刺激策が主体で、株にプラスとみられています。トランプ氏優勢を受けて、米国株が上昇していますが、「トランプ・トレード」ともいわれます。
為替市場では、ドルが買われています。トランプ氏の政策で、インフレが再燃する懸念があるとして、米金利が上昇し、ドルが買われています。トランプ氏が、輸入品に一律10%か20%の関税を課すと公約していることも、米インフレを悪化させる要因として警戒されています。
このように、大統領直前において、金融市場は、トランプ氏勝利を織り込んだ動きが出ています。大統領戦で、事前の予想通りの結果となれば、金融市場へのインパクトはさほど大きくなりません。事前にある程度、織り込み済みだからです。
一方、ハリス氏が勝利すれば、金融市場にとってサプライズ(驚き)となるので、大きなインパクトが及びます。
どういう結果が出るか、慎重にウオッチする必要があります。
以上で、大統領選直前の情勢の説明を終わります。
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(窪田 真之)
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