[今週の株式市場]海外イベントの多さと米新政権前の緊張感~微妙な「軟調サイン」に注意~
トウシル / 2025年1月14日 12時10分
[今週の株式市場]海外イベントの多さと米新政権前の緊張感~微妙な「軟調サイン」に注意~
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「【テクニカル分析】今週の株式市場 海外イベントの多さと米新政権前の緊張感~「様子見」と「先取り」のはざまで~<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し>」
先週末10日(金)の日経平均株価は3万9,190円で取引を終えました。
昨年末終値(3万9,894円)からは704円安と、2025年相場の最初の週は下落スタートとなってしまいました。1月6日に掲載した前回のレポートでは、「日経平均のチャートの形は悪くないので、強気のラインまで戻せるか?」という点に注目していましたが、結果的に上値を伸ばすことができませんでした。
そこで、今回のレポートでは、「チャートの形状に変化が生じたのか?」、また、「米雇用統計の米株市場の初期反応はどうか?」、そして、「今週の相場展開はどうなりそうなのか?」などについて考えて行きたいと思います。
日経平均チャートで気をつけておきたいポイントは?
まずはいつものように、日経平均の足元の状況から見て行きます。
図1 日経平均(日足)の動き(2025年1月10日時点)
上の図1で、先週の日経平均の動きを振り返ると、大発会の6日(月)は下落したものの、翌7日(火)には反発して4万円台を回復、続く8日(水)も4万円水準が意識されるなど、週の前半までは比較的堅調に推移していました。しかし、週末にかけては失速して行く展開となりました。
結局は、昨年10月から続く「レンジ相場」に戻り、相場の地合いにあまり変化が生じていないような印象ですが、いくつか注意しておきたい動きが見られます。
そのひとつが移動平均線と株価の関係です。図1でも確認できますが、週末10日(金)には株価が25日移動平均線を下抜けています。となると、次にサポートの目安として意識されるのが75日移動平均線になるわけですが、図1でも、レンジ相場期間で75日移動平均線が株価を支えていたことが分かります。
移動平均線の向きについては、「これから計算に加わる株価が、計算から抜けて行く株価よりも高ければ上向き、低ければ下向き」となります。現在から75日前は昨年9月の下旬の時期になりますが、図1にも記載している通り、今週は昨年9月20日から26日の株価が順に計算から抜けて行くことになります。
つまり、今週に計算に加わる株価がこれらよりも高ければ、75日移動平均線は上向きを維持することになりますが、今週末17日(金)に抜ける昨年9月26日の株価(3万8,925円)は、現在の株価とあまり変わらない水準のため、今週の日経平均が3万9,000円台割れで推移するようなことがあれば、75日移動平均線が下向きに転じる可能性はグッと高まります。
また、週足チャートでも、26週移動平均線が52週移動平均線を下抜ける「デッド・クロス」が出現しています(下の図2)。
図2 日経平均(週足)の動き(2025年1月10日時点)
大体の目安として、13週移動平均線は3カ月間、26週移動平均線は6カ月間、52週移動平均線は12カ月間の値動きの中心線になります。
つまり、先週出現したデッド・クロスは、昨年の8月あたりから、13週と26週移動平均線の角度が横ばいとなる中、上向きの52週移動平均線が追いつくような格好だったわけですが、実は、下の図3でチャートを過去に遡ると、前回のデッド・クロスも似たような上昇で出現したことが分かります。
図3 日経平均(週足)の動き その2(2025年1月10日時点)
前回のデッド・クロスが出現したのは2022年の年初でした。今回も年初というタイミングで出現したこと、そして、前回のデッド・クロス後の株価が長期間にわたって軟調気味に推移していたことを踏まえると、いざ短期の株価調整が進んでしまうと、中期的な相場も下向きの意識を急速に高めてしまうことが考えられます。
このように見て行くと、足元の日経平均は「かなり危うい」印象になってしまいますが、あくまでも、チャートから読み取れるのは、「相場が弱気になった場合に下げ足が早くなる可能性」を示唆するものであって、現時点で相場の変調自体を示す明確なサインではありません。
したがって、「株価が75日移動平均線やレンジ相場を下抜ける」など、相場の変調を判断するチェックポイントを確認するのはこれからということになります。
図4 日経平均(日足)の動き その2(2025年1月10日時点)
また、先週の相場展開によって、前回のレポートで注目していた、上向きのギャン・アングルの「2×1」ラインへの復帰が遠のいてしまいました(上の図4)。
そのため、目先の日経平均は、相場の変調に注意しつつ、「3×1」ラインへ向かうことになり、上値ラインの維持と共に意識されることになりそうです。
米雇用統計に対する米国市場の初期反応は?
そして、連休明けで迎える今週の国内株市場ですが、週初の14日(火)は、先週末10日(金)に米国で公表された雇用統計の結果を織り込む動きからのスタートが見込まれます。そこで、簡単に米雇用統計の結果と、それを受けた米国市場の初期反応についても整理したいと思います。
図5 米雇用統計の結果のまとめ
上の図5は過去分を含めた米雇用統計の結果を簡単にまとめたもので、図の中で青字となっている数字が今回発表された内容になります。
平均時給(前年同月比)が予想を下回る伸びとなり、賃金インフレ圧力は加速しなかったものの、失業率が低下したことや、非農業部門雇用者数が予想を大きく上回ったことから、今回(12月分)の米雇用統計は全般的に労働市場の堅調さを示す結果だったと言えます。
この結果を受けて、FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げペースの鈍化が意識され、米国市場の初期反応は株安・債券安(金利上昇)となりました。
この日のNYダウは前日比で1.63%安、S&P500が1.54%安、ナスダック総合指数が1.63%安と、主要株価指数が揃って下落したほか、米10年債利回りも4.7%台の後半水準まで上昇しています(下の図6)。
図6 米10年債利回り(日足)の推移(2025年1月10日時点)
前回のレポートや、先週金曜日に掲載したこちらのレポートでも指摘してきたように、金利の高止まりは株式市場の上値を抑える要因となります。
高金利によって、企業が資金調達を行うのが難しくなり、経済活動が抑制的になってしまう懸念があるほか、株式の益回りと国債の利回り格差が縮まることによって、リスク資産である株式の割高感が強まり、安全資産の債券に資金が向かいやすくなるという理屈です。とりわけ、こうした金利高の影響を受けやすいのは、規模の小さい中小企業となります。
そこで、米国の中小型株で構成される株価指数の「ラッセル2000」の値動きについても確認していきます。
図7 米ラッセル2000(日足)の動き
ラッセル2000の株価は、米10年債利回りの上昇傾向に歩調を合わせるような格好で下落基調を辿っています。
チャートの形状からは、いわゆる「ダブル・トップ」を形成し、「ネックライン」も下抜け、下値を探りに行っているようにも見え、足元では200日移動平均線が意識されるところまで株価水準を切り下げています。
昨年(2024年)は、この200日移動平均線がサポートとして機能していたことを踏まえると、今回もココで踏みとどまれるかが注目されますが、その行方は今週公表される米経済指標や企業業績の動向がカギを握ることになります。
今週は海外イベント多く、トランプ政権前の緊張感も
では、今週のイベントスケジュールについても確認していきます。
3連休明けで4営業日となる国内市場はイベントが少ないため、相場展開は米国を中心とする海外イベントに左右される場面が増えそうです。
まず、米国の経済指標では、雇用統計の結果を織り込む動きから、14日(火)公表の12月PPI(生産者物価指数)や、翌15日(水)の12月CPI(消費者物価指数)といった、物価関連指標の結果が注目されるほか、16日(木)には12月小売売上高も公表される予定となっています。
先ほども指摘したように、米国金利の高止まり傾向が株式市場の上値の重石となっているだけに、これらの米経済指標が少し弱いぐらいの結果の方が、米国の利下げ期待を高めることにつながって株式市場にとってプラスに働くかもしれません。
また、米国では、JPモルガン・チェース(JPM)やウエルズ・ファーゴ(WFC)、ゴールドマン・サックス・グループ(GS)、シティグループ(C)、モルガン・スタンレー(MS)などの大手金融機関を中心に企業決算が本格化し始めるタイミングとなり、企業業績への反応も注目されます。
さらに、中国でも17日(金)に、10-12月期のGDP(国内総生産)や12月分の経済指標がまとめて公表される予定となっています。
このほか、中国発の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」を規制する米国の法律発効の差し止めをめぐる訴訟の行方も注目されるかもしれません。
米国では、「TikTokの親会社(中国バイトダンス)が米国事業を売却して中国資本から切り離さないと、米国内でのサービス提供を禁じる」という法律が19日(日)に発効してしまうため、米最高裁はその日までに法律の発効を差し止めるのか否かの結論を出すことになります。
このように、今週の基本的な相場展開は、こうした海外の経済指標や企業決算をにらみつつ、先週からの軟調ムードが続くのか、それとも持ち直していくのかを見極めていくことになりそうですが、その一方で、米トランプ次期政権の発足がいよいよ来週1月20日に迫っていることもあって、緊張感が高まり、様子見ムードで相場が膠着していく展開も想定しておく必要があります。
短期的な株価の値動きに合わせて機敏について行くのでなければ、慎重に相場展開を見極めた方が良いのかもしれません。
(土信田 雅之)
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