[今週の株式市場]2度の試練に立ち向かう日本株~「トランプ」と「日銀」、そして意外な「伏兵」も~
トウシル / 2025年1月20日 11時45分
[今週の株式市場]2度の試練に立ち向かう日本株~「トランプ」と「日銀」、そして意外な「伏兵」も~
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「【テクニカル分析】今週の株式市場 2度の試練に立ち向かう日本株~ 「トランプ」と「日銀」そして意外な「伏兵」も~<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し> 」
先週末1月17日(金)の日経平均株価は3万8,451円で取引を終えました。先週末終値(3万9,190円)からは739円安となり、2025年相場が始まって2週間が経過しましたが、一時4万円台を回復する場面を見せながらも、週間ベースではまだ上昇できていない状況となっています。
先週の日経平均は、レンジ下限でトランプ「Day1st」待ち
まずはいつものように、先週の日経平均の値動きから確認していきます。
図1 日経平均(日足)の動き(2025年1月17日時点)
連休明けで迎えた先週の日経平均ですが、上の図1を見ても分かるように、週を通じて弱含んだ印象です。
まず、株価は週初の14日(火)に75日移動平均線を下抜け、以降も200日移動平均線を意識しながら推移していったほか、ローソク足の形状も、陰線(終値が始値よりも安い線)が週を通じて並ぶ格好となり、前週から含めると、6日連続の陰線となっています。
また、週末17日(金)の取引時間中には3万8,055円の安値をつけ、昨年10月から継続している、3万8,000円から4万円のレンジの下限まで下げる場面がありました。
トランプ米大統領がいよいよ今週の20日(月)に正式に就任し、いわゆる「トランプ政権2.0」が始まるというタイミングが目前に迫っていることが、日本株のムードを慎重にさせたと言えます。
日本株が軟調だったもうひとつの要因は?
もちろん、「トランプ政権2.0」を前に、慎重ムードだったのは日本株だけではありません。
図2 国内外主要株価指数のパフォーマンス比較 (2024年末を100)(2025年1月17日時点)
上の図2は、昨年(2024年)末を100とした、日本・米国・中国、そしてインドの主要株価指数のパフォーマンスを比較したものですが、米国の主要3指数(ダウ工業株30種平均・S&P500種指数・ナスダック総合指数)以外は、昨年末比で100を下回っていることが確認できます。
米国については、トランプ政権2.0への警戒感がくすぶりながらも、こちらのレポートでも指摘したように、先週発表された物価関連の米経済指標の結果を受けて、米10年債利回りなどの米国金利が低下したほか、ゴールドマン・サックスなどの米大手金融機関の決算が好感されたことなどが株高につながりました。
また、図2からは、他の株価指数と比べて、日本株(日経平均とTOPIX[東証株価指数])のパフォーマンスが冴えないことも確認できますが、その理由としては、今週23日(木)から24日(金)にかけて開催される日本銀行金融政策決定会合で、利上げが実施される可能性が高まったことが影響していると思われます。
今週の日本株は2度の試練に立ち向かう
したがって、今週の日本株は、20日(月)のトランプ政権2.0の初日と、週末24日(金)に結果が公表される日銀金融政策決定会合の2つの「試練」に立ち向かうことになります。
もう少し、具体的にスケジュール感を把握していくと、トランプ新大統領の就任式が始まるのは、日本時間21日(火)の午前1時頃、就任演説を行うのは午前2時頃の予定となっています。
そのため、21日(火)の日本株市場がトランプ政権の初日を受けて始まる最初の主要市場となるほか、就任演説後に大統領令が出てくることも想定され、この日の取引時間中に株価が大きく動く可能性もあるため、注意が必要です。
また、週末にかけての日銀金融政策決定会合ですが、すでに市場では0.25%の利上げの実施が強く意識されているため、利上げの幅や、利上げが見送られるなどのサプライズがあるか、そして、会合後の記者会見で語られる今後の金融政策の方向性などが焦点になりそうです。
日経平均の目先の想定シナリオ
日本株を含め、今後の株式市場が上昇していくのか、それとも本格的に下落していくのかについては、とにかくトランプ政権2.0の初日を通過しないと、市場は前に進むことができないため、現時点では、上昇したとき・下落したときのそれぞれの目安を探るぐらいしかできませんが、ここでは日経平均の値動きについて考えていきます。
図3 日経平均(日足)の動き(2025年1月17日時点)
上の図3を見ても分かるように、先週末17日(金)の株価は、昨年7月11日と10月15日の高値どうしを結んだ「上値ライン」がサポートになるようなところに位置しています。
仮に、株価が上昇で反応した場合には、レンジ相場の上限である4万円台や、移動平均線の上抜けなどを確認しつつ、トレンドの方向性は、昨年8月5日安値と10月15日高値を基準とした、上向きの「ギャン・アングル」の「3×1」ライン、もしくは「2×1」ラインに挟まれた範囲まで株価が上昇していくことが想定されます。
反対に、株価が下落していった場合には、先ほどの上値ラインやレンジ相場の下限の3万8,000円台を下抜けることになるほか、足元の株価がすでにサポートになりそうな移動平均線を下回っているため、早い下げ足で下値を探りにいく展開が想定されます。
その場合、昨年7月半ばから8月あたまにかけて急落した後に、落ち着きを取り戻す過程で9月に下げ渋った3万6,000円あたりが目安になると考えられます。
思わぬ「伏兵」にも注意
また、トランプ政権2.0については、日本株にとって、米中関係が思わぬ「伏兵」になるかもしれません。
市場では、「トランプ政権2.0は、中国に対して厳しく接するのでは?」という見方が優勢となっていますが、先週、中国の習近平主席がトランプ氏と電話会談を行ったと報じられたほか、トランプ大統領の就任式には、副主席で外交を担当する韓正氏が出席する予定となりました。
これまでの米大統領の就任式には中国の駐米大使が出席するのが慣例だったため、米国に対して、中国側がかなり配慮している様子がうかがえます。
こうした動きを踏まえると、外交的には「当面は、中国に対しての圧力は思っているよりも強くならないのでは?」という可能性を考える必要が出てきます。実際にそうなった場合、米中関係における過度な警戒感が後退した中国株が大きく上昇し、アジア市場での資金の流れも、日本から中国に向かいやすくなるといった展開も想定されます。
いずれにしても、今週は、昨年から続く日経平均のレンジ相場から、「次の展開」へと動き出す節目の週になりそうです。
(土信田 雅之)
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