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2025年の米国株を予想!S&P500の上値は?アメリカ・ファーストの光と影

トウシル / 2024年12月2日 16時40分

2025年の米国株を予想!S&P500の上値は?アメリカ・ファーストの光と影

2025年の米国株を予想!S&P500の上値は?アメリカ・ファーストの光と影

1.世界市場で「米国株の独り勝ち」が鮮明となっている

 米国市場の株式動向を象徴するS&P500種指数は11月に+5.7%と2023年11月以来1年ぶりの月間上昇率を記録し「強気相場」を維持しています。11月29日には今年53回目となる過去最高値を更新。11月5日の大統領選挙後では最高値を6回更新しました。

 米国の有権者の過半は「アメリカ・ファースト」(米国第一主義)を掲げるトランプ前大統領の再選を選択。同時に実施された連邦議会選挙でも共和党が上院議会と下院議会で多数党を占める「トリプル・レッド」(トライフェクタ)を果たしました。

 10月中旬から市場を覆っていた政治的不透明感は後退し、「トランプ2.0」と呼ばれる共和党主導による「プロビジネス」や「アニマルスピリッツ」(法人減税や規制緩和など企業寄り)と呼ばれる政策期待が株式市場の上昇要因となりました。また、今年も為替市場では総じてドル高・円安となっています。

 図表1は、ドル建て米国株(S&P500)と全世界株(オールカントリー)、円換算した米国株と全世界株および日本株(TOPIX(東証株価指数))の年初来リターンを比較したものです。為替差益を加味した円換算S&P500(為替ヘッジなしインデックスファンドをイメージ)の年初来騰落率は+34.2%、円換算の全世界株は同+25.9%と日本株のリターン(+13.3%)を大きく上回っています(11月29日)。

 こうした中、トランプ氏による関税引き上げや対外強硬策の不安を受け、欧州株、日本株、中国株は選挙後に劣勢となっており全世界株の重しとなっています。換言すると、全世界株の時価総額ウエートで6割以上を占める米国株の優勢が全世界株の堅調を支えているのが現状です。

 世界株式のアセットアロケーション(国別資産配分)を管理する機関投資家にとり「軽視できない市場別優劣」が出てきたことを2025年に向けて意識したいところです。

<図表1>世界市場では「米国株の独り勝ち」が鮮明に

(出所)市場実績より筆者作成(2024年11月29日)

2.「アメリカ・ファースト」の光と影に揺れる米国市場

 大統領選挙後の米国株堅調を支えている要因の一つが企業景況感の改善です。図表2は、S&Pグローバル社が世界で実施しているPMI(購買担当者指数)のうちの米国PMIの推移を示したものです。市場参加者はその「速報性」に注目しており、11月分のPMI(速報値)は11月22日に発表されました。

 今回は「トランプ再選」が決まった後の11月12日から21日にかけて調査されたことで注目されました。11月PMI(速報値)によると、総合PMIは55.3と2022年4月以来の高水準に上昇しました。製造業PMIも景況感の分岐点(50)を下回る水準ながら2カ月連続で反発しました。

 重要な点は、米国GDP(国内総生産)の約8割を占めるサービス業(非製造業=IT関連を含む)のPMIが57.0と2022年3月以来の水準に急改善したことです。2020年5月にスタートした米経済成長がトランプ政権の景気刺激策で「ソフトランディング」(軟着陸)から「ノーランディング」(無着陸=成長を続ける)に向かう可能性を示唆します。

<図表2:大統領選挙後に急改善した米国企業の景況感(PMI)>

(出所)S&PグローバルによるPMIデータより筆者作成

 本稿でも言及したとおり、トランプ共和党は選挙公約として「所得税減税(2017年からの時限措置だったトランプ減税の延長・恒久化)」「法人減税(米国内生産企業には法人税率を21%から15%に減税)、規制緩和、化石燃料(石油・天然ガス・石炭)の増産」を掲げており、企業の設備投資拡大、雇用拡大、エネルギー投入コスト低減への期待を高めたものとみられます。

 S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスは、「金利低下見通しに加えて、次期政権によるビジネス志向のアプローチが期待され楽観を高めている。それが生産拡大を促し、受注増加につながっている」と述べました(Bloomberg News)。

「アメリカ・ファースト」は「メイク・イン・アメリカ」(米国での生産活動や雇用増を優先する政策方針)ともいえます。トランプ氏再選を受けた株高現象は初期反応としては当然のことでしょう。ただし、こうした「明るい期待」がある半面、「不安視すべきリスク」もあることを軽視するべきではありません。

3.閣僚人事発表の注目点と早々の「トランプ砲」の影響

 トランプ次期大統領は、2016年当選時と比較して早々と閣僚人事(指名)を発表しています。前回当選した際は政界・議会にコネクションが乏しかったトランプ氏は、重要閣僚の指名で遅れをとり、自身の政策に異を唱える閣僚も選ばざるを得ませんでした。

 しかし、2017年からの政権運営経験に基づき、2020年落選後でもトランプ氏を支え続け自身に忠誠だった側近を閣僚に指名しています。

 これら閣僚は、「MAGA」(米国を再び偉大な国にする)の方針に沿い、共和党保守強硬派やフロリダ州人脈を中心に選出されています。市場が驚いた人事が政権の要(かなめ)である「大統領首席補佐官」に史上初めて女性のワイルズ氏(67歳)を指名したことです。

 彼女は選挙戦のトランプ陣営で選挙対策本部長を務め、トランプ氏に直接意見をしたりいさめたりしたことで「猛獣使い」との評判が伝えられました。トランプ氏もワイルズ氏を「Ice Maiden」(氷の乙女=冷静沈着で有能な女性)と呼び信頼を寄せています。

 穏健派共和党員とされる彼女がトランプ次期大統領の最側近としてホワイトハウスの内外調整を仕切ることで新政権の安定度が増すとの評価が浮上しました。

 また、ルビオ国務長官(対中国・対イラン強硬派の上院議員)やラトニック商務長官(反自由貿易主義・製造業国内回帰を主張する投資銀行CEO)などの指名が対外政策の方向性を象徴しています。

 こうした中、ベッセント氏(ヘッジファンドCEO)を財務長官に、ハセット氏(元FRB(米連邦準備制度理事会)エコノミスト:第1次トランプ政権で減税策を手掛けた)を国家経済委員長に指名したことを市場は好感しました。

 特にベッセント氏は日本の故・安倍晋三前首相が2013年に唱えた「アベノミクスの3本の矢」に倣い、「米国版3本の矢(3-3-3)」を表明しました。

 これは、(1)米・財政赤字のGDPに対する比率を3%(2024年は6.4%)に低減、(2)規制緩和を進めて米・実質成長率を+3.0%に高め、(3)国内の原油生産量を日量300万バレル増やす―とトランプ氏好みで分かりやすい方針です。ベッセント氏の財務長官指名を受け、債券市場金利が低下(債券価格は上昇)し、株式も一段高で応じたことに注目です。

 一方、トランプ氏は25日に「就任当日に(大統領令で)メキシコとカナダには関税を25%とし、中国には10%引き上げる」と表明し市場は一時動揺しました。第1次トランプ政権で「トランプ砲」や「トランプ劇場」と呼ばれ、同氏の言動が市場を混乱させた場面を想起させます。

 トランプ氏が提唱する関税引き上げは、相手国の報復関税を招きやすく、輸入業者や消費者にとりコスト上昇となりかねません。また、不法移民の強制送還・退去も賃金インフレ再燃要因につながります。

 トランプ氏は関税を外交交渉のカード(手段)に活用する姿勢ですが、トランプ氏を再選した中・低所得層が抱く「所得や富の不平等感(分断)」が解消されていくとは限りません。一方、米中対立激化が想定され、トランプ次期政権が欧州や日本に踏み絵(対中貿易や対中投資の削減)を迫る事態が警戒されています。

 トランプ再選以降、欧州と日本の株価がさえない状況が新年に引き継がれる可能性に注意を要します。相対的には「世界最強の政治経済大国」である米国市場への資金流入がしばらく続きそうです。

4.2025年の米国株見通し―大統領選挙の翌年は株高(経験則)に注目

 米国市場の経験則(アノマリー)に倣うと「大統領選挙の翌年は株高傾向」との見方が有力です。実際、過去10回の大統領選挙年以降におけるS&P500の推移を振り返ると、「大統領選挙翌年のS&P500は算術平均で+18.9%上昇した」との市場実績があります。

 特に、新しい大統領が誕生した(2025年は1月20日が就任式)「就任後100日」は政策期待で株価が上昇しやすいともいわれます。

 なお、第1次トランプ政権(2017年から2021年まで)のS&P500の騰落率は合計で+67.8%で、就任初年の2017年は+19.4%でした。「アメリカ・ファースト」の光と影に揺れる株価上下を挟みつつ、筆者はS&P500種指数が2025年も上値を切り上げていく強気相場の継続を予想しています。

 図表3は、11月中旬時点におけるS&P500指数ベースとナスダック100指数ベースのEPS(1株当たり利益)の実績と2024年、2025年、2026年の市場予想平均EPSを示したものです。企業業績でボトムラインと呼ばれるEPSは、売上拡大、生産性改善、自社株買い効果などを反映し、2025年も2026年も二桁増益率で史上最高益を更新し続けるとみられています。

 特に、S&P500種指数の時価総額ウエートで上位10社のうちで8社を占めるナスダック主力銘柄(大手テック株)の利益拡大ペースにはAI(人工知能)革命進展に伴う収益成長期待が根強く、ファンダメンタルズ(業績見通し)面でS&P500やナスダック100の強気相場継続を後押しすると見込んでいます。

 また、金融株(銀行株)、資本財サービス、中小型株が選好される循環物色も見込んでいます。上述した要因で、筆者は2025年末までのS&P500の目標値(メインシナリオ)を6,600±200ポイントと予想しています。

<図表3>2025年も2026年も最高益更新が見込まれる業績予想

(出所)市場予想平均より筆者作成

 大統領選挙で「トリプル・レッド」を獲得した共和党政権は、人事、行政、財政政策(税制変更)、外交政策、司法(最高裁はすでに保守派が多数)で裁量度が高く、分かりやすく言えばほぼ「やりたい放題」となりそうです。7月の暗殺未遂事件を切り抜けたトランプ次期大統領は「強運の持ち主」ともいわれています。

 しかし、中国、欧州、日本に対する関税引き上げや不法移民(約1,000万人)の強制送還をそのまま実施すると、米国民にとり物価高要因となりそうです。物価高が続いてトランプ政治に対する国民の不満が高まれば、2年後の中間選挙(2026年11月)で共和党が議席を減らし、4年後(2028年11月)の選挙では大統領府も与野党が入れ替わる可能性はあります。

 米国の政治イベント(選挙)は左右に揺れる「振り子」のような特徴を繰り返してきた歴史に留意が必要です。2025年も世界GDP総額の約25%を占める米国経済の相対的強さとイノベーション(技術革新)の進展を映す米国株式の相対的優位は変わらないと考えています。

 図表4は、2022年11月に登場して以降の生成AIブームをけん引してきたチャットGPT(ChatGPT)に筆者が「大統領に再選されたトランプ氏が米国経済を一段と強くして株価が強気相場を続けるイメージを描写してください」と指示して作成してもらったイラストです。

 行政、立法、司法の三権を全て押さえた「トランプ王国」と株高傾向を数分で描いてくれました。こうしたイラスト描写は初歩的な活用例です。

 トランプ支持を表明し約200億円の大口献金をして注目されるマスク氏(テスラCEO)が事業化を進める自動運転、ヒューマノイド(ロボット開発)、宇宙事業はもちろん、バイオメディカル、FA(ファクトリー・オートメーション)、金融サービスなどあらゆる業界にAIの普及が浸透して経済や産業の効率化・生産性向上に寄与していくと予想されています。

 2025年の米国市場では、こうしたAI革命の進展、FRBの金融正常化に向けた利下げサイクル、「トランプ2.0」の政策期待という三つのエンジンが株高傾向(例:S&P500 の100日移動平均線が上向きを続けていくトレンド)をけん引していくと見込んでいます。

<図表4>第2次トランプ政権による米国経済強化で強気相場が続くと予想

(出所)ChatGPTより筆者作成

(香川 睦)

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