レイ・ダリオが世界債務危機を予測しゴールドとビットコインへ投資をシフト
トウシル / 2024年12月12日 18時9分
レイ・ダリオが世界債務危機を予測しゴールドとビットコインへ投資をシフト
FRBの利下げは銀行救済!?
12月の利上げ観測が強まっていた中で、11月30日に日本経済新聞が夜中の2時に発表した植田和男日本銀行総裁のインタビューは、「利上げ時期近づいている、2025年春闘の賃上げモメンタムをみたい。一段の円安はリスクが大きい、場合によっては対応が必要になる」と、何が言いたいのか分からない内容だった。
円安による物価の暴騰だけは困るという気持ちは伝わってきた。だが、基本戦略は「円安による資産バブルや物価の上昇で大幅利上げに追い込まれない限り、2年くらいかけて半年に1回の0.25%の利上げを行う」のらくら路線である。
日本は過去数十年間、経済と社会の安定を維持するために驚くほど多額の赤字国債を発行してきたため、政府の財政は非常に脆弱(ぜいじゃく)であり、わずかな金利上昇でさえ破滅的な事態を招きかねない。日本の対GDP(国内総生産)債務比率はおよそ250%である。
日本は金利を上げることはできない。なぜなら、金利を上げると政府の予算が破綻し、低金利債務でいっぱいの年金基金のほとんどが破綻する可能性があるからだ。
一方、米国では昨日のCPI(消費者物価指数)を受けて、12月25日のベーシスポイント利下げの確率は、賭け市場で94%に跳ね上がった。FRB(米連邦準備制度理事会)が金融政策を決定する際にインフレや失業率を考慮していないことは明らかだ。彼らが本当にやろうとしているのは、銀行部門の未実現損失を救済することである。
銀行の未実現損益の推移
ドル/円(日足)
パウエルFRB議長がビットコインを「デジタル版のゴールド」と発言
トランプ次期政権がデジタル資産業界を支援するという期待がある中、なんとパウエルFRB議長が「ビットコインはデジタル資産であること以外はゴールドと同じである」と発言し市場を驚かせた。ちなみに、デジタルゴールドと呼ばれるビットコイン市場がゴールド市場並みの時価総額になれば、ビットコインは(12兆÷21万=)57万1,000ドルになる。
ビットコインは先週、初めて10万ドル(約1,500万円)を突破した。同じく12月5日のブルームバーグの記事「ビットコイン、初の10万ドル突破-トランプ氏のSEC委員長好感」によると、トランプが先月5日の大統領選で勝利して以来、ビットコインの市場規模は約1兆4,000億ドル上昇しており、支持者らは10万ドルの節目について、ビットコインが現代の価値貯蔵手段であり、インフレリスクに対するヘッジ手段だという主張を裏付けるものだとみていると指摘した。
ビットコイン/ドル(日足)
ビットコイン/ドル(週足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
世界最大のヘッジファンドの一つ、ブリッジウォーター・アソシエイツの創設者であるレイ・ダリオは、「債券や借金などの負債資産から距離を置き、ゴールドやビットコインのようなハードマネーに投資する」と語ったと、サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙が12月10日に報じた。
無茶苦茶なMMT(現代貨幣理論)をやったイエレン米財務長官は昨日WSJ CEOサミットで、米国の財政赤字の膨張についてやや謝罪し、「もっと進展が見られなかったことを残念に思う」と認めた。
「財政責任を懸念している。財政赤字を削減する必要がある」と発言したが、イエレンがFRB議長または副議長を務めていた間に米国の債務は8.2兆ドル増加し、財務長官を務めていた間には8.5兆ドル増加した。いまさら、何を言っているのだろうか?
ダリオは世界金融の基盤を揺るがす「負債マネー問題」が迫っていると警鐘を鳴らしている。ダリオはこれまでビットコインを承認していなかったが、ビットコインへの投資にかじを切ったようだ。
ビットコインは現代の価値貯蔵手段でありインフレリスクに対するヘッジ手段!?
ビットコインの上昇を受け、民間で最もビットコインを保有している企業、米マイクロストラテジー(MSTR)の株価も大きく値上がりしている。マイクロストラテジーの株価はここ1カ月で約5割、年初来では470%以上上昇している。
6日終値時点で時価総額は約920億ドルを超え、マイクロストラテジーが保有するビットコイン評価額(約251億ドル)の4倍近くに膨らんでいる。マイクロストラテジーは、今月後半にナスダック100に加わる見込みで、発表は早ければ今週金曜日に行われる可能性がある。
マイクロストラテジー(日足)
マイクロストラテジー(週足)
マイクロストラテジーはビジネス上の意思決定を行うために社内外のデータを分析するソフトウエアやモバイルソフトウエア、クラウドベースのサービスを提供する企業だ。1989年に現在、会長を務めるマイケル・J・セイラーらによって設立された。主な競合企業には、独のSAPやIBM(IBM)、オラクル(ORCL)などがある。
上場企業の中でビットコインを最も多く保有する企業で、継続的にビットコインを買い増ししている。2020年8月から大規模なビットコイン購入を開始し、その後、社債などを発行して資金調達をしつつ、大規模なビットコイン買い増し戦略を続けてきた。暗号通貨を大量に保有していることから、規制の多いビットコイン投資の代替と捉えられている。
現在、ビットコインの保有者の上位10位は、
1.ETF(上場投資信託)
2.サトシ・ナカモト
3.バイナンス
4.マイクロストラテジー
5.米国政府
6.中国政府
7.ビットフィネックス
8.クラーケン
9.ブロックワン
10.ロビンフッド
の順となっている。
ビットコインの保有者
直近では12月1日までの1週間で、1万5,400ビットコインを平均価格9万5,976ドルで購入したことを明らかにした。マイクロストラテジーが保有するビットコインをリアルタイムで追跡するサイトMSTR Trackerによると、保有するトークンは合計40万2,100枚に拡大、これは想定される総供給量の約2%に相当する。
マイクロストラテジーによるビットコイン保有(12月6日時点)
【マイクロストラテジーについていくつか考えがあります。昨日セイラーが何か言っていたのを聞いて、そのことを考えずにはいられませんでした。マイクロストラテジーに対して私が聞いた最大の弱気な意見は次のとおりです。
「この株はビットコインの価値に対して純資産価値の3~4倍で取引されており、その倍率は持続不可能であり、従って過大評価されている」
セイラーはこの弱気な見通しに対して、次のように述べた。
「待ってください、マイクロソフトは年間1,000億ドルの利益を上げているのに、なぜそれに3.4兆ドルも払うのですか?」
これは本当に私に考えさせました。
マイクロソフトは収益を生み出す製品やサービス(オフィス、コパイロット、ラップトップ、クラウドなど)を提供しています。その後、市場はその収益/純利益に価値を割り当て、その倍率を与えます。
まさにそれが、マイクロストラテジーが行っていることです。ただし、ノートパソコンのような従来の製品ではありません。
マイクロストラテジーは、より多くのビットコインを購入するための0%の金利の現金で自社の株式を担保にすることで、ビットコイントレジャリーを作成しています。その結果、同社が提供する「製品とサービス」は、ビットコインの上昇による裁定取引の機会に対して自社の株式を活用しているため、自社の株式に対してレバレッジをかける最も流動性の高いオプション市場の一つとなっています。
マイクロソフトのノートパソコンよりもアップルのノートパソコンを好むのと同じように、彼らが提供する製品やサービスが気に入らないこともあるでしょう。しかし、それは人々が喜んでプレミアム料金を支払ってくれる製品やサービスなのです。
マイクロストラテジーが安いと言っているわけではありません。明らかにビットコインに依存していますが、人々がビットコインの原資産に対してプレミアムを支払う理由については、合理的な議論があると思います。大手テクノロジー企業で見られるように、倍率は常に変化しますが、企業が自社の製品やサービスの価値を信じている場合には、市場は企業の原資産に対して倍率を与えます。
マイクロストラテジーでも同じことが起こっています】
出所:X(amit)
マイクロストラテジーはいったい何をしているのだろうか?それはポンジスキームでありバブルなのか? 規制の多い暗号通貨への投資環境で、マイクロストラテジーはビットコイン購入の代替投資機能を持つようになっている。
マイクロストラテジーは金本位制をやめた現在の不換紙幣ポンジスキームから価値をビットコインに吸い上げている。0%で転換社債を発行し、その資金を使ってビットコインを購入するという戦略で、マイクロストラテジーは今のところビットコインで法定通貨を発行できる唯一の企業となっている。
マイクロストラテジーは不換紙幣(法定通貨)のポンジスキームに差し込まれたブラックホールであり、表面的にはポンジスキームのように見えるかもしれない。
しかし、インフレが高止まりする中、企業が代替資産としてビットコインを保有する動きが広がってきている。投資家は、企業がビットコインを保有する戦略を株式市場における新たな評価軸として認識し始めている。
セイラーは、「ビットコインが価値の保存手段として機能する可能性がある」と語った。株式市場に上場する企業の株式を保有するという伝統的な金融市場の枠組みにおいて、仮想通貨市場への間接的なエクスポージャーを得ることができるからである。
「ビットコインは何十年も保有できる資本投資だ。企業や競合他社、取引相手、国があなたから奪うことはできない。そのため、あなたの家族、企業、国のために世代を超えた富を生み出せる。世界中のどこでも、いつでも、いくらででも清算ができるし、積極的な運用や商才がなくても、いくらでも保有ができる。お金を稼ぐために人生の4万時間を費やすなら、それを維持する方法を考えるのに100時間を費やす価値はある」
(マイケル・セイラー)
企業の財務戦略の新しい見方
著名投資家のポール・チューダー・ジョーンズは10月22日に米CNBCの番組に出演し、「米国の政府支出の増加と減税の見通しから、FRBが目標としている2%(現在:2.4%ほど)の達成は劇的な政策変更がない限りは事実上不可能だ」と指摘、「米国はインフレを起こし、債務負担を成長で乗り越える必要がある」と述べた。
ジョーンズは、「米国は支出問題に真剣に取り組まない限り、すぐに破産するだろう」と述べるとともに、「全ての道はインフレに通じる」として、ビットコインとゴールドを含むコモディティをロング、ナスダックのバスケットを保有する一方、利回りのある金融商品からは離れるよう推奨した。
ジョーンズが指摘するように、投資家がインフレ対策としてビットコインを投資ポートフォリオに取り入れようとする動きがまだ小さな波ではあるものの、確実に世界に広まりつつある。
12月11日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
12月11日のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』は、土信田雅之さん(楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト)をゲストにお招きして、「米国株・日本株・中国株・欧州株の現状分析」「S&P500の長期上昇相場は666から始まっている」「グーグルが超高速量子チップを発表」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。
ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
12月11日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
<楽天証券 新春講演会2025 2025年1月18日>
「為替どうなる?トランプ新大統領と世界マネーの新構図」というテーマで、14時10分から田中泰輔さんと対談します。私も楽しみにしています。ぜひ、ご参加ください。
(石原 順)
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