米利下げ確実、日銀利上げ見送りが濃厚!株式市場は調整の可能性も?
トウシル / 2024年12月16日 15時10分
米利下げ確実、日銀利上げ見送りが濃厚!株式市場は調整の可能性も?
今週は12月18日(水)に米国のFOMC(米連邦公開市場委員会)、19日(木)に日本銀行の金融政策決定会合が終了し、日米の金融政策の今後の見通しが株式市場に大きなインパクトを与えそうです。
CME(シカゴ先物取引所)が金利の先物価格の動向からFOMCの政策金利を予想する「Fedウオッチ」(12月14日[土]13時時点)では、今回0.25%の追加利下げが行われる確率が96%に達しています。
すでに利下げが確実視されているため、FOMC後の記者会見で、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が2025年の利下げペースについて、どのような発言をするかが注目されそうです。
FOMC終了後には、参加理事たちが今後の政策金利の水準を予想した分布図「ドットチャート」も発表されます。
前回9月の発表では2025年に年4回、合計1%の利下げが予想の中央値でしたが、今回は2025年の利下げ回数が3回以下に引き下げられる可能性も高く、回数減少の予想が大勢を占めていると株価にはネガティブです。
一方、19日(木)の日銀会合では追加利上げが見送られる観測です。
今週発表の景気指標では、17日(火)の米国の11月小売売上高、20日(金)の11月個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も注目です。
20日には日本の11月全国CPI(消費者物価指数)も発表されます。
先週の日経平均株価(225種)は前週末比1ドル=379円(1.0%)高の3万9,470円で終了。12日(木)には米国のハイテク株上昇を受けて一時4万円の大台を突破しましたが、4万円台に乗せて終わることはできませんでした。
米国では11日(水)発表の11月CPIが前年同月比2.7%増と2カ月連続で伸びが加速したものの、事前予想と一致したため、株価の反応は限られました。
機関投資家が運用指針にする米国のS&P500種指数は前週末比0.64%安と4週間ぶりに下落。
米国の長期金利の指標となる10年国債の利回りが長期国債の入札を控えて週初めの4.2%から一時4.41%まで5営業日連続で上昇したことが響きました。
ハイテク株中心のナスダック総合指数は11日(水)に初めて2万ポイントの大台を突破しましたが、週間では前週末比0.34%の小幅上昇で終わりました。
ただ、トランプ次期大統領の熱心な支持者で政権入りが予定される実業家のイーロン・マスク氏が創業者の電気自動車メーカー・テスラ(TSLA)は前週末比12.1%も上昇。大統領選が行われた11月5日終値からの上昇率は実に73%超に達しています。
11日(水)にはアルファベット(GOOG)やアップル(AAPL)、フェイスブックの親会社メタ・プラットフォームズ(META)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)など米国巨大IT企業の株価がそろって過去最高値を更新しました。
火がついたように上昇する米国株ですが、株価の上昇がAI(人工知能)ブームに沸く巨大IT企業に偏(かたよ)り過ぎていること、株価の割高・割安を示すS&P500のPER(株価収益率)が2000年のITバブルのピークに近づいていることなど、さすがに行き過ぎた上昇に対する警戒感も台頭しています。
2025年早々に大きな調整下落があってもおかしくない状況と言えるでしょう。
週明け16日(月)の日経平均終値は前週末比12円安の3万9,457円でした。
先週:アルファベットの量子チップは画期的!米国では物価指標高止まりで長期金利上昇!
先週は9日(月)に中国共産党が2025年に財政出動と金融緩和を積極的に実施する姿勢を示したことで、日本の中国関連株が上昇。
中国での化粧品販売不振で経営難に陥っている資生堂(4911)が10日(火)に前日比4.0%高(週間では2.5%高)となるなど中国関連株が上昇しました。
11日(水)には政府が防衛力強化の財源として、法人、所得、たばこの3税に防衛特別税を上乗せする増税案を検討していることが判明。
防衛関連株の主力株・川崎重工業(7012)は前日比10.3%高まで急騰しましたが、13日(金)に公明党の反対で増税先送りが決まったこともあり、前週末比では2.7%高と尻すぼみの展開でした。
株式が非公開化される見通しの医療機器メーカー・トプコン(7732)が前週末比63.7%高。
大規模な自社株買いを発表した製紙メーカーの王子ホールディングス(3861)が12.4%高となり、パルプ・紙セクターが週間の業種別上昇率1位になりました。
米国では、9日(月)に新型量子コンピューターチップ「Willow(ウィロー)」の開発を発表したグーグルの親会社アルファベット(GOOG)が前週末比8.44%上昇。
開発した量子チップを使うと、従来のスーパーコンピューターでは、宇宙誕生から現在までの月日をはるかに超える時間がかかる計算をたった5分で処理できるということです。
このような夢の新技術が次々と出てくることが米国株の世界最強ぶりにつながっているのでしょう。
先週11日(水)発表の米国の11月CPIは前月比では0.3%上昇と7カ月ぶりの大きな伸びとなりました。
ただ物価の3割を占める住居費が前年同月比4.4%上昇と高水準ながら前月より伸び率が低下したことも好感され、今週18日(水)終了のFOMCでの0.25%利下げ確率が高まりました。
12日(木)発表の米国の11月PPI(卸売物価指数)は、食品価格の上昇で前年同月比3.0%増と予想を超える伸び率になりました。
2024年に入ってから米国のPPIは、前年同月比で1%台前後から2%台前半で推移し、前月比ではマイナスになることもあったため、ここに来て前年比3%台まで再上昇しているのは少し気がかりです。
トランプ次期大統領が掲げる中国、メキシコ、カナダなどへの高額関税や不法移民の強制送還、減税などの政策は2025年の物価高再燃に直結する可能性があります。
そうした懸念もあって、米国の10年国債の利回りは4.395%まで上昇。さらに上昇すると絶好調の米国株が下落するきっかけになりそうです。
今週:FOMCでは株価の反応に注目!年収の壁引き上げ案の紛糾は日本株への失望につながる!?
今週は、米国FRBと日本銀行が政策金利を決める中央銀行ウイークです。
特に、米国株はトランプ相場で絶好調なだけに、18日(水)に利下げが行われた場合、上昇相場にさらに勢いがつくか、それとも材料出尽くしで反落するのか株価の反応に注目しましょう。
19日(木)終了の日銀の金融政策決定会合に関しては先週、利上げ見送り観測が台頭しており大きな波乱はなさそうです。
ただ、植田和男日銀総裁は11月末に「データがオントラック(想定通り)に推移しているという意味では(利上げが)近づいている」と発言しています。
確かに、利上げを決める重要な材料となる、コアCPIは10月まで31カ月連続で日銀が目標とする2%を上回って推移。
12月6日(金)発表の10月の毎月勤労統計調査によると、最低賃金の引き上げによる賃上げの影響で物価変動の影響を除いた実質賃金は前月比横ばい。また、3カ月ぶりにマイナスから脱却するなど、日銀が利上げに踏み切ってもいいデータはそろいつつあります。
ただし、実際に利上げとなると市場が混乱する可能性も高いでしょう。
市場では、日銀がトランプ次期大統領就任直後の1月24日(金)終了の金融政策決定会合で利上げに踏み切るのは難しいため、3月18~19日の会合以降になるという見方も浮上しています。
今週19日(木)に日銀が利上げを見送れば、先週1ドル=153円70銭台まで進んだ円安がさらに加速するかもしれません。
円安自体は株価にとって追い風になるため、今週の日経平均株価が再び4万円台に突入する可能性も高そうです。
ただ、先週、米国では金融、資源など重厚長大産業の組み入れ比率が高く、金利上昇や景気失速に敏感なダウ工業株30種平均が前週末比1.82%安で、7営業日連続で下落。
これが米国株調整の前兆シグナルだとすると、日本株も悪影響を受けそうです。
先週11日(水)には自民、公明、国民民主党の幹事長が「年収の壁」と言われる所得税控除の上限額を現在の103万円から178万円を目指して2025年度から引き上げることに合意しました。
これは総額7兆円規模の大型減税となるため、日本株、特に内需株にとって朗報です。
しかし、自民党は税制改正を増税派として知られる宮沢洋一自民党税制調査会長に一任し、13日(金)には「2025年は123万円」という小幅引き上げを提示。
国民民主党側は「話にならない」と反発しており、所得税控除の上限額の引き上げが小幅なものに終わると、政治への失望感が台頭し、日本株の上昇機運に水をさすかもしれません。
いずれにしても今週は18日(水)の米国FOMC、19日の日銀の金融政策決定会合で打ち出される2025年の政策見通しや、その見通しに対する株価の反応が一番の注目ポイントになりそうです。
(トウシル編集チーム)
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