年一度の中央経済工作会議が閉幕。見どころは財政出動と金融緩和の強化
トウシル / 2024年12月19日 7時30分
年一度の中央経済工作会議が閉幕。見どころは財政出動と金融緩和の強化
一年に1度の中央経済工作会議が閉幕
先週のレポート「2025年の中国経済を先読み。「適度に緩和的」な金融政策で迷走からの脱却なるか?」では、12月9日に開催された中央政治局会議で、2025年の経済政策に向けて、金融政策を巡る表現が14年ぶりに「穏健」から「適度に緩和的」に返り咲き、中央政府として、金融緩和を含めたマクロコントロールを強化していくことで、迷走する景気を下支えする用意があるという展望を示しました。その上で、12月11~12日に開催される、1年に1度の最重要経済会議である中央経済工作会議に注目すべき、という問題提起をしました。
会議では、経済を巡る現状に対して、危機感をあらわにしました。
「昨今、外部環境の変化がもたらす不利な影響が深まっており、我が国の経済運営も少なくない困難と課題に直面している。主に、国内需要が不足していて、一部企業の生産や経営は困難に陥っており、国民の雇用や収入が圧力に見舞われている。リスクや懸念点も依然多い」
一方、今年9月26日に打ち出した一連のてこ入れ策が「経済の明らかな回復」に役立っており、前向きな要素もみられるという指摘もしました。
2025年経済政策を巡る最大の見どころはマクロ政策の協調的強化
今年の中央経済工作会議における最大の見どころは、2025年の経済政策として、景気を支援、刺激するためのマクロコントロールを強化するスタンスを明確に示した点にあったと私は考えています。
財政、金融、それぞれの政策を具体的に見ていきましょう。
まずは財政ですが、「従来以上に積極的な財政政策」を実施する、特に「従来以上に」というのは非常に新鮮で、目新しい提起です。中国共産党は自らの政策の背後に潜む意思や立場をこういう文字や文脈に込める傾向にあります。財政赤字率を引き上げ、財政政策を持続的に強化し、有効なものにしていくとうたっています。また、2024年も1兆元(約21兆円)発行した超長期特別国債の額を増やすという政策も前倒しで打ち出している点は特筆に値します。
中国政府が過去2年、最も重要なマクロ政策として活用してきた財政出動の強度は、来年さらに強化されるとみていいでしょう。
次に金融ですが、2日前に行われた中央政治局会議の方向性を引き継ぎ、「適度に緩和的な金融政策」を実施していくとしています。適宜利下げを含めた金融緩和を行い、十分な流動性を保持し、通貨の供給量の増加と経済成長、価格の双水準の予測目標を相互に協調させていくと打ち出しています。人民元の為替レートを合理的で均衡のとれた水準で基本的に安定させ、金融市場の安定を守るとも主張しました。2025年1月20日はトランプ政権が発足しますが、米国発の要素を含め、私は人民元レートの動きに注目したいと思っています。
そして、あらゆる政策を組み合わせることの重要性も今回の会議ではうたっています。具体的には、財政、金融、雇用、産業、地方、貿易、環境保護、市場監督といった分野にまたがる政策や改革開放の措置を協調させることで、政策決定や執行の全プロセスを統合させ、政策の効力を高める必要性を指摘している点も重要だと思います。
マクロ政策もただ打ち出せばいいというものではない、結果や効果を生み出して初めて意味があるのだという、中央政府としての号令であり、地方政府に対する圧力とも解釈できます。
迷走続く中国経済に契機は訪れるのか。不動産とデフレに要注目
中央経済工作会議閉幕後の12月16日、国家統計局が11月(1~11月)の最新経済統計結果を発表しました。過去半年の統計との比較を含め、以下に整理してみます。
全体的に、景気が上向いているとは決して言えない現状である点が読み取れると思います。工業生産はほぼ横ばい、小売売上や固定資産投資、不動産開発投資は伸び率が鈍化しています。この点は貿易も同様で、輸出の鈍化は経済成長にとってもマイナスに働きますし、低迷があきらかな輸入は前述した国内の需要不足を顕著に物語っていると言えます。
国家統計局は9月末に打ち出したてこ入れ策が功を奏し、経済情勢に前向きな要素が増え、景気は回復に向かっているという点を強調しています。不況が続く不動産市場を巡っても、9月末の不動産支援策を受けて、10月から11月にかけて、新規住宅の販売額や面積、住宅価格にも改善、あるいは上昇に兆しがみられ、新築や中古を含め住宅の取引量は増加しているという説明をしていますが、かなり苦し紛れの弁明のように私には聞こえます。
例として、中国政府が毎月発表している主要70都市の新築、中古の住宅価格の変動を見ると、11月、前年同月比で価格が上昇した都市が、新築で3都市、中古はゼロという状況です(前月比だとそれぞれ21都市、12都市)。
不動産不況とデフレスパイラル。
近年の中国経済の迷走を象徴する二つの分野であり要素であると私は理解していますが、2025年に向けて、これらがどういう推移を見せるのか。何らかの回復はあるのか、あるいは長期低迷というトンネルに入り込んでいってしまうのか。本稿で検証してきた、財政や金融を含めたマクロ政策の強化が、景気を巡るジレンマの解消にどうつながっていくのか。
2025年3月に開催予定の全国人民代表大会(全人代)で、より具体的で明確な経済目標・政策が打ち出されると思いますので、注目していきます。
(加藤 嘉一)
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