バフェットが記録的な額の現金を蓄えると…
トウシル / 2024年12月19日 17時28分
バフェットが記録的な額の現金を蓄えると…
FOMCはいらない?政策金利は2年国債金利に追随するだけである!
FOMC(米連邦公開市場委員会)は市場の予想通り3会合連続の利下げを決めた一方、2025年に見込む利下げ回数を2回に減らした。これが市場では驚きと受け取られ、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が予想外にタカ派に転じたことで市場は急落したと報道されている。
S&P500CFD(5分足)
米国市場はユーフォリア(過度な幸福感、陶酔感、高揚感)状態にあり、パウエルが「利下げをやめそうなこと」がショックだったようだ。しかし、12月16日時点のFF(フェデラルファンド)金利先物市場でそれはすでに織り込まれており、FOMCの「ドット・プロット」はそれを後追いしているだけである。
FF金利先物市場の予想(2024年12月16日時点)
FOMCの「ドット・プロット」(FOMC参加者の政策金利見通し)
債券王ジェフリー・ガンドラックは、かねてより「FF金利は2年国債金利に追随するだけだ」と述べている。
1984年以降のFF金利と米国2年国債金利の推移
米国2年国債金利は、FRBの次回の金利動向の先行指標とみなされている。だから、投資家はほとんど当たったことのないFOMCの「ドット・プロット」を見るより、景気に最も敏感に反応する米国2年国債金利を見ておけばいいのである。
米国2年国債金利(週足)
米国債市場の本当の問題は、常軌を逸した米国債の供給量にある。現在、米国の巨大な債務の壁が満期を迎えている。発行残高28兆ドルの米国債のうち、これから3年間で米財務省は15.5兆ドルの債務を借り換えなければならない。
米国の債務を返済するための利息コストは、ここ数カ月で爆発的に上昇している。長期金利が急上昇するのを防ぐためFRBはいずれQE(国債買い入れ)をやることになるだろうが、それはインフレを急上昇させることになるだろう。
巨大な債務の壁と米国債の償還
米国の負債の利子は年間1兆2,000億ドルを超える。政府の歳入の4分の1は債務の利子の支払いに充てられており、債務の利子は現在、高齢者への社会保障給付に次いで連邦予算で2番目に大きな項目となっている。
米国が公式な不況に陥ったとき、どれだけの負債が必要になるのだろうか? 36兆ドルの負債があり、数カ月ごとに1兆ドルずつ増えている現状では、信用拡大は限界に達している。いずれ崩壊は避けられない。レイ・ダリオはミルケン研究所アジアサミットで、「債務は無視され、実質的な負担を軽減するためにインフレが利用される可能性が高い」と述べた。
米国株式市場が史上最高値を更新する中、利下げなど必要であろうか? FRBが今回の利下げで本当にやろうとしていたことは、銀行部門の未実現損失を救済することである。米国の銀行の評価損を減らすには利下げしかない。
銀行の未実現損益の推移
一方、日本銀行は本日12月19日の会合で予想通り基準金利を0.25%に据え置くことを決定した。日本は過去数十年間、経済と社会の安定を維持するために驚くほど多額の赤字国債を発行してきたため、政府の財政は非常に脆弱(ぜいじゃく)であり、わずかな金利上昇でさえ破滅的な事態を招きかねない。
日本2年国債金利(月足)
日本の対GDP(国内総生産)債務比率はおよそ250%である。日本は金利を大幅に上げることはできない。なぜなら、金利を上げると政府の予算が破綻し、低金利債務でいっぱいの年金基金のほとんどが破綻する可能性があるからだ。こうした中、ドル/円は再び高値をうかがう動きとなっている。
ドル/円(日足)
グランドフィナーレ的な米国株の上昇
今週、米国株式市場はナスダック100が史上最高値を更新した。テスラは再び史上最高値に急騰し、過去7週間で2倍以上に上昇した。ビットコインは10万8,000ドルを突破し、史上最高値をつけた。2008年以降の米国株式市場は、負債と資産を両方膨らませる国家管理的な人為的バブル状況であり、それがエクステンションし後半戦を迎えている状況だ。
ナスダック100CFD(日足)
テスラ(日足)
ビットコインドル(日足)
信じられないことに、米国の株式ETF(上場投資信託)と投資信託への流入額は、過去9週間で過去最高の1,860億ドルに達した。これは、2021年2月の過去最高記録1,440億ドルより220億ドル高い数字だ。今年上半期の平均流量の2倍以上である。
株式ファンドへの資金流入は、今年の市場全体の上昇の大きな原動力となっている。その結果、S&P500種指数は年初来で54回の史上最高値を記録し、27%上昇した。投資家たちはかつてないほど株に群がっているのである。
S&P500の上位10銘柄の時価総額は現在、過去最高の20.9兆ドルに達している。これら10銘柄の価値は現在、ドイツ、カナダ、英国、インド、日本の株式市場を合わせた価値を上回っている。
米国株式ETFおよび投資信託への9週間の資金流入推移
S&P500CFD(日足)
NYダウCFD(日足)
トランプ次期大統領は米国の破局的な崩壊を一時的に止めることはできるかもしれないが、これまでの何十年にもわたる政治の誤った決断や昨今のドルや米国債離れで今にも崩れ落ちそうな帝国の負債の塔を覆すために、たった4年間で彼ができる実質的なことは何もないのかもしれない。
2025年の相場は2008年以降続いてきた上げ相場のグランドフィナーレ的な上昇と、全部売りの急落の両方に注意しなければならない。
バフェットが記録的な額の現金を蓄えると、2000年、2008年、2020年、そして現在のように、1年以内に大規模な株価の暴落が起こる可能性がある。3年以内だとほぼ確実に大きな調整が入るだろう。
バークシャー・ハサウェイの総資産に占める現金ポジションの割合
12月18日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
12月18日のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』は、荒地潤さん(楽天証券FXディーリング部)をゲストにお招きして、「米国の金利が高止まりすると米国経済はどうなるのか?」「金融政策より財政主導の過剰流動性経済」「2024年相場の振り返りと2025年の見通し」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。
ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
12月18日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
<楽天証券 新春講演会2025 2025年1月18日>
「為替どうなる?トランプ新大統領と世界マネーの新構図」というテーマで、14時10分から田中泰輔さんと対談します。私も楽しみにしています。ぜひ、ご参加ください。
(石原 順)
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