ゆく投資 くる投資。2025年は不確実性も獲る
トウシル / 2024年12月27日 7時30分
ゆく投資 くる投資。2025年は不確実性も獲る
今回のサマリー
●世界をリードする米国経済、米金利の2025年は、シナリオ分岐が多数絡み合う。
●その不確実性の中で、需要拡大が手堅いAI株が引き続き投資の軸。
●米金利は上下両にらみで、ドル/円も上下両にらみ。日本株は円安気味の間の好循環チェックを。
●米国一極集中で割高なAI株相場は、波乱を踏まえてのモメンタム投資が基本。
2025年はアナリスト泣かせ
新年を迎え、2025年はどんな年になるのか、さまざまな機関が予測を出しています。しかし、2025年の予想は、専門家泣かせと言ってよい不確実性を含みます。まず、足元では好況感ばかりの米経済ですが、2024年には数カ月ごとに明暗を変転させてきました。数カ月先も強気でいられるか、確信を持てません。
そこに第2次トランプ政権(トランプ2.0)のとっぴな公約が、政策として実現していきます。プラスとマイナスの両面が想定される政策が、どのタイミングでどの程度具体化するかで、景気、インフレ、金利の見方が変わるでしょう。
投資家は、こうしたシナリオ分岐が多数絡み合う不確実性にどう構えたらよいでしょうか。このレポートでは、毎年恒例「ゆく投資くる投資」企画として、2024年をきちんと踏まえた上で、2025年にどう挑むかを考えます。
米国株:AI先導
2024年ゆく投資
2024年前半は、AI(人工知能)半導体チップで独壇場のエヌビディア(NVDA)株がけん引するAI雁行相場となり、他の半導体株、AIソフトウエア株、サーバーなど周縁株、GAFAMなどビッグテック株が連なりました(図1)。しかし、速い相場には急反落が付き物です。NVDAは、7月に自律調整に入り、8月には好決算にもかかわらず株価は反落。AI雁行相場はリズムを乱しました。しかしそのかいあって、10~12月にAI関連株は、GAFAMや周縁銘柄へ物色が広がりました。
図1:AI・ビッグテック株と米株4指数(2024年通年)
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AI相場について、2023年を、ビッグテーマ出現だが、どう収益化できるか分からずにNVDAやGAFAMを買った「模索期」、2024年を、企業や機関がAI導入を検討し、予算を組んで投資に動いた「準備期」とし、2025年をAIで業務効率化、開発力向上、新文化の開化を進める「実装期」入りと位置付けています。
AI関連需要はさらに増大するでしょう。株価は、NVDA補完の他社チップも現れています。AI運用のシステムやアプリなどソフトウエア、AI稼働に要する電力、AI収益化で先行するGAFAM、あるいは、新素材、新薬、宇宙、量子などAIによる新地平テーマ株など、さらに物色の裾野が広がると見ています。速いAI相場のリズムは、良い時も悪い時も、引き続きNVDAを軸に測る構えです。
米国株:バリュー曇天
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景気・バリュー・中小型株は、2022年以来、高い米金利に圧迫され続けています。2024年中にダウ工業株30種平均やS&P500種指数が上昇しても、大半は比重の大きいAI関連ビッグテックの上伸によるものでした。また、景気・バリュー・中小型株が直接買われるのも、割高感を強めたAI相場とのリバランスでの買いと、AI相場の「おこぼれ」でした。
10月以降には、米景況好転、FRB(米連邦準備制度理事会)利下げの後押しで、ダウ、ラッセル2000(中小型株)が自律上昇動意を見せました(図2)。ただしその内実は、AIテック関連が上昇し、景気・バリュー株の浮揚力は限られていました。
図2:AI・ビッグテック株と米株4指数(2024年後半)
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景気・バリュー・中小型株には、景気堅調、トランプ2.0の減税や規制緩和がサポートになるという見方には半身の構えです。景気堅調なら高金利が圧迫し、景気暗転なら業績警戒が出やすいでしょう。結局、米株式相場はAIのけん引が続くと見ています。
米金利:上下量リスクでも…
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米金利観は高下に激しく振れ、年初には2024年中6回の利下げを織り込んでいたのが、4月には年内利上げもあり得ると変わり、8月には景気後退不安で利下げ加速観が強まりました。図3の通り、実際、FRBは9月、11月、12月に利下げしました。一方、景気指標は10月以降に明転し、11月には大統領選挙でトランプ共和党候補が勝利、上下院も共和党が多数を獲り、インフレ的な財政政策への警戒が浮上。債券金利は上昇に転じています。
図3:米主要金利とドル/円
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FRBは2025年中の利下げ見通しを、2024年9月の0.25%×4回から12月には2回に減らしています。足元では景気が陰る兆しは見えず、トランプ2.0政策も実現していくことから、市場が織り込む利下げ回数はさらに減り、利上げの可能性すら排除できません。しかし、ここ2年の金利観の節操ない振れ方を踏まえると、リスクは上ばかりでなかろうと、筆者は警戒しています。
これは予想というより、金利の上下一方に肩入れできる場面ではないという情勢判断です。金利が5%付近へ再上昇すれば、株価は神経質に急反落するリスクにもなるでしょう。その観点から、現行以上の金利水準は、イールドハンティング投資の領域という見方も維持しています。
ドル/円:上下量リスクでも…
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米金利観が数カ月ごとに上に下にと節操なく振れると、それに素直なドル/円もまた上下に振れます(図3)。1年間に150円付近から140円、そこから160円台に反発し、また140円、そして最近は150円台後半という乱高下ぶりです。日本銀行の政策は、米金利の変化に比べて小さく、米金利高の時に、ドル/円市場は目立った反応を見せません。しかし、米金利低下観測時には、円売りポジションで攻める投機筋が浮き足立ちやすく、日銀の利上げ観測に神経質に反応しがちでした。
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2024年と相場の基本構図は同じでしょう。私はどちらかといえば、ドル/円の軟化サイドを見ています。しかし、率直なところ、米金利観が上振れれば160円以上もあり得るし、金利観が下振れれば140円以下もあり得る、という上下両にらみの構えです。
2023年も2024年も年初には、市場が織り込む金利低下観測に沿って円高見通しを掲げました。しかし同時に、両年とも「まさか」があり得る年として、「データ次第」で変わるFRBのスタンスに沿う柔軟性、機動性を推奨しました。結果として相場実践上は、これが適切な判断だったと考えており、2025年もこの構えで臨みます。
日本株:身の丈チェック
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2022年以降、日本株は一見して米国株をアウトパフォームしました(図4)。日本では、日経平均株価の上昇を国内要因で自画自賛しがちでしたが、その大半は、米金利高に沿ったドル高円安、それに伴うインフレが、日本企業の収益を高めたことによる他力本願でした。日経平均をドル建てで見ると、米株とパフォーマンスは変わりませんでした。
2024年は、AIで強力に前進する米国株に日本株が追随しきれず、海外投資家が日本株相場から離脱しはじめました。さらに、ドル/円が不安定化すると、円相場に過敏な日本株が不安定さを増し、ますます敬遠され気味になり、ドル建て日経平均のアンダーパフォームが目立ちます。ただし、日経平均の下値は、巨額の自社株買いが支えるようになりました。ここだけは自力本位と言えますが、日本の成長性の評価とは別物です。
図4:日経平均(円建て・ドル建て)と米株3指数
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日経平均が「米国株×ドル/円」を軸に動く基本は変わらないでしょう。しかし、このメカニズムを自己実現させてきた海外投資家が、日本株の見直しに動くかは慎重に見ています。他力本願の日本株相場ですが、少なくとも、生産性向上、適度のインフレによる名目経済拡大と、賃上げとの好循環は、日本がデフレを克服して普通の国になるために必須の道程です。
米国株対比で日本株を優性に見ることは難しいですが、米好況で株しっかり、金利高止まりで円安というサポートがある間に、日本の好循環の進捗(しんちょく)具合をチェックしましょう。
中国・欧州、新興国、金・資源
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米国以外の世界では、中国経済は不良債権問題で混迷、欧州は中核国ドイツが低迷。新興国は好調な国も中国低迷と米金利高・ドル高の圧迫を受けて脆弱(ぜいじゃく)さを露呈(図5)、銅や石油など資源相場も中国・世界需要をにらんで軟調です。金は、やはり米金利高・ドル高の圧迫を受けますが、安全資産として先行き不透明な中で選好され、また、反米・反ドル勢力の需要もあって堅調でした(図6)。
図5:主要新興国株ETF(上場投資信託)(ドル建て)
図6:金、銅、原油(ドル建て)
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中国、欧州とも景気対策によるサポートが効いても、浮揚感は一時的・限定的と想定されます。トランプ2.0からの関税など圧迫も受けやすいでしょう。新興国も中国企業の輸出代替基地として発展してきたところなどは、トランプ2.0の関税など「とばっちり」を受けるリスクがあります。
原油や天然ガスは、トランプ2.0での米国の増産意向もあり(実現可能性には疑問も)、世界需要の弱さと合わせて、軟化気味と想定されます。高成長期待の新興国株も、金も一本調子では上がらなくなっていますが、長期・分散投資が基本です。
番外リスクと投資の構え
率直な評価として、トランプ2.0は、機動予想が困難な巨大台風のようなリスクファクターです。意外な安定をもたらす可能性もあれば、大波乱もあり得ます。そこにAI革命が否応なく進むのが2025年でしょう。通常の景気、インフレ、金利見通しを作るマクロ分析モデルを超越して、経済のみならず、国際政治のシステムが大きく変わっていく可能性さえあります。あるいは、番外リスクとして、太陽フレア問題が地球規模の災害をもたらす可能性も、予見の範囲内にあります。
しかし、怖いからと言って投資をしないことより、まずは、チャンスもある1年として、相場に取り組む構えが適切でしょう。肝要なのは、足元の景況観、金利観には素直に、それでいて政治は意外な安定も波乱もあり、マクロ経済は強いも陰るもあり、相場は上がるも下がるもありとして、一方の見方に肩入れしすぎない柔軟性、機動性を胸に臨みます。
その中で、需要拡大見通しの手堅いAIを軸に、期待先行相場に乗るモメンタム投資をコア戦術と位置付けます。米国株が世界マネーの一極集中で割高領域にあることも、頭に入れながら、安定的な相場リズムを刻むモメンタムを狙います。あるいは、波乱に頭を悩まさない、あるいは、波乱こそ買い場として、成長分野や分散妙味のある資産への長期目線の投資も、キホンのキでしょう。
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