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米国株は2025年も上昇できる?機関投資家の予想と3年連騰の難易度(土信田雅之)

トウシル / 2024年12月27日 8時0分

米国株は2025年も上昇できる?機関投資家の予想と3年連騰の難易度(土信田雅之)

米国株は2025年も上昇できる?機関投資家の予想と3年連騰の難易度(土信田雅之)

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
米国株は2025年も上昇できるか?~ 「イメージ」とのギャップに注意 ~

 今週の株式市場は、日米の金融政策イベントを通過したことによる落ち着きや、海外市場でもクリスマスで休場となるところが多く、すでに「年末相場」モードに突入した格好ですが、これまでのところ、堅調な展開が目立っています。

 日経平均株価は3万9,000円水準を挟んだ値動き、米国株市場でも、クリスマスイブに当たる24日(火)の取引(この日は短縮取引)で、ダウ工業株30種平均が4万3,000ドル、S&P500種指数が6,000p、ナスダック総合指数が2万pの節目の株価水準に乗せるなど、「閑散に売りなし」という相場格言の通り、薄商いの中で株価はしっかりした足取りをたどっている印象です。

 このまま、2024年相場のゴールを迎えそうな感じではありますが、今回のレポートでは間もなく迎える2025年の米国株市場の行方について、海外金融機関の予想をベースに考えて行きたいと思います。

金融機関の予想から見る2025年の米国株は強気?

 実際に、海外の金融機関は2025年の米国株見通しをどのように見ているのでしょうか?

 下の図1は、金融機関それぞれが予想する2025年末のS&P500終値と、12月20日終値からの騰落率をざっくりまとめたものになります。

<図1>主な海外金融機関の2025年末のS&P500の株価予想

主な海外金融機関の2025年末のS&P500の株価予想
出所:各種報道、会社公表情報などを基に作成

 図1を見ても分かる通り、おおむね2025年の米国株は上昇を見込んでいるところが多くなっています。ちなみに、個人的に20社ほどチェックしたのですが、下落の予想を確認できたのは、シュティフェル・ファイナンシャル(5,500p)とBCAリサーチ(4,450p)の2社でした。

 では、これらの予想はどのくらいの強さなのでしょうか?

<図2>S&P500の年間騰落率の推移(1958~2024年)※2024年は12月20日時点

S&P500の年間騰落率の推移(1958~2024年)※2024年は12月20日時点
出所:Bloombergデータを基に作成

 上の図2は1958年からのS&P500の年間騰落率の推移を示したものです。

 2024年は12月20日時点で25.25%の上昇となっており、このまま年末を迎えることができれば、2年連続で上昇率が20%超えとなります。

 先ほどの図1で2025年末のS&P500を7,000p台と予想する強気のウェルズ・ファーゴやドイツ銀行は、「相場の勢いがこのまま続く」と見ていることになります。

 その一方、6,500p水準で予想しているゴールドマン・サックスやJPモルガン、モルガン・スタンレーなどは、図2の表示期間(66年)の平均(9.1%)より「ちょっと強気」程度であることが分かります。

 過去において上昇率が20%超え、もしくはそれに近い状況が続いていたのは1995年から1999年のITバブルの時しかなく、また、強い株価上昇が続くことによって、過熱感や割高感との勝負の面も色濃くなってくるため、「さすがに3年続けての急ピッチな上昇はないだろう」という見方も増えそうですし、仮に、強気シナリオとなった場合には、「順当な株価上昇」なのか、それとも「バブル的な株価上昇」なのかといった議論も出てくることが想定されます。

米国株の「割高感」をどう見る?

 実際に、足元の米国株には割高感があるのも事実です。

<図3>S&P500(月足)と長期PERの推移(2024年12月20日時点)

S&P500(月足)と長期PERの推移(2024年12月20日時点)
出所:Bloombergデータを基に作成

 上の図3は、S&P500(月足)と、長期PER(株価収益率)の推移を示したものです。この図はこれまでのレポートでも何度か紹介したことがあります。

 足元の長期PERは35倍を超えていることが確認できますが、図3の表示期間(30年)のあいだに35倍を超えたのは2回しかありません。

 それだけ現在の株価が割高ということになりますが、だからと言って、すぐに株価が下落するわけではなく、割高感がありながらも株価の上昇が続くという展開は図3の左側を見ても確認できます。

 ただし、割高感が修正される局面へ移行した際には株価の大幅下落を伴っていること、35倍超えが常態化していた1999~2000年にかけてはITバブルの終盤から崩壊がはじまった時期であることは意識しておいた方が良さそうです。

 もちろん、企業が現在のPERを正当化できるほどの利益を生み出すことができるのであれば、株高基調が続くことになりますので、2025年1月20日のトランプ米大統領就任のタイミングで相次ぐ企業決算の動向が米国株市場にとっての最初のチェックポイントになりそうです。

金利面から見た株式の割高感

 また、米国株の割高感については、企業の稼ぐチカラ(利益)だけではなく、金利面からも感じ取ることができます。

<図4>米株価指数の益回りと米10年債利回り比較(2024年12月20日時点)

米株価指数の益回りと米10年債利回り比較(2024年12月20日時点)
出所:Bloombergデータを基に作成

 上の図4は、米10年債利回りと米株価指数の益回りの推移を示したもので、図3と同様に、これまでのレポートで何度か紹介しています。

 この図が意味するのは、「リスク資産である株式と安全資産である債券とのあいだにあまり差が出ていない」ということです。本来であれば、リスクを負っている分、株式の益回りの方が高くなり、図4で過去にさかのぼっても、確かにその傾向が読み取れるのですが、足元ではそうなっていません。

 株式の益回りが低下するということは、企業が稼ぐ利益の成長スピードよりも株価上昇のピッチが速いことを意味するため、それだけ割高感が生じることになります。

 また、米10年債利回り自体も、長期間にわたって上昇傾向が続き、足元でも高止まりしていることも気掛かりです。

<図5>米10年債利回り(日足)の推移(2024年12月20日時点)

米10年債利回り(日足)の推移(2024年12月20日時点)
出所:楽天証券WEBサイト(REFINITIV)

 上の図5は米10年債利回り(日足)の推移を示していますが、足元で4.5%台後半まで急上昇しています。また、昨年10月と今年4月の上値を結んだラインも上抜けており、チャートの見た目からは、金利の上昇トレンドを感じさせる印象となっています。

 12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で今後の利下げペースの鈍化が示唆されたほか、来年から発足するトランプ新政権への警戒などがこうした値動きに現れていると思われます。

 一般的に、高金利は資金調達コストが増加することによる経済活動の抑制効果をはじめ、図4でも見てきたように、「無理にリスクを負うよりも、国債に投資した方が有利」ということになるなど、総じて株式市場にとってネガティブな材料になります。

 ちなみに、米10年債利回りが4.5%を超えていた今年の4月や、昨年10月の米株市場は下落基調をたどっていました。

米トランプ新政権はインフレとの闘いが焦点

 こうした金利上昇による株式市場の影響は徐々に出てきていると思われます。

<図6>米主要株価指数の比較(2023年末を100) (2024年12月20日時点)    

米主要株価指数の比較(2023年末を100) (2024年12月20日時点) 
出所:Bloombergデータを基に作成

 上の図6は昨年末を100とした米主要株価指数のパフォーマンスの推移を示したものです。

 年間トータルでみれば、ほとんどの株価指数は上昇しているものの、景気や金利の影響を受けやすいとされる中小型企業の銘柄で構成されるラッセル2000の失速が目立つ一方で、ナスダック総合指数は株価水準を保っているなど、米金利の上昇を受けて最近の米国株は株価指数によって温度差が生じています。

 それでも、ナスダック総合指数が堅調なのは、金利の高止まりが企業財務の足かせとなる懸念がある中、大手テック株などは会社の規模など財務的に安定していると見なされていることや、生成AI関連銘柄の物色に広がりが出始めていることなどが考えられます。

 とはいえ、先ほども述べたように、基本的に金利上昇と株価上昇の両立は長く続くとは考えにくく、米金利の高止まりは米国株市場の足を引っ張る存在となります。

 特に、前回のレポートでも説明しましたが、来年1月20日に正式就任するトランプ米大統領の掲げる施策(減税・規制緩和・関税強化・移民政策)は、副作用としてインフレが再燃しかねない要素を抱えているほか、トランプ氏勝利の理由の一つに、バイデン政権時のインフレ不満を集めたことが挙げられるだけに、トランプ次期政権はインフレとの戦いになりそうです。

 では、トランプ米大統領が見事にインフレを抑制できるかは現時点では未知数です。財政悪化や景気過熱、輸入コスト、賃金面など、さまざまな方向からインフレ圧力がかかることが想定され、状況はかなり複雑と言えます。

 例えば、法人減税が実施されれば、減税分だけ企業の利益が増えることになり、リクツの上では株価は上昇していきますが、財政悪化懸念による金利上昇も伴ってしまえば、この効果は相殺されてしまうことや、中国に対する関税強化についても、輸入コスト増によるインフレが心配されますが、別方向から中国に圧力をかけて人民元安を誘導させて、為替面でコスト増をカバーすることも可能性としてはあります。

 さらに、米景気の好調さが今後も継続していくことで、「そもそも減税策が打てるのか?(景気の過熱や景気後退入りした際の対応策を失う)」「むしろ米国の景気が多少悪くなるぐらいの方が政策期待や利下げ期待につながって株式市場を支援するのでは?」といった議論が浮上することも考えられるほか、トランプ米大統領と政権入りしたイーロン・マスク氏との関係がこじれてしまった場合なども、株式市場に大きな影響を与えそうです。

 まだまだいろいろな展開を考えることができそうですが、このように、2025年の米国株市場は、新政権の期待と不安、そして現実に発生した事象を織り交ぜながら推移することになり、株価が順調に上昇基調をたどるというよりも、値動きの振れ幅が大きくなる場面の方が増えそうです。

 となると、「株価の上げ下げは激しかったが、終わってみれば意外と堅調だった」みたいな展開が現実味を帯びることになり、2025年末のS&P500終値を長期間の騰落率平均あたりで予想した、ゴールドマン・サックスやJPモルガン、モルガン・スタンレーは結構「イイ線」をついているのかもしれません。

 少なくとも、2025年の米国株は、ここ2年の株価上昇のイメージからしっかりと切り替えて相場に臨む必要がありそうです。

(土信田 雅之)

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