日経平均5万円、2028年までに達成と予想する理由(窪田真之)
トウシル / 2025年1月7日 8時0分
日経平均5万円、2028年までに達成と予想する理由(窪田真之)
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「年初トランプ・リスクに注意!2028年までに日経平均5万円と予想する理由」
日経平均は2028年までに5万円を超えると予想
日経平均株価は、トランプ次期政権の政策によっては、短期的に3万7,000円まで下落すると考えています。ただし、米景気がソフトランディングする中で、日本の景気・企業業績は緩やかな拡大が続くと考えていますので、日経平均は2025年末には4万4,000円まで上昇すると予想しています。
以上は、短期的な予想です。今日は、短期的ではなく、長期的な予想について書きます。いつもお話ししているように、日本株は割安で長期的な上値余地が大きいと私は考えています。日経平均は2028年末までに5万円まで上昇すると予想しています。
これまでそうだったように、これからも日経平均は、急落・急騰を繰り返しながら上昇していくと考えています。日経平均の急落・急騰を引き起こしているのが、景気循環です。世界景気は循環します。4年以内には、一度世界景気の後退(あるいは後退すれすれまでの悪化)があると考えるのが自然です。
それがいつになるか、予想することは困難です。今年かもしれないし、来年かもしれません。もっと先かもしれません。いつになるか分からない世界景気悪化を乗り越えて、日経平均は4年以内に5万円を超えると予想しています。
日本の株価、地価、物価、賃金は国際比較で「割安」
日経平均は現在、1989年末のバブルピーク水準とほぼ同水準にあります。ただし、日本株がバブル相場だった1989年と今では、日本企業の財務内容、収益力、ビジネスモデル、ガバナンスがまったく異なります。
日本株のPER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)は当時に比べて低く、配当利回りは高くなりました。日本株は当時と比べて、格段に割安になったと判断しています。
34年前、日本の株価、地価、物価、賃金は、国際的に比較して極めて「高い」水準にありました。東京の生活費は世界一高く、日本人の賃金は国際比較で極めて高いと言われていました。株価も不動産も、PERやイールドで説明できない高値にありました。
今は、その逆です。株価、地価、物価、賃金は、国際的に比較して「割安」になっていると思います。割安な株価と、経営改革が評価されて、日経平均は5万円に向けて上昇すると予想しています。
<日経平均(年次推移):1973~2025年(1月6日)>
1973年当時、日経平均は5,000円前後でした。東証1部のPERは約13倍でした。この時の日本株は「割安」でした。
ところが、その後、日経平均はどんどん上がり続け、1989年(平成元年)末には3万8,915円の史上最高値をつけました。この時、東証1部のPERは約70倍まで上昇し、10~20倍が妥当と考える世界の常識をはるかに超えた「バブル」となりました。
バブルは、平成に入ってから崩壊しました(1989年=平成元年)。ただし、「平成の構造改革」で復活した日本株は2013年以降、再び、上昇トレンドに戻りました。2025年1月6日時点で、東証プライム市場の予想PERは約16倍に低下し、再び割安と判断しています。
日経平均が2028年までに5万円を超えると予想する根拠
私は、平成の構造改革で投資価値が高くなった日本株は令和時代にさらに飛躍すると予想しています。日経平均は、4年以内(2028年末まで)に5万円を超えると予想しています。
EPS(1株当たり利益)の増加が、日経平均の上昇をけん引すると予想しています。バブルではなく、企業価値の増加によって株価が上がっていくと予想しています。その根拠をお話しします。
楽天証券経済研究所では4年後までに東京証券取引所上場企業のEPS(加重平均)が27.7%増加すると予想しています。年率平均6.3%の上昇を予想しています。それが、TOPIX(東証株価指数)を4年複利ベースで27.7%上昇させる要因となります。
日経平均はTOPIXに連動すると仮定しているので、単純計算だと5万200円くらいまで上昇することになります。景気変動の影響もあり、明確な時期は分かりませんが、4年以内に5万円を超えると予想しています。
東証上場企業のEPSを増加させるドライバー
EPSを増加させるドライバーが三つあります。【1】海外での利益成長、【2】インフレ、【3】自社株買いです。この三つを合わせて、EPSは年率平均6.3%増加すると予想しています。それが4年続くと、EPSは27.7%増加します。
東証上場企業のEPS増加要因
【1】海外事業による利益成長:年率寄与度(予想)2.3%
「人口が減少する日本の株は魅力がない」と言う人がいます。もし、日本企業が日本国内だけでビジネスを行っているのならばその通りですが、実際には日本企業は、人口が増加するアジアや米国などで幅広くビジネスをやっています。これからも巨額M&Aで海外企業の買収を積極的に進めていくと思います。
日本企業の海外事業の成長が、東証上場企業のEPSを年率2.3%増加させると予想しています。
【2】インフレ(CPI総合指数の上昇率):年率寄与度(予想)2.4%
日本のインフレ復活が、日本の企業業績・株価を上昇させる要因となります。日本企業は長年にわたり、ゼロ・インフレに苦しんできましたが、日本にも今後2%台のインフレが定着すると予想しています。インフレ定着は国民生活にとってネガティブですが、企業業績・株価にとっては追い風となります。
<日米の総合インフレ率(CPI総合指数の前年比上昇率):2020年1月~2024年11月>
「インフレ率が高いとなぜ株が上がるの?」と今一つ理解できない方のために説明すると、「インフレ率が高くなると、価格転嫁などが進むことで、企業の売上高が大きくなる→株価も上がる」ということです。
なお、企業の売上が増えるタイミングでは、以下のように名目GDPが伸びていきます。
日本の名目GDP成長率:1981~2023年(実績)、2024年(予想)、2025年(予想)
名目GDPが高くなると、税収も増加します。最近「税収が過去最高を更新」というニュースをお聞きになった方もいるでしょう。インフレによって企業の売上高・利益が拡大すると、国が徴収する税金も増えます。
【3】自社株買い:年率寄与度1.5%
東証上場企業は今後、毎年13~17兆円の自社株買いを実施すると予想しています。自社株買いによって、毎年EPSが約1.5%増加【注】します。
【注】自社株買いによるEPS引き上げ効果
東証上場企業が合計で15兆円の自社株買いをやると、発行済み株式数が約1.5%減少します。発行済み株式数が約1.5%減少すると、利益総額が変わらないでも、EPSは約1.5%増加します。
日本企業は、米国企業に比べて、これまで自社株買いに積極的ではありませんでした。それは日米のカルチャーの違いもあります。
日本企業は、経営危機になった時でも従業員を解雇せずに生き延びられるように、財務余力を残そうとする傾向があるからです。目いっぱい自社株買いをして株価を上昇させて、経営危機になったら簡単に破綻する米国企業とは異なります。そのカルチャーは簡単には変わらないと思います。
ただし、日本企業の財務的ゆとりがかなり大きくなったにもかかわらず、あまり自社株買いをやらないために株価低迷が続き、PBR1倍割れが常態化した企業が半数を超える状況が続いています。
この現状を憂慮して、東京証券取引所がPBR1倍割れ企業に対して、株主価値改善策の開示・実施を要請しました。これを受け、日本企業に不採算事業からの撤退、自社株買いを増やすなどの方法で、ROE(自己資本利益率)を高めて株価を上昇させる動きが広がっています。
昨年、セブン&アイホールディングス(3382)に対し、カナダのコンビニ大手が買収提案をしたことも、影響がありました。時価総額で数兆円の大企業でも、株価を割安に放置したままだと海外から買収提案が出るリスクがあることを強く意識させました。
こうした変化を受けて、今後は東証上場の日本企業も年間13~17兆円の自社株買いを行うようになると予想しています。
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