トヨタ、三菱UFJ…2025年注目の日本株5選!脱デフレや地方創生、自動車がキーワード
トウシル / 2025年1月7日 17時36分
トヨタ、三菱UFJ…2025年注目の日本株5選!脱デフレや地方創生、自動車がキーワード
2025年は「辰巳天井」
2025年の干支は「乙巳(きのとみorいっし)」です。おそらく40歳代以上の方は「?」「そもそも読めない」と思う人もいるでしょうが、20~30歳代の人は「あー、乙巳の変の乙巳ね」と気付く人がいるかもしれません。
干支は60年サイクルで一回りしますが、今から1380年前に、日本人であれば誰でも知っている大きな事件が起きました。それが「乙巳の変」です。飛鳥時代の645年に、中大兄皇子と中臣鎌足らが当時の権力者である蘇我入鹿を宮中にて暗殺して蘇我氏を滅ぼした政変です。その後、中大兄皇子は体制を刷新し大化の改新と呼ばれる改革を断行しました。
私を含めた40歳代以上の人は、蘇我入鹿が殺された事件のことを「大化の改新」と教科書で習いましたが、今の教科書では、乙巳の変を皮切りとした一連の政治制度改革を大化の改新といい、乙巳の変は大化の改新の一部を指しています。
「だから、2025年は大事件が起きる」というお話ではありません。そんなロジックであれば、日本は歴史上、毎年何かしらの事件が起きていますし、干支ベースで考えるときりがありませんので。ただ、証券業界には古くから伝わる「干支の格言」があります。
「辰巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぐ、戌(いぬ)笑い、亥(い)固まる、子(ね)は繁栄、丑(うし)つまずき、寅(とら)千里を走り、卯(う)跳ねる」
有名な格言なので、ご存じの人もいるでしょう。2025年は巳年ですので「辰巳天井」となります。
東京証券取引所が再開した1949年以降(1949年のみ再開の5月が基点)の日経平均株価の星取表で見ますと、巳年はここまで4勝2敗です。前年の辰年は5勝2敗で平均騰落率は26.8%と干支別ランキングの平均騰落率ではトップですが、「千里を走る」はずの寅年は1勝6敗と干支別ランキングの勝率では最弱です。必ずしも格言通りの展開にはならないのが星取表で分かります。
景気サイクルは時代とともに変化。相場格言にズレ
これは景気循環(景気サイクル)が昔と変わったため、「相場の格言」とズレが生じたと私は考えます。景気には波があり、景気が一番よい時を「景気の山」、一番悪い時を「景気の谷」、谷から山へ向かう局面を「景気拡大期」、山から谷へ向かう局面を「景気後退期」といいます。
一般的には「景気の谷→景気拡大期→景気の山→景気後退期→次の景気の谷」までが景気循環の1周期とされており、キチン循環(3~4年、短期波動)、ジュグラー循環(10年、中期波動)、クズネッツ循環(20年、準長期波動)、コンドラチェフ循環(50年、長期波動)と分類されます。
景気サイクルは需給と供給のタイムラグから発生しますが、1900年代と2000年代ではモノの生産および消費の考え方が大きく異なっています。現代の大量生産・大量消費、類似製品の価格帯の拡大などは1900年代の概念には存在しません。
半導体などの分析で有名なシリコンサイクルも4年周期から短くなりつつあるといった指摘があります。ある程度成熟した経済環境下では、極端な好・不況が無くなり、キチン循環よりも短い1~2年周期の景気サイクルが存在しているのでしょう。
この辺りの検証は経済学者の範囲ですので、これ以上掘り下げませんが、時代によって景気サイクルは変化していきますので、干支の格言は「そういったものもあるのね」程度の理解で十分です。
そもそも干支の格言の原点は、猛虎軒(もうこけん)著作の宝暦6年(1756年)の「八木豹之巻(はちぼくひょうのまき)」もしくは天明7年(1787年)の「八木虎之巻(はちぼくとらのまき)」といわれています。
当然ながら、江戸時代、一般的な証券取引は存在していません。主に米相場を行っている投資家同士が秘伝の教え的な意味合いで、干支の格言を使っていたと推測します。日本を始めアジアでは干支を大事にする文化がありますので、干支の格言は今も証券業界を中心に残っているのでしょう。
2025年に日本株市場は「狭いレンジでのもみ合い」?
さて、そんな「辰巳天井」の2025年はどうなるでしょう。一言で表現しますと
「狭いレンジでのもみ合い」
をイメージしています。2025年も買いの主体は、自社株をせっせと買っている事業法人と、高配当利回り銘柄などをNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)経由で断続的に購入する個人投資家となりそうです。事業法人と個人投資家がコンスタントに日本株を買うため、日本株は大きく下落しないと考えます。
昨年8月の歴史的な急落は毎年発生するものではありませんが、システムトレード全盛の影響で2,000円ほどの日経平均の急落は発生するでしょう。急落の要因は確認する必要がありますが、そうした急落局面は押し目を狙うタイミングかもしれません。
日経平均上値4万2,000円を予想。
一方、日経平均やTOPIX(東証株価指数)などが史上最高値を更新するためには、やはり外国人投資家の存在が重要です。2024年、石破政権が誕生しましたが、岸田前政権のような投資に主眼を置いた経済政策の発信は今のところありません。
東証による市場改革、NISAの普及拡大、世界的な運用のリバランスなどの材料が無い限り、外国人投資家は日本株の積極的な売買を手控える、ニュートラルのままでしょう。
日経平均の上値は4万2,000円、下値は3万7,000円と考えます。そして、外国人投資家が買いで動いたサブシナリオの上値は史上最高値を更新する4万5,000円とみます。
1月にスタートするトランプ大統領によるサプライズSNS発信に対する急変動や、3~4月の日本銀行による追加利上げ実施の有無、7月の参議院・東京議会選挙などイベントを重視したトレード(イベント・ドリブン)はその都度入るでしょうが、2000年以降、最も上下の値幅が狭かった2021年の、「年間の値幅3,656.9円、大発会の始値に対する割合は13.4%(終値計算)」といったこう着相場を想像します。
2025年注目の日本株:脱デフレや地方創生がキーワード
個別銘柄に関しては、昨年同様、防衛、地方創生に脱デフレが意識されて内需が加わるでしょう。外国人投資家が、銀行や建設、不動産など内需関連株を買ってくると相場に厚みも出ます。
また、2024年12月は業界再編で自動車関連に関心が向かったことから、足元さえなかった自動車株の動向にも注目します。銀行、建設、不動産、自動車関連は時価総額が大きい銘柄がそろっていますので、日経平均よりもTOPIXの方が優勢となるかもしれません。
銘柄名 | 証券コード | 株価(円) (1月7日終値) |
特色 |
---|---|---|---|
大林組 | 1802 | 2,101 | 「脱デフレ」で注目する大手ゼネコン |
野村不動産HD | 3231 | 3,951 | 高配当利回りの大手不動産株として「内需」の買いに期待 |
ソニーグループ | 6758 | 3,341 | 国産IPで世界に打って出るエンタメ企業 |
トヨタ自動車 | 7203 | 3,052 | 史上最高値更新となれば投資家心理の刺激材料に |
三菱UFJFG | 8306 | 1,918.5 | 「脱デフレ」で日本中で貸出需要が増加へ |
大林組<1802>
日本を代表する大手ゼネコンの一角です。予想配当利回りは3.8%ほどと大手ゼネコンの中では相対的に利回りは高く、NISAでの長期投資も向かいやすいと考えます。
2025年の早い段階で、内閣府もしくは経済産業省など政府から脱デフレ宣言が出ると想定していますので、同社のような内需株に投資の関心が向かう展開を想定しています。脱デフレ宣言は、日銀が追加の利上げを実施するとみられる3~4月ごろとみています。
野村不動産HD<3231>
大手不動産の一角です。予想配当利回りは4.2%ほどと大手不動産の中では最も高い利回りを誇っています。大林組同様、同社も脱デフレ宣言で関心が向かうと考えています。金利が上昇する局面では、不動産株は借入コストが上昇するため敬遠されがちですが、脱デフレによって投資マインドが変化し、内需株全般に投資資金が向かいやすくなると想定します。
ソニーグループ<6758>
大きな注目テーマに入れませんでしたが、2025年はIP(知的財産)も投資テーマになると考えています。任天堂(7974)、バンダイナムコホールディングス(7832)なども該当しますが、KADOKAWA(9468)と戦略的な資本業務提携契約を結んだ同社に注目します。
映画、音楽、ゲームなどエンタメ色の強さから、市場では電気機器のイメージは薄くなっています。2025年は国産IPを活かした世界での事業展開に期待しています。
トヨタ自動車<7203>
日本最大の時価総額を誇る「日本株式会社」とも言われる同社ですが、2024年は型式不正などの影響で乗り遅れた格好となりました。ですが、年末のROE(自己資本利益率)改革発表を受けて息を吹き返しました。ホンダ(7267)と日産自動車(7201)の経営統合に向けた協議開始で、自動車業界は部品サプライヤーを含めた業界再編の流れが加速しそうです。
時価総額で断トツトップの同社が昨年3月の史上最高値3891.0円を上回る展開となれば、投資家心理が刺激されて日経平均やTOPIXのもみ合い予想が大きく外れるかもしれません。
三菱UFJFG<8306>
大手メガバンクの一角です。大林組、野村不動産ホールディングス同様、脱デフレ関連銘柄として注目しています。日銀による金融政策の正常化によって、金利メリット銘柄として市場の関心はすでに向かっていましたが、脱デフレや地方創生による内需拡大に伴う貸出増加は今後も続くでしょう。
なお、地方創生に関連した貸出増加のメリットは地方銀行が大きいと考えます。第一地銀、第二地銀の銀行飽和が常に話題となっていますので、地銀間の再編も加速するでしょう。
(田代 昌之)
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