1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

為替市場の変動要因 2025年の政治と経済重要日程

トウシル / 2025年1月8日 16時0分

為替市場の変動要因 2025年の政治と経済重要日程

為替市場の変動要因 2025年の政治と経済重要日程

 12月の日米金融政策は市場予想通りFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ、日本銀行の利上げ見送りとなりましたが、FRBの「予想以上」の追加利下げ慎重姿勢と日銀の「予想外」の追加利上げ慎重姿勢によってドルは買われ、円は売られ、1ドル=158円台に乗せるところとなりました。

 2024年を振り返ってみますと、実際にFRBの利下げや日銀の利上げが決定されても、日米とも金融スタンスの揺らぎによって、その後の追加政策姿勢への思惑が変転し、日米金利差縮小という方向は示されたもののスムーズな流れにはなりませんでした。

 今年は、第2次トランプ政権への警戒感はあるものの不透明な要素が多いことから、やはり、日米金融政策の姿勢によって相場は左右されそうです。

 1月のFOMC(米連邦公開市場委員会)は28~29日、日銀会合は23~24日開催予定ですが、FRBは1月20日のトランプ大統領就任式を控えていることや物価鈍化傾向が止まっていること、景気・雇用が底堅く推移している点から利下げを見送る可能性が高そうです。

 一方、日銀の植田和男総裁は、第2次トランプ政権の経済政策や春闘での賃上げの影響を確認するため、もうワンノッチ(1段階)の情報を待ちたいと述べていることから、日銀の利上げは3月以降の金融会合に先送りされる可能性が高まっています(2月会合は開催されず)。

 このように1月会合でも日米とも慎重姿勢となった場合には、円安基調は変わらないことが予想されます。ただし、FRBの利下げ回数見通しが4回から2回に減っても利下げ方向であり、日銀も利上げ方針を変えていないことから、円安は抑制的な動きになると予想されます。

 また、12月の日銀金融政策決定会合での主な意見では、追加の利上げに踏み切ってもいい局面だといった意見も複数出ていることから、1月利上げ期待も根強く残っている点には留意する必要があります。1月14日に予定されている氷見野良三日銀副総裁の講演会に注目したいと思います。

 毎年、このコラムでは年初めに1年間の重要イベントの日程を取り上げています。1年間の相場シナリオを予測するためには押さえておきたい必須項目です。

 1年間とは1月から12月のサイクルです。為替市場の主戦場は欧米市場であるため、12月の本決算が多い欧米の企業や海外ファンドと同じサイクルで考える必要があります。

 ただし、ドル円の場合は、日本の企業決算の時期も考慮する必要があります。特に3月決算が多いため、年度末の3月や年度始めの4月には決算に関わる為替の需給要因が加わることに留意しておく必要があります。特に期末日の公示タイム(午前10時前後)には、予想外の動きをすることもあるため注意が必要です。

 為替の変動要因を大別すると、政治要因と経済要因があります。

 政治要因のイベントとして選挙や国際会議があります。経済要因のイベントでは特に重視するのが、為替相場に中長期的に影響を与える中央銀行の金融政策です。特に米国の金融政策に注意が必要です。

 そして、その金融政策を左右するのは、米国の経済成長率(GDP(国内総生産))やCPI(消費者物価指数)、雇用統計の経済指標です。相場シナリオを考えていく際には、これら政治・経済イベントの日程を押さえながら、リスク度合いや影響度合いを考慮して相場シナリオを組み立てていく必要があります。

2025年の重要政治日程

 今年最大の注目される政治イベントは、1月20日就任のトランプ新大統領による第2次トランプ政権の発足です。就任日に、移民取り締まり強化や関税引き上げの大統領令を発出すると予想されているため、各国は戦々恐々としている状況です。

 政治イベントは、その結果によって瞬時に相場に影響を与えたり、じわじわと経済に影響が及んだりする場合があります。

 しかも、経済環境を無視して瞬時に影響を与える場合もあるため、最重要で注目すべき要因です。相場シナリオを想定する際に、政治イベントを軸として大きな枠組みを想定します。その大きな枠組みの中で経済イベントを考慮して中期・短期のシナリオを想定していきます。

 以上が通常の考え方ですが、トランプ氏の発言は思いつきや脅し、駆け引きなどがあり、瞬時に反応はするもののすぐに戻ることも予想されるため注意が必要です。

 例えば、6日、米紙ワシントン・ポストがトランプ関税の対象品目が限定される計画があると報道しました。すると、全世界一律の関税ではないことからインフレ懸念が後退するとの思惑からドル安・円高に動きました。

 しかし、直後にトランプ氏が「フェイクニュースだ」と否定すると円安に戻りました。今後、このような場面は何回も起こることが予想されるため、観測報道だけで思い込むのは避けた方がよさそうです。

 また、トランプ氏が掲げる政策で、減税など税制改革の実現には議会の承認が必要なため、共和党内の超保守主義者の反対によってスムーズに承認されないリスクがある点には留意する必要があります。

 現在の米議会の議席数は上院で共和党53、民主党47、下院で共和党219、民主党215となっています。特に下院の議席数は僅差であるため、共和党議員が数名造反すれば、トランプ2.0の政策は暗礁に乗り上げることになります。

 つまり、トランプ要因によって相場は短期的に上下動しても、トランプ2.0の政策が実際に動き、物価や経済に影響を及ぼすには米議会の承認や関税引き上げの交渉などによって時間がかかるという点には留意しておく必要があります。

 次に注目したいのは2月23日のドイツ連邦議会(下院)選挙です。12月に連立政権が崩壊し、自ら求めた信任投票で否決されたことから、選挙の前倒しで勝負に出たのですが、果たして思惑通りに進むのかどうか注目です。

 経済が低迷している状況で政局も不安定になれば、フランスの政局も不安定であるため、欧州はかなり混迷の時代が続きそうです。そのような状況でトランプ2.0の時代を迎えることになります。

 また、ドイツ、フランスだけでなく、カナダも首相が辞任し政権が崩壊、韓国も政府が崩壊している状況ですが、日本も少数与党の政権が、7月に12年に一度の参院選と東京都議選を迎えることになり、結果によってはより不安定な政局になることが予想されます。そのような環境の中で韓国政府が、反米、反日、親中政権になれば、東アジアの緊張は高まることが予想されます。

 自国第一主義のトランプ2.0がこの変化にあまり関心を示さなければ、台湾有事を含み、日本を取り巻く地政学的リスクが一気に高まることが予想され、経済に影響を与え、円安要因になることが予想されます。

 今年の政治イベントを下表にまとめました。昨年は選挙イヤーでしたが、今年はどこの地域も政治が不安定な状況になりそうです。これだけ同時多発的に起これば、その国の通貨や経済、金融政策、周辺国との関係が大きく変わることがあるため、その動向には注視していく必要があります。

2025年の重要政治日程

1月 6日 米議会がトランプ氏の大統領選出を正式承認
20日 米大統領就任式
20日 世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議、スイス ~24日)
2月 23日 ドイツ連邦議会(下院)選挙
24日 ロシアのウクライナ侵攻開始から3年
3月 5日 中国で全国人民代表大会開幕(北京)
4月 13日 2025年日本国際博覧会(EXPO 2025 大阪・関西万博)が開幕( ~10月13日閉幕)
25日 IMF(国際通貨基金)・世銀春季総会(ワシントン ~27日)
月内 アジア・アフリカ会議70周年記念行事(インドネシア)
5月 12日 フィリピン統一国政・地方選挙(中間選挙)
月内 オーストラリア総選挙
米予算教書
6月 24日 NATO(北大西洋条約機構)首脳会合(オランダ・ハーグ ~26日 )
月内 G7サミット(主要7カ国首脳会議  カナダ )
7月 20日 参院選(会期延長がない場合)
22日 東京都議会議員任期満了
8月 20日 アフリカ開発会議(TICAD  横浜 ~22日)
9月 9日 第80回国連総会が開幕(ニューヨーク)
10月 7日 イスラエルとハマスの衝突から2年
17日 IMF(国際通貨基金)・世銀年次総会(ワシントン ~19日)
月内 APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議(韓国・慶州 ~11月初め)
11月 10日 COP30(第30回国連気候変動枠組条約締約国会議、 ブラジル ~21日)
22日 G20サミット(20カ国・地域首脳会議 ヨハネスブルグ ~23日)

2025年の重要経済日程

 為替相場の経済要因として最も大きな要因は金融政策です。特にFRBの金融政策には注意が必要です。

 また、日銀、FRB、ECB(欧州中央銀行)総裁は金融政策委員会終了後、毎回記者会見を行い、市場との対話に努めています。この記者会見も重要です。

 声明文を補うような一歩踏み込んだ説明をしたり、先行きの方向性を示唆する内容を発言したりしています。記者会見の発言で相場が動くことも多いため注視する必要があります。日米欧の日程が重なっている時には、特に注意が必要です。

 また、FRB議長の議会証言が年2回(2月、7月)ありますが、これも注目材料です。そして、8月下旬には米国カンザスシティ連邦準備銀行主催の金融シンポジウムがジャクソンホールで開催されます。過去には各国の中央銀行総裁が今後の金融政策の変更を示唆する発言をしたこともあり、毎年注目されています。

 今年は、第2次トランプ政権への警戒感はあるものの不透明要素が多いことから、やはり、日米金融政策の姿勢によって相場は左右されそうです。特にFRBの金融政策の動向が最大注目材料となります。そして、FRBの金融政策に影響を与える米国の経済成長率(GDP)、物価上昇率、雇用統計に注目です。

 FRBの利下げ姿勢は今のところ維持されていますが、パウエル議長は、利下げは急がないと慎重姿勢を述べています。FRBの金利見通しでは年2回の利下げ見通しですが、物価や経済状況によっては、この回数が増えるのか減るのか注目です。

 例えば、トランプ2.0の政策によってインフレ再燃リスクが高まれば、FRBの政策軸はインフレ抑制に移り、利下げが後ろ倒しになり、場合によっては休止や利上げ観測が浮上するかもしれません。

 逆に、インフレ再燃によって経済活動が慎重になり、関税引き上げや報復合戦になった場合、米国景気だけでなく、世界の景気後退となった時にはFRBの利下げペースが速まるかもしれません。中央銀行も影響を予測しづらいという点では投資家と同じであり、見通しやスタンスについては急変することもある点には十分留意したいと思います。

 また、日銀の金融政策の動向も昨年以上に注目度が高まることが予想されます。1月利上げ期待も残っていることから、1月や3月の日銀会合前には思惑によって円高の動きがみられるかもしれません。日銀は利上げペースが緩やかになっても政策金利1.0%に向けて利上げを続けたい意向は今年も変わらないようです。

 しかし逆のリスクとして、トランプ政策によって世界経済が後退し、各国が利下げに動いている中、日銀が利上げのタイミングを逸するリスクシナリオも想定しておく必要があります。

 下表に日米欧の金融政策委員会の開催日、GDPや物価の公表日をまとめました。今週のコラムは保存版として活用してください。米雇用統計は、毎月第一金曜日に公表されます。

日米欧中央銀行の金融政策会議開催日

2025年 日銀金融政策決定会合 米連邦公開市場委員会(FOMC) 欧州中央銀行理事会(ECB) 金融イベント
1月 23~24日※ 28~29日 30日  
2月 FRB議長半期議会証言
3月 18~19日 18~19日※ 6日※  
4月 30~5月1日※ 17日  
5月 6~7日  
6月 16~17日 17~18日※ 5日※  
7月 30~31日※ 29~30日 24日 FRB議長半期議会証言
8月 ジャクソンホールFRB議長講演
9月 18~19日 16~17日※ 11日※  
10月 29~30日※ 28~29日 30日  
11月  
12月 18~19日 9~10日※ 18日※  
(注)1. ※は日銀「展望レポート」公表(1,4,7,10月)、FOMC、ECBは経済見通し公表(3,6,9,12月)
2. FOMCは火~水曜日開催、ECB理事会は木曜日開催
3. 会議終了後の総裁の記者会見は日米欧とも毎回実施
4  黒太字は日米欧の理事会が集中している日程。相場が変動しやすいため注意が必要

日米欧GDP速報値の発表日

  日本 米国 ユーロ圏
2024年
10-12月期
2月17日 1月30日 1月30日
2025年
1-3月期
5月中旬 4月30日 4月30日
2025年
4-6月期
8月中旬 7月30日 7月30日
2025年
7-9月期
11月中旬 10月30日 10月30日

日米欧(CPI)消費者物価指数の発表日

2025年 日本 米国 ユーロ圏
1月 24日(12月分) 15日(12月分) 7日(12月分)
2月 21日(1月分) 12日(1月分) 3日(1月分)
3月 21日(2月分) 12日(2月分) 3日(2月分)
4月 3月分以降の
公表日は後日
発表予定
10日(3月分) 1日(3月分)
5月 13日(4月分) 2日(4月分)
6月 11日(5月分) 3日(5月分)
7月 15日(6月分) 1日(6月分)
8月 12日(7月分) 1日(7月分)
9月 11日(8月分) 2日(8月分)
10月 15日(9月分) 1日(9月分)
31日(10月分)
11月 13日(10月分)
12月 10日(11月分) 2日(11月分)

(ハッサク)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください