ETFに積立投資、貸株に出せば貸株料も(窪田真之)
トウシル / 2025年1月9日 8時0分
ETFに積立投資、貸株に出せば貸株料も(窪田真之)
積立投資三つのメリット
資産形成のために、日本株や米国株のインデックスファンドに投資するとして、どのように買うのが良いでしょうか? 資産形成の王道は「積立投資」です。毎月1万円など一定額をコツコツと買い続ける方法が良いと思います。
積立投資には三つのメリットがあります。
【1】着実に投資を増やすことができる
「お金に余裕ができたときに投資しよう」と考えた結果、「いつになっても投資に回す余裕資金をつくれない」人がたくさんいます。
毎年、着実に投資を増やすのに最も効果的な方法が、積立投資です。給与天引きが一番確実ですが、それ以外の方法でも構いません。月々2万円でも、1万円でも、もっと小さな金額でもいいのです。無理なく続けられる金額を決めて毎月積み立てていくことが着実に投資を増やす近道です。
【2】比較的ストレス少なく投資が続けられる
いいタイミングで売ったり買ったりしようすると、激動する株式相場を見て毎日はらはらします。最悪、日中仕事が手につかなくなったり、家族とレジャーに出かけても心配で楽しめなくなったりします。積立投資だと、比較的ストレス少なく投資が続けられます(感じ方は人それぞれで個人差が大きい)。
株が下がる時は、これまでに投資した分が値下がりして残念な気持ちになりますが、これから買う分は安くなったところで買えるのでうれしい気分を味わえます。
逆に、株が上がる時は、これまでに買った分が値上がりしてうれしいが、これから買う分は高くなったところで買うことになるのが残念です。上がっても下がっても一長一短あるので、あまり短期的な値上がりや値下がりが気にならなくなります。
【3】ドルコスト平均法で投資成果を高められる
三つ目のメリットが、ドルコスト平均法の効果です。毎月、一定金額投資していくと、株が下がった時は買える株数が多くなり、株が上がった時は買える株数が少なくなります。その効果で、長期的な投資成果が高まります。
ところで、インデックスファンドへの積立投資は、投資信託でやるのと、ETF(上場投資信託)でやるの、どちらが良いでしょう? 以下で説明します。
インデックスファンドに投資するなら、投資信託とETF、どちらが良い?
日本株の株価指数(日経平均株価やTOPIX(東証株価指数))に連動することを目指すインデックスファンドに投資する際、「投資信託とETF、どちらが良いですか」という質問をよく受けます。今日はその質問に回答します。
投資信託とETFのメリット・デメリットを比較すると、1冊の本が書けるくらいたくさんあります。全て書くことはできないので、今日は特に重要なこと、インデックス投資を始めるに当たって知らなければならない、売買方法の違いと、売買に関するメリット・デメリットを解説します。
結論から言うと、投資信託もETFも一長一短で一概にどちらが良いとは言えません。誰でもかんたんに始められる点で投資信託は優れていますが、使い方(売買の仕方など)に習熟すればETFの方が使い勝手が良い面もあります。
日経平均インデックスファンドを例に、投信とETFを比較します。
<日経平均連動型の投資信託とETF:売買方法の違い、売買に関するメリット・デメリット比較>
日中、忙しくて場(取引所での価格変化や売買注文の入り方)を見ていられない人には、投資信託が便利かもしれません。価格変化を見ながら、指値を考えたりすることのできる人には、ETFが良いともいえます。
なお、ETFを選ぶ際、時価総額や流動性は大切です。なるべく時価総額が大きく、流動性が大きいものを選びましょう。
ETFには、もう一つ、投資信託にはない別のメリットがあります。「貸株サービスに出して貸株料を得る」ことです。ETFは、一般の上場株式と同様に、貸株に出せることがあります。ETFに長期投資するならば、同時に貸株に出すことで、貸株料を稼ぎながら投資することを考えて良いと思います。
ただし、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座で保有している上場株式などは貸株に出すことはできません。貸株に出すことができるのは、特定口座・一般口座で保有している上場株式等のみです。
以下、「貸株サービス」【注】について詳しく解説します。
貸株サービスを利用するメリットとデメリット
以下にメリットとデメリットをまとめました。
【注】楽天証券の貸株には、「貸株サービス」と「信用貸株」がありますが、今日のレポートでは「貸株サービス」に絞って、説明します。
<貸株(かしかぶ)のメリット> ●お持ちの株式を、貸株に出すと、貸株金利が得られます。 ●貸株中の銘柄もいつでも売却可能です。普通に売り注文を入れるだけです。 ●ETFにも貸株サービスに出すことができる銘柄があります。ただし、ETF/ETN(指数連動証券)は対象外です。 <貸株のデメリット> ●貸株をしたままだと、配当金や株主優待が得られません。 →「株主優待・予想有配優先」を選択して貸株を行えば、権利確定日だけ、自動的に貸株が皆さまに返却されますので、優待・配当金を得られます。 ●継続保有特典つきの株主優待銘柄を長期保有している場合、その銘柄は貸株をしない方が無難です。「株主優待・予想有配優先」で貸株をしていても、継続保有特典が失われる可能性があるからです。 ●楽天証券の信用リスク 貸付いただいた株券等は、投資者保護基金による保護の対象とはなりません。 |
長期保有銘柄は、貸株(かしかぶ)に出して、貸株金利を得た方がいいと思います
貸株サービスとは、お客さまが保有している株を楽天証券に貸し出すことで、期間に応じた金利が受け取れるサービスです。簡単に言うと、株のレンタル料がもらえるということです。
例えば、貸株金利が年率1.0%の銘柄を200万円貸し出した場合、1年間で2万円の金利が得られます。
楽天証券は、皆さまから借り受けた株式を、機関投資家などに貸すことで、貸株金利を得ています。その中から、皆さまに、金利をお支払いしています。
2025年1月8日現在、楽天証券が貸株サービスの対象としている銘柄は、全部で4,388銘柄あります。うち、貸出金利が年率1%を超えている銘柄が603銘柄あります。貸株サービスの貸出金利の下限は年率0.1%です(信用貸株では0.05%)。貸出金利は、毎週見直しています。最新の貸株金利は、以下からご覧いただけます。
日経平均やTOPIXに連動するように設計されているETFや、米国の株価指数であるS&P500種指数に連動するように設計されているETFなどにも、貸株サービスに出せるものがあります。資産形成のために、日本や米国の株価指数に連動するETFに長期投資するならば、貸株サービスに出して貸株金利を得ながら長期投資するのも良いと思います。
ただし、残念ながら、NISA口座で保有しているETFは、貸株に出すことはできません。
貸株サービスについての誤解
長年にわたり、日本株投資をやってこられた読者の中には、10年以上継続保有している銘柄をお持ちの方もいらっしゃると思います。長期保有銘柄を、ただ持っているだけではもったいないと思います。楽天証券の貸株サービスを使って、貸し出しを行い、貸株金利を得ていくことを考えて良いと思います。
お子さまやお孫さま、親類の方が上場企業に就職した時、記念に、その会社の株を買う方もいらっしゃると聞いています。長期保有する予定ならば、株を買うと同時に、貸株サービスに出しても良いと思います。
「とにかく貸株はやりたくない」という方の中には、誤解に基づいて、貸株をしない方もいます。よく聞く誤解は、以下3点です。
【誤解1】貸株をしていると、売りたい時に、売れなくなる。
これは、完全に誤解です。楽天証券の貸株サービスでは、貸株をしていても、売りたい時は、いつでも売ることができます。貸株をしていたために、売りチャンスを逃すということは、ありません。
【誤解2】信用取引口座を開設しないと、貸株ができない。
これも、完全な誤解です。楽天証券では、信用取引口座がなくても、貸株サービスは利用可能です。
【誤解3】貸株をしていると、配当金や株主優待を得ることができない。
これは、半分正しいが、半分、間違っています。確かに、貸株をしたまま、配当金や株主優待を受け取る権利が確定する日を過ぎてしまうと、配当金(配当所得)も株主優待も得られません。代わりに「配当金相当額(雑所得または事業所得)」が得られます。配当金相当額は、給与所得が主体の方は、雑所得となります。
配当金を配当所得として受け取り、株主優待も得たいならば、権利確定日には、貸株を返却してもらう必要があります。
楽天証券では、権利確定日だけ、貸株を返却するサービスを行っています。「株主優待優先」または「株主優待・予想有配優先」を選択して、貸株を行えば、権利確定日だけ、自動的に貸株が皆さまに返却されます。それについて、以下、詳しく説明します。
「株主優待・予想有配優先」を選択して貸株すれば、配当金も株主優待も得られる
お持ちの株を、楽天証券の貸株サービスを利用して貸し出す場合、
【1】金利優先
【2】株主優待優先
【3】株主優待・予想有配優先
の3通りから、どれか一つを選んでいただくことになります。
配当金(配当所得)も、株主優待も両方とも欲しいならば、【3】「株主優待・予想有配優先」を選択して、貸株するのが良いと思います。
【1】「金利優先」を選ぶ場合
配当金や株主優待の権利が確定する日も、貸株の自動返却を行わず、そのまま貸株を継続し、なるべく多くの貸株金利が受け取れるようにします。権利確定日は、貸株金利が通常の5倍になります。ただし、株主優待があっても、権利は得られません。配当金は、配当金相当額(雑所得または事業所得)として、お客さまの預り金に入金されます。
【2】「株主優待優先」を選ぶ場合
株主優待の権利確定日に、自動的にお客さまの株式が返却され、株主優待の権利を受け取ることができます。株主優待の権利が確定する同じ日に、配当金を得る権利が確定する場合は、配当金を得る権利も確定します。
ただし、株主優待情報がない場合は、配当金の権利が確定する場合でも、株式の自動返却は行われません。その場合は、配当金(配当所得)は受け取れません。代わりに配当金相当額を受け取ることになります。
【3】「株主優待・予想有配優先」を選ぶ場合
貸株をしながら、株主優待も配当金(配当所得)も両方とも欲しい方は、こちらを選んでください。株主優待または配当金の権利が確定する日には、自動的にお客さまの口座に株式が返却されます。
ただし、予想有配優先としていても、優待のない復配銘柄で株式が返却されないケースがあります。詳しくは、以下を参照してください。
気をつけるべきデメリット:「継続保有特典」のある株主優待で「継続保有」の地位が失われるリスクに注意
2025年1月8日時点で、株主優待を実施している銘柄は、全部で1,480銘柄あります。うち、614銘柄は、「継続保有特典」をつけています。イオン(8267)、イオンモール(8905)、KDDI(9433)、INPEX(1605)、日本航空(9201)、オリエンタルランド(4661)、ビックカメラ(3048)などが継続保有特典をつけています。
「継続保有特典」とは、株主になってからの年数が長いほど、優待内容が増加する特典です。例えば、100株保有している株主に1,000円分の食事券を贈呈する企業で、2年以上継続保有の場合には2,000円、3年以上継続保有の場合には3,000円分の食事券を贈呈する場合があります。これが、継続保有特典です。
貸株をしたまま、株主優待の権利確定日を過ぎると、優待が得られません。優待が得られないだけでなく、継続保有の地位も失われます。権利確定日の株主名簿に名前が載っていないので、「一度、株主でなくなった」と見なされるからです。貸株をやめて、次の権利確定日で株主優待を得ても、株主になって1年未満の株主と見なされてしまいます。
「株主優待優先」または「株主優待・予想有配優先」で貸株をしていれば、優待の権利が得られる日には、貸株が返却されていますので、その時点で、継続して株主であると見なされます。従って、「継続保有」の地位は失われません。ただし、それでも、貸株をしていると、「継続保有」の地位が失われることがあります。
まれに、上場企業が、優待も配当も得られない任意の日に、株主名簿の確定をすることがあります。「株主優待・予想有配優先」で貸株をしていても、運悪く、任意の株主名簿確定が行われてしまうと、そこで、継続保有の地位が失われます。
「継続保有特典」のついた銘柄で、「継続保有」の地位を大切にしたい場合は、その銘柄は、貸株に出さない方が無難といえます。
なお、継続保有特典のある銘柄は、以下、楽天証券の「株主優待検索」に入れば、調べることができます。「株主優待検索」の左側にある「検索条件を指定」の欄の下の方に「優待内容」という項目があります。「優待内容」の一番下にある「継続保有特典」のボックスにチェックを入れていただくと、特典をつけている全銘柄が表示されます。
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(窪田 真之)
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