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米国株市場はこのまま調整入りするのか?~相場環境と株式市場との「歪み」に注意~

トウシル / 2025年1月10日 8時0分

米国株市場はこのまま調整入りするのか?~相場環境と株式市場との「歪み」に注意~

米国株市場はこのまま調整入りするのか?~相場環境と株式市場との「歪み」に注意~

日経平均の2025年スタートは4万円台が意識されるも要注意?

 2025年相場がスタートした今週の国内株式市場ですが、これまでのところ、少し値動きが荒い展開となっています。日経平均の推移でもう少し細かく見て行くと、大発会の6日(月)は前営業日比で587円安、翌7日(火)は776円高、続く8日(水)は102円安、そして9日(木)は375円安となり、節目の4万円台を挟んで株価が上下する展開となっています。

<図1>日経平均(日足)の動き(2025年1月9日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡより作成

 日経平均は昨年10月より、3万8,000円から4万円のレンジ相場が続いていましたが、ようやく、このレンジを上方向に抜けつつあるような動きを見せたことで、株式市場の基調自体は悪くないような印象です。ただし、株価動向の背景を探って行くと、過度な楽観は禁物かもしれません。

株式市場の重荷として、米金利の高止まりが目立ってきた

 まず、大発会の株価下落ですが、年末年始の米国株市場が軟調気味に推移していたことが影響しました。米国市場では、米10年債利回りが昨年末あたりから4.5%台から上の水準で高止まりしており、さらに今週に入ってからもジワリと再上昇してきています(下の図2)。

<図2>米10年債利回り(日足)の動き(2025年1月9日時点)

出所:楽天証券WEBサイト(REFINITIV)より作成

 米国の堅調な景況感を示す経済指標が相次いでいることや、1月20日から正式に発足する米トランプ次期政権が実施する政策の影響でインフレが再燃するのではという警戒感が米金利高の背景にあります。

 とりわけ、8日(水)の取引時間中には米10年債利回りが4.7%台まで上昇する場面がありました。「トランプ次期大統領が全世界一律の輸入関税の導入に向けて、就任後に緊急事態宣言を出すことを検討している」と米CNNが報じたことがきっかけとなりました。

 この他、「トランプ政権がもたらすかもしれない」インフレは、景気を刺激し過ぎることによるインフレをはじめ、関税強化や移民政策強化によるコスト増がもたらすインフレ、そして、政策を実施する上での財政悪化によるインフレなど、複数の経路が考えられるだけに、「どの政策がどう影響して行くのか?」といった見通しやシナリオを立てるのは現時点では難しい状況です。

 また、一般的に金利上昇は株式市場にとって重石となるのがセオリーです。高金利によって、企業が資金調達を行うのが難しくなり、経済活動が抑制的になってしまう懸念があるほか、株式の益回りと国債の利回り格差が縮まることによって、リスク資産である株式の割高感が強まり、安全資産の債券に資金が向かいやすくなるという理屈です。

 実際に、米S&P500の日足チャートを見てみると、図2において、米10年債利回りがピークを迎えた昨年(2024年)4月や、2023年10月の時期の株価は下値を探っている状況でした(下の図3)。

<図3>米S&P500(日足)の動き(2025年1月8日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡより作成

一部で強さが垣間見える米国株は「歪み」が生じている?

 ただし、足元の米国株市場が見せている印象は、そこまで危機感が高まっていないように思われます。下の図4と図5は、米主要株価指数(NYダウ・ナスダック総合指数)の日足チャートですが、いずれも、12月につけた高値からは株価水準を切り下げたものの、50日移動平均線を意識しつつ、株価は振れ幅の大きいもみ合いが続いており、確かに弱含んではいるものの、積極的に下値を探りに行っているような展開になっていません。

<図4>米NYダウ(日足)の推移(2025年1月8日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡより作成

<図5>米S&Pナスダック総合指数(日足)の推移(2025年1月8日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡより作成

 こうした米国株市場の動きの背景には、金利上昇が追い風となる銀行株が買われていることや、半導体をはじめとする一部の大手テック株が買われていることなどが挙げられます。

 とりわけ、テック株買いについては、1月5日に台湾の鴻海精密工業がAI向けサーバーの好調で、2024年10月から12月の売上高が過去最高になったと発表したほか、米国で今週開催されている「CES(デジタル技術見本市)2025」で講演した、米エヌビディアのジェンスン・ファンCEOが今後の事業展開について強気の見通しを語ったことなどによって、「AI相場」が息を吹き返したように思われます。その後、米国の対中国の半導体規制の材料で下落しましたが、それでも相場が崩れた状況にはなっていません。

 また、大手テック株は企業の規模が大きく、金利が上昇しても財務基盤的に安心感があるというディフェンシブ的な側面を持っていることも、買われる理由として考えられます。

 とはいえ、それ以外の多くの銘柄は株価が伸び悩んでいるほか、米10年債などの債券市場が警戒している印象の割に、株価指数への寄与度の高い一部の銘柄が賑わうことによって、米株市場全体が堅調に見えるという、「歪み」が少なからず生じていると思われます。

株価調整の備えはしておきたい

 このような、「株式市場と債券市場で見ている景色が違うかもしれない」という視点は、これまでのレポートでも何度か紹介してきました。もちろん、株式市場の楽観的な見方が勝利する可能性はありますが、債券市場が見ている慎重さや警戒についても、しっかりと押さえておく必要があります。

 そこで確認したいのが下の図6になります。

<図6>ユーラシア・グループ公表の「2025年の世界10大リスク」の項目

No. 項目
リスク01 深まる「G ゼロ世界」の混迷
リスク02 トランプの支配
リスク03 米中決裂
リスク04 トランプノミクス
リスク05 「ならず者国家」のままのロシア
リスク06 追い詰められたイラン
リスク07 世界経済への負の押し付け
リスク08 制御不能なAI
リスク09 統治なき領域の拡大
リスク10 米国とメキシコの対立
出所:ユーラシア・グループ公表レポートを元に作成

 図6は、著名政治学者のイアン・ブレマー氏が設立したコンサルティング会社のユーラシア・グループが毎年公表している「世界の10大リスク」の2025年版の項目一覧です。

 それぞれのリスク項目を見ても分かるように、2025年は、トランプ米次期大統領が関わっているものや、政治絡みのリスクが多いという特徴があります。

 そのため、再来週20日(月)から正式に発足するトランプ次期政権の動向に対する期待と不安は、現時点では後者の方が優勢と判断した方が良いのかもしれません。

 少なくとも、米国株をはじめ、株式市場全体が上昇していくには、米金利が再び下落していく必要があります。

 「米国の経済指標などの景況感を手掛かりに金融政策への思惑が働き、金利が動いて、株式市場が反応する」というのが、目先の基本的な相場の見方となり、まずは、10日(金)に控える米雇用統計(12月分)の結果が注目されます。

 したがって、米国株市場が調整局面入りを避けるには、今後の米景況感が適度に弱くなり、FRBによる利下げ期待が高まること、そして、トランプ次期政権が事前の警戒感を上回らない無難なスタートとなることなど、その条件を満たせるのは不透明なため、「株価調整を迎える」ことを前提に相場に臨むぐらいの方が丁度良いのかもしれません。

(土信田 雅之)

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