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トランプ第2次政権が来週発足。中国はどう対するか。注目すべき三つのポイント

トウシル / 2025年1月16日 7時30分

トランプ第2次政権が来週発足。中国はどう対するか。注目すべき三つのポイント

トランプ第2次政権が来週発足。中国はどう対するか。注目すべき三つのポイント

1月20日にトランプ第2次政権が発足

 昨年11月の米国大統領選挙で勝利したドナルド・トランプ氏が週明けの1月20日、正式に大統領に就任し、「トランプ第2次政権」が発足します。就任初日から、新大統領、新政権の動向から「目が離せない」というのが大方の予想でしょう。

 トランプ第1次政権が発足した8年前、トランプ氏は公約通り、TPP(環太平洋連携協定)から脱退しました。米国と共に、環太平洋地域で最もハイレベルで、開放的な多国間自由貿易協定の締結と推進に尽力してきた日本としては、非常に残念な結果となりました。

 どの分野、国・地域に関わるかはともかく、当時のような「トランプ・ショック」が、就任初日から見られるのかどうか。大いに見ものだと言えるでしょう。環境や気候変動関連(例えば、パリ協定、インフレ抑制法)、関税関連(トランプ氏は既に、就任初日にメキシコとカナダに25%の関税、中国に10%の追加関税を科すと表明)、不法移民抑止関連など、1月20日に行われる就任演説の内容を含めて、トランプ陣営の言動や政策には密に注目していくべきだと思います。

 本連載が扱う中国関連においても、就任初日から注目すべきポイントがいくつかあると考えます。世界第1、第2の経済大国であり、世界経済や国際関係の行方にとっても極めて重大な影響を持つ米国と中国、そして両国間の関係は、日本の経済や安全保障を取り巻く環境をこれまで以上の強度と範囲で揺るがしていくに違いありません。

 トランプ第2次政権発足直前で配信する本稿では以下、就任式当日、すなわちトランプ大統領就任初日に、中国関連で私が注目している三つのポイントについて解説をしていきます。

就任式当日・初日に注目すべき三つのポイント

ポイント1:トランプ大統領就任式に出席する中国側の「メンツ」とその動向

 日本からは岩屋毅外相が訪米し、出席予定であるトランプ大統領の就任式ですが、中国側からは誰が出席するのでしょうか。

 一部報道にもあるように、トランプ氏は習近平(シー・ジンピン)国家主席を招待したとされています。もちろん、中国の最高指導者が米国の大統領就任式に出席したことは過去に一度もありません。

 私が本稿を最終確認している1月14日(火)午後の時点で、中国政府はだれが就任式に出席するのかを発表していません。仮に習主席自らがワシントンD.C.に乗り込むとすれば、それは米中関係史、兼ねては世界史に刻まれるような歴史的イベントになるでしょう。米中それぞれが、勝負を賭けた場面になることは間違いありません。一方、中国側が最高指導者を送り込むとなれば、それなりの準備、動機、意義付けがなくてはなりません。失敗したとしても後には引けないわけですから、相当程度リスクも伴います。

 日本同様、外交のトップを担う王毅(ワン・イー)外相を送り込むというのはオーソドックスな方法でしょう。一方、王毅氏は24人いる政治局委員の一人に過ぎず、トランプ陣営に響くかどうかは定かではありません。そう考えると、例えば韓正(ハン・ジェン)国家副主席(元政治局常務委員、筆頭副首相)、あるいは現役の政治局常務委員(トップセブン)の中の、習近平主席以外の誰かを派遣するという可能性もあるでしょう。

 いずれにせよ、中国側が習近平国家主席の実質的「特使」として、誰を送り込むかによって、中国側のトランプ第2次政権への対応を巡る温度感のようなものが見えてくると思います。と同時に、送り込まれた特使、および他の随行者や謝鋒(シエ・フォン)駐米大使らが、就任式当日、あるいはそれから数日以内の間に、トランプ陣営とどのような接触、会談を実施するかにも注目です。

 それ次第で、2回目となる習近平―トランプ体制下における米中関係が、これからの4年間、どんな展開を見せ得るかの一端がうかがえるかもしれません。

ポイント2:トランプ第2次政権発足初日の対中関税

 トランプ氏は昨年11月25日(米東部時間)、自らのSNSで、カナダとメキシコから輸入される全ての商品に25%の関税を、中国から輸入される商品に追加で10%の関税を科す旨を発表しました。

 これに対し同日、中国駐米大使館の劉鵬宇報道官は「中国側は中米通商協力の本質は互恵とウィンウィンであり、貿易戦争と関税戦争に勝者はいない」。

 28日(北京時間)には中国商務部の何亜東報道官が「中国側の一方的な追加課税措置に反対する立場は一貫している。米国側は世界貿易機関の規則を守り、相互に尊重し、平和的に共存し、協力、ウィンウィンの関係を構築するという原則に基づいて、中国側と共に中米通商関係の安定的、持続可能な発展を推進すべきである」と回答しています。

 これらの文言からうかがえるのは、中国政府は来るトランプ関税に対しては慎重姿勢を崩しておらず、また抑制的ですらあるということです。「戦狼外交」を体現するかのように、下手にかみついて、トランプ氏を刺激するのは、あの時点では得策ではないと考えたのでしょう。

 トランプ氏が大統領就任初日に公約通り、10%の追加関税を科してきた場合には、中国政府として断固たる反応と何らかの報復措置を取るでしょうが、それまでは待つということでしょう。トランプ第1次政権でも、米中間では関税の応酬が起こりましたが、貿易戦争に再び火が付くのかどうか、日本を含めた世界経済への影響はどうなるのか。見ものです。

ポイント3:トランプ大統領・陣営が発表する各政策に対する中国側の反応

 冒頭でも言及しましたが、トランプ氏は大統領就任初日、あるいは直後、中国関連だけでなく、他のあらゆる分野においても、ドラスティック、あるいはラディカルな言動や政策を打ち出してくる可能性があります。

 やはり、最大の注目は、この期間起こってきている二つの戦争、ロシア・ウクライナ戦争とイスラエル・ハマス戦争に対して、トランプ陣営がどのような対応をしていくかでしょう。トランプ氏は「戦争を終わらせる」と公言してはばかりません。

 特に、ロシア・ウクライナ戦争を巡って、両国の指導者であるプーチン、ゼレンスキー両大統領とどのように接触、対話していくかは要注目です。実際、トランプ氏は昨年9月下旬、選挙キャンペーン中にもかかわらず、ニューヨークを訪れていたゼレンスキー大統領と会談をし、「戦争を終わらせるべき時だ」と語りかけています。

 また、トランプ氏とプーチン大統領との電話会談が近く行われるという話もトランプ次期政権中枢から発信されています。1月20日に発足する次期政権で国家安全保障担当大統領補佐官を担う見込みのマイク・ウォルツ氏が1月12日、米ABCテレビに対し、「今後数日ないし数週間以内」に電話会談を行う見込みだと述べています。

 中東での戦争を含め、トランプ氏が停戦、終戦に向けて就任早々積極的に動き始めたとして、習近平国家主席率いる中国はその動向をどう見つめ、動いていくのでしょうか。言うまでもなく、「包括的な戦略パートナーシップ」を結ぶ中国とロシアとの関係は特殊であり、そのロシアによる軍事侵攻によって始まった戦争の行方に対し、中国が無策に静観することは考えられません。

 中東も同様です。2023年3月にイランとサウジアラビアの国交正常化を仲介するなど、アラブ中東における中国の地政学的な影響力は年々高まり、米国に対抗する姿勢すら打ち出しています。

 習近平氏がトランプ氏の「終戦に向けた外交努力」に対してどう向き合い、その結果、欧州や中東の地政学情勢にどういう影響がもたらされるのか。その過程で、アジアの地政学がどう動くのか。

 最大の注目ポイントが台湾問題であることには疑いありません。習近平、トランプ両首脳はこれからの4年間、台湾を巡ってどんな話し合いとやり取りをしていくのか。日本経済や国民生活への影響も絶大になり得るだけに、大いに注目していきたいと思います。

(加藤 嘉一)

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