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「トランプ政権2.0」いよいよ船出~注目度急上昇の関税政策についてチェック~(土信田雅之)

トウシル / 2025年1月17日 8時0分

「トランプ政権2.0」いよいよ船出~注目度急上昇の関税政策についてチェック~(土信田雅之)

「トランプ政権2.0」いよいよ船出~注目度急上昇の関税政策についてチェック~(土信田雅之)

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
いよいよ出航する「トランプ政権2.0」~注目度急上昇の関税政策についてチェック~

 世界中が固唾(かたず)を呑んで待つ、「トランプ新政権2.0」の船出がいよいよ来週20日(月)に迫ってきました。

 緊張感が高まる中で過ごすことになった今週の株式市場ですが、米国のインフレ関連指標も注目されており、これまでのところ、日米ともに軟調な推移から持ち直すような動きを見せています。

インフレ進行の落ち着きを見せた米国の物価指標

 米金利の高止まりが株式市場の重しとなる中、今週の米国では、14日(火)に12月分のPPI(生産者物価指数)、翌15日(水)には同じく12月分のCPI(消費者物価指数)が公表されました。

 両者ともにインフレの進行が落ち着く結果となりましたが、とりわけ、CPIが公表された15日(水)の米国株市場では、ダウ工業株30種平均が1.65%高、S&P500種指数が1.83%高、ナスダック総合指数が2.45%高といった具合に、主要株価指数がそろって大きく反発しました。

<図1>米CPIの推移

米CPIの推移
出所:Bloombergデータなどを基に作成

 上の図1は米CPIの推移を示したものです。

 総合指数は前月比・前年比ともに上昇基調が続いていますが、ほぼ市場の予想通りだったほか、食品とエネルギー価格を除いたコア指数の方が予想よりも低下しており、「全体的には過度に警戒するほどインフレが進行していない」と受け止められたと思われます。

 また、米国のインフレ指標の結果を受けて、米10年債利回りが低下しました。

<図2>米10年債利回り(日足)の推移(2025年1月15日時点)

米10年債利回り(日足)の推移(2025年1月15日時点)
出所:楽天証券WEBサイト(REFINITIV)より作成

 金利の上昇が株式市場の重しになりやすいことは、別のレポートでも述べましたが、上昇基調が目立っていた米10年債利回りが米インフレ指標の結果を受けて低下したことが、株価上昇につながった格好です。

 また、この日は米大手金融機関のゴールドマン・サックスの決算を好感する動きや、中東パレスチナ自治区ガザ地域での戦闘停止が合意されたことによる安心感も、株式市場の追い風となりました。

米国株市場の迷いと揺らぎ

 しかしながら、日足チャートで見た米主要株価指数からは依然として、迷いがうかがえます。

<図3>米NYダウ(日足)の動き(2025年1月15日時点)

米NYダウ(日足)の動き(2025年1月15日時点)
出所:MARKETSPEEDIIより作成

 まずは、NYダウ(ダウ工業株30種平均)です。15日(水)の反発によって25日移動平均線を回復しましたが、まだ、50日移動平均線には届いていません。50日移動平均線は昨年12月に株価が下抜けて以降、抵抗(レジスタンス)として意識されているフシがあります。

 続いて、S&P500を確認します。

<図4>米S&P500(日足)の動き(2025年1月15日時点)

米S&P500(日足)の動き(2025年1月15日時点)
出所:MARKETSPEEDIIより作成

 S&P500もNYダウと同様に50日移動平均線が意識されているほか、25日移動平均線が50日移動平均との「デッド・クロス」出現ギリギリの状況となっています。

 さらに上値の形状に注目すると、丸みを帯びるようになっており、いわゆる「ラウンド・トップ」に近い天井パターンとなっています。

 相場のムードを好転させるには、株価が移動平均線や直近高値を超えていく必要があります。

 そして、最後にナスダック総合指数についても見て行きます。

<図5>米ナスダック総合指数(日足)の動き(2025年1月15日時点)

出所:MARKETSPEEDIIより作成

 15日(水)のナスダック総合指数は50日移動平均線を回復しており、NYダウやS&P500よりも強い形状となっていますが、25日移動平均線に届いていないほか、12月16日に最高値をつけてから、上値が切り下がっている点は他の2指数ともに共通しています。

 以上のように、米国株市場の動きを見ると、「このまま戻り基調をたどるのか」、それとも「まだまだ株価の下落が続くのか」の方向感が定まりきれず、そのウラにある「トランプ政権2.0」を控えた緊張オーラのすごさが感じられます。

「トランプ関税」への警戒感が急激に高まってきたワケ

 こうした「トランプ政権2.0」前の緊張感は2025年に入ってから急速に高まっている印象ですが、その中でも、いわゆる「トランプ関税」に対する警戒感が強まっています。

 具体的に見ていくと、先週はトランプ氏が関税導入プロセスを迅速化する「IEEPA(国家経済緊急事態)」の宣言を検討していると報じられたことや、今週も関税を管轄する「ERS(対外歳入庁)」の新設が発表されたりしています。

 トランプ氏の関税政策については、「相手国の譲歩を引き出すディールを優先させたもの」という見方があったのですが、ここにきて関税政策の意欲を示す動きが目立っていることで、「早期の関税実施を優先させているのでは」という見方が優勢になりつつあることが警戒感につながっていると言えます。

 ちょっと細かい話になりますが、関税の導入や実施については、米大統領に発動権限が与えられる法的な根拠がいくつか存在しています。

<図6>米大統領に発動権限が付与されている主な関税措置

米大統領に発動権限が付与されている主な関税措置
出所:JETRO「地域・分析レポート」(2024年12月10日)を基に作成

 上の図6で〇印がついているものは、前トランプ政権時に実施した関税政策の法的根拠となったものです。鉄鋼・アルミニウムに対する関税は「通商拡大法232条」、中国製品を対象とする関税については「通商法301条」が適用されました。

 いずれも、大統領の指示を受けた米商務省やUSTR(米通商代表部)が、関税実施の条件を満たせるかについて調査を行いますが、数カ月単位の時間が必要となり、当時はトランプ氏の大統領就任から実際に関税が賦課されるまでに、それぞれ1年2カ月、1年6カ月かかりました。

 つまり、今回のトランプ新政権も同様のプロセスを経るのであれば、関税実施までに時間的猶予があるため、関税の準備を進めつつ、それまでに外交やその他の政策に着手するのではという見方もあったのですが、最近になって、調査期間を必要としないIEEPAが検討されていることが判明し、関税政策のスケジュール感が早まることも想定しておく必要が出てきたわけです。

 もちろん、トランプ政権2.0には、関税以外にも注目の政策(減税や移民対策、規制緩和)があるほか、バイデン前政権と異なる姿勢とアプローチで臨む外交なども世界に与える影響が大きくなる可能性がありますが、まずは、「どの時期に何の法律を根拠に、どのような関税政策を実行に移すのか?」が焦点になりそうです。

 就任演説でトランプ新大統領が何を語るのか、今後のマーケットの景色が大きく変わってしまうのか、来週1月20日(月)は2025年相場の中で重要な日の一つになります。

(土信田 雅之)

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