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円安なら株高、円高なら株安?ドル/円為替レートから日本株を考える(その2)(窪田真之)

トウシル / 2025年1月21日 8時0分

円安なら株高、円高なら株安?ドル/円為替レートから日本株を考える(その2)(窪田真之)

円安なら株高、円高なら株安?ドル/円為替レートから日本株を考える(その2)(窪田真之)

 トランプ大統領は就任直後の輸入関税引き上げは実施しない見込みとなり、これを受けて、20日の英国・ドイツの株式市場が最高値を更新しており、とりあえず就任直後のショック安は回避できる見込みです。今後の政策を慎重にウォッチする必要があります。リスク管理しながら、割安な日本株に投資していくことが、長期の資産形成に寄与すると私は考えています。

 さて、今日は昨日の続編をお届けします。昨日のレポートは以下からお読みいただけます。
2024年1月20日「円安なら株高、円高なら株安?ドル/円為替レートから日本株を考える(窪田真之)

ドル/円を動かす3大要素、一番重要なのは「日米金利差」

 為替を動かす要因は無数にありますが、重要度の高いものに絞れば、三つです。

【1】日米金利差
ドル金利が上昇し、日米金利差が拡大すると、円安(ドル高)になります。
ドル金利が低下し、日米金利差が縮小すると、円高(ドル安)になります。

【2】世界的な株高・株安
世界経済に不安が広がり、世界的な株安が起こると、「円」が買われる傾向があります。不安が緩和し、世界的な株高が起こると、金利の低い「円」は売られます。

【3】政治圧力
米国政府筋から、円安を非難する発言が増えると、円高(ドル安)が進みやすくなります。
米国政府が、円安を容認している間は、円安(ドル高)が進みやすくなります。

 かつて貿易収支が、為替に影響を与えた時代もありましたが、今はほとんど影響しません。貿易収支よりもはるかに規模の大きい資本収支によって為替が動くようになったからです。

 中でも一番重要なのが、【1】日米金利差です。日米金利差が大きく開いているので、円を売ってドルを買う「円キャリートレード」の影響が大きくなっています。

 次に重要な役割を果たしているのが、【2】世界的な株高・株安です。政治・経済さまざまな要因で世界的に不安が高まり、株が売られる時は、円が買われる傾向があります。

 世界景気が悪化すると、世界的に金利が下がる傾向があり、低金利通貨の円やスイスフランが買われ、高金利通貨(ブラジルレアル、トルコリラ、南アフリカランドなど)が売られます。米ドルも金利低下によって、売られる可能性があります。

 世界的な株安が起こると、まだ金利は低下していなくても、「先行きドル金利は低下するだろう」という思惑を生じて、円高が起こると考えられます。

 ただ、近年、米ドルの国際通貨としての力が一段と強くなった結果、あらゆる通貨に対して安全通貨として動くことが多くなりました。その結果、世界的に不安が広がる時でも、米ドルが買われることもあります。

 3番目に重要なのが、【3】政治圧力です。特に、米政府の意向が重要です。トランプ米大統領が、為替についてどういう発言をするか注目されます。

日米2年金利差がドル/円の長期変動を決める最重要ファクター

 ドル/円為替の長期的な動きは、ほとんど日米金利差で説明できます。もっとも良く動きを説明できるのは、2年金利差です。

 2年金利差というのは、米国と日本の2年国債利回りの差です。以下で分かる通り、日本の金利は長年ほぼゼロ近辺に固定されていたので、米国金利が、ほぼそのまま日米金利差となっていました。ところが、日本銀行がマイナス金利を解除してから日本の金利が上昇したため、日本の金利変動も日米金利差に影響するようになりました。

<米国・日本の2年金利、および2年金利差の推移:2008年1月~2025年1月(17日)>

米国・日本の2年金利、および2年金利差の推移の図
出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

<ドル/円為替レートと、日米2年債利回りの差:2008年1月~2025年1月(17日)>

ドル/円為替レートと、日米2年債利回りの差の図
出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 2008年以降の動きを見ると、おおむね日米2年金利差と、ドル/円は連動していることが分かります。

 ただし、金利差だけでは説明できない時期もあります。米政府が円安を許容する時は円安が進み、米政府が円安を批判する時は円高が進みやすくなることが分かります。上のグラフに赤矢印と説明を加えたのが以下のチャートです。

<再掲:ドル/円為替レートと、日米2年債利回りの差:2008年1月~2025年1月(17日)>

再掲:ドル/円為替レートと、日米2年債利回りの差の図
出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

【1】2008~2012年

 日米金利差の縮小にしたがって、円高(ドル安)が進みました。

【2】2013~2014年

 日米金利差が少ししか拡大していないのに、大幅な円安(ドル高)が進みました。2年金利の差が拡大していますが、それだけでは説明できない程の円安です。米国政府が円安を批判しなかったことから「円安が許容されている」と思われ、過剰に円安が進みました。

【3】2015~2018年

 日米金利差が拡大しているにもかかわらず、円高が進みました。2013~2014年の行き過ぎた円安に修正が起こったと言えます。2016年の米大統領選キャンペーンで、共和党候補だったドナルド・トランプ氏(現大統領)と民主党候補だったヒラリー・クリントン氏が、ともに円安を批判したことも円高材料となりました。
 トランプ氏が大統領に当選した後も、中国、日本、ドイツ、メキシコなどの対米黒字を問題視し続けたため、貿易戦争への懸念から円高圧力が続きました。

【4】2019~2020年

 日米金利差が縮小するに従って、さらに円高が進みました。

【5】2021~2023年

 2022年からFRB(米連邦準備制度理事会)が急激な利上げを開始、日米金利差が拡大に転じるとともに、急激な円安が進みました。

【6】2024年

 日米金利差が縮小したのに、円安が進みました。日銀が巨額の円買い介入を実施しても円安を止められませんでした。
 FRBは利下げしたもののタカ派姿勢を維持、日銀は利上げしたもののハト派姿勢を見せていたことが影響しました。米政府が円安を許容していたことも、円安進行に追い風となりました。

 2024年は、日米金利差が縮小する中で円安が進んだことが良く分かるように示した以下のグラフをご覧ください。

<ドル/円為替レートと日米2年債利回りの差:2019年末~2025年1月(17日)>

ドル/円為替レートと日米2年債利回りの差の図
出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

2025年のドル/円・日経平均の見通し

 今年は、緩やかな円高が進む中で日経平均株価が上昇する年になると予想しています。2025年末に1ドル=140円前後へ、日経平均は4万4,000円に上昇すると予想しています。

 ただし、年初はトランプ大統領の政策に対する不安で、株が下落する中で円高が進む可能性もあると考えています。

(窪田 真之)

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