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大統領就任演説で見せた「トランプ節」。注目の初日に「中国問題」はどう扱われたか

トウシル / 2025年1月23日 7時30分

大統領就任演説で見せた「トランプ節」。注目の初日に「中国問題」はどう扱われたか

大統領就任演説で見せた「トランプ節」。注目の初日に「中国問題」はどう扱われたか

1月20日にトランプ第2次政権が発足。印象的だった三つのポイント

 2025年1月20日、米国でドナルド・トランプ氏が正式に大統領に就任しました。私も日本時間の21日未明に行われたトランプ大統領による就任演説を画面越しに見ていましたが、印象的に受け止めた点が三つあります。

 一つ目が、トランプ氏のネクタイの色。紫でした。8年前は輝くような赤でしたが、今回は、共和党の赤と民主党の青を混ぜたような色のネクタイを着用することで、自らが代表するのは決してレッドだけでなく、ブルーも含めた、全米国民なのだという姿勢を冷徹に打ち出しているように見受けられました。

 二つ目が、トランプ氏の演説内容です。この点に関しては、従来通りというか、相変わらずというか、鮮明な「トランプ節」だったと思います。

「黄金時代が今から始まる」
「私は非常に明快に米国を第一に据える」
「この日からわが国は繁栄し、世界中で再び尊敬されるだろう」
「まもなく米国はかつてなく偉大で強く、はるかに例外的になる」

 このような、自分が一番、これからが最高、前代未聞、過去最強…といったナンバーワンやオンリーワンを強調するスタイルは、トランプ氏ならではの口調であり、トーンであり、それらをどれだけ真剣に受け止めるか、どの程度の信ぴょう性を与えるかは、我々受け止める側次第だとは思いますが、私自身、「トランプは何処まで行ってもトランプだな」という印象を改めて持ちました。

 三つ目が、トランプ氏の演説から一種の落ち着きというか、覚悟のような雰囲気を感じました。2017~2021年に一度経験しているというのもあるのでしょうが、今回は任期が明確に見え、定まっている、トランプ大統領にとって「最後の4年」ということで、自分の中で内に秘めた、確固たる決意や覚悟を持っている。故に「強気なトランプ節」を前面に出すというよりは、冷静沈着さを備えつつ、初日からスタートダッシュを切ろうとしているように見受けられました。

「初日」に何が起こったか?

 スタートダッシュという意味で言うと、トランプ氏は大統領就任初日から飛ばしに飛ばしたとみています。それを象徴するのが「大統領令」への署名でしょう。大統領令とは、大統領自身の権限を持って、連邦政府や軍に対して、法的拘束力を持った形で指示を出すものであり、政権がこれから何に取り組もうとしているのかを象徴する方針とも理解できます。

 トランプ氏は1月20日、計26本の大統領令に署名しました。4年前のバイデン氏は9本、8年前のトランプ氏は1本でしたから、その数の異常な多さが容易に見て取れます。私が重要だと受け止めた指令をいくつか挙げます。

  • 連邦政府職員の雇用プロセスの見直し
  • 政府が認める性別は男性と女性の二つの性のみとする
  • 「政府効率化省」の設置
  • 国務長官主導の「米国第一主義」
  • 国境管理の厳格化
  • 出生地主義の見直し
  • グリーン・ニューディール政策の終了とEV義務化の撤廃など
  • 連邦政府職員の説明責任の回復
  • WHO(世界保健機関)からの脱退
  • TikTok禁止法を巡る75日間の執行を猶予
  • パリ協定からの離脱
  • バイデン前政権の78の大統領令などの撤回

 これらを俯瞰(ふかん)してみると、バイデン前政権や連邦政府(職員)の在り方への強烈な不満とアンチテーゼ、性別や出生地主義など、米国の国家や社会の根幹に関わる部分への挑戦などがみられます。また、地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定や、WHOからの脱退は、米国の国際社会・ルールへのコミットが弱まり、米国の内向き化につながり得る部分です。

 国務長官主導の米国第一主義というのは興味深く、すでに上院による承認済みのマルコ・ルビオ国務長官が、トランプ氏が掲げる「アメリカ・ファースト」を外交の分野でどう体現していくのかに注目すべきでしょう。

 パリ協定からの脱退とも関係しますが、グリーン戦略・政策の後退、化石燃料への回帰も避けられないようです。同じ文脈で、今後、トランプ大統領が、バイデン前政権が成立させたインフレ抑制法(IRA)にどう向き合うのかという点も、米国で投資をし、事業を展開してきた国内外の企業戦略・動向にも実質的な影響を与えるのが必至だと言えます。

トランプ第2次政権発足と中国問題

 そして、バイデン政権からトランプ政権への移行期に注目されてきたのがTikTok問題です。「TikTok禁止法」に基づき、同サービスが米国で停止されるはずでしたが、同社はバイデン政権の最終段階で、サービスの停止を発表しましたが、大統領就任直前のトランプ氏が執行を猶予する予定であることを公言すると、サービスを復活させました。公言通り、トランプ大統領は執行猶予の大統領令に署名をしたニュースは、中国でも広く伝えられています。

 私は先週のレポートで、トランプ大統領就任初日に注目すべき、中国がらみのポイントとして、以下の三つを挙げました。

  • ポイント1
    トランプ大統領就任式に出席する中国側の「メンツ」とその動向
  • ポイント2
    トランプ第2次政権発足初日の対中関税
  • ポイント3
    トランプ大統領・陣営が発表する各政策に対する中国側の反応

 ここで簡単に検証してみたいと思います。

 まずポイント(1)を見ると、「習近平(シー・ジンピン)国家主席特別代表」として韓正国家副主席が就任式に出席し、ヴァンス副大統領、イーロン・マスク氏らと会談を重ねました。中国側としては、トランプ氏に然るべきメンツを与えたということでしょうし、2回目となる習近平、トランプ体制下の米中関係をこれからマネージしていく上で、両国、両指導部間でできる限りの接触と会談は行ったということだと私は理解しています。また、1月17日にトランプ氏と習近平氏が電話会談を行い、これから「偉大な関係」(トランプ氏)を構築していくべく確認し合ったファクトも重要であり、特筆に値すると思っています。

 ポイント(2)で言うと、就任初日に中国の輸入品に対する10%の追加課税を発動するための大統領令は出されませんでした。そのような政策、主張も打ち出されていません。トランプ大統領が21日にホワイトハウスで行った記者会見で、中国からフェンタニルが流入していることへの報復として、10%の対中関税を検討しているとは語りましたが、これからの展開は大いに見ものだと言えるでしょう。比較材料として、トランプ大統領はカナダとメキシコへの25%の関税を2月1日から施行する予定だと、対中国に比べても踏み込んだ、明確な発言をしています。「トランプ関税」がどのように現実化していくのか注視すべきです。

 ポイント(3)に関して、現時点で、中国側から個別具体的な反応や措置は取られていないようです。中国政府は、トランプ政権との関係を重視し、「新たな起点において、中米関係がさらなる進展を見せる用に推進、行動していく」(2025年1月21日、中国外交部報道官)という類の抽象的なスタンスしか表明していません。

 トランプ氏による就任演説で中国に関する言及はほとんどなく、「中国がパナマを運営している」とだけ述べました。中国を挑発したり、過度にけん制・批判する内容ではなかった点も、中国側が現時点で静観、様子見している背景にあると思います。

 今後、トランプ大統領が、関税、新型コロナウイルスの発生源問題、台湾問題などでどのような対中政策・言動を取っていくかによって、中国側のトランプ第2次政権への態度やスタンスが徐々に明らかになっていくと思います。

 トランプ氏は就任後100日以内に中国を訪問したいという考えを持っているようですが、習近平とトランプ両首脳のうち、どちらか先に相手国に乗り込むかという点も、これから4年間の米中関係、およびそれが世界経済や国際関係に及ぼし得る影響を図る上で重要な要素になるとみています。

(加藤 嘉一)

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