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AI相場の再発火でトランプ政権2.0開始!2月は財政問題と金利上昇から米国株の鬼門に?(土信田雅之)

トウシル / 2025年1月24日 8時0分

AI相場の再発火でトランプ政権2.0開始!2月は財政問題と金利上昇から米国株の鬼門に?(土信田雅之)

AI相場の再発火でトランプ政権2.0開始!2月は財政問題と金利上昇から米国株の鬼門に?(土信田雅之)

 週初の20日(月)にトランプ新大統領が正式に就任し、「トランプ政権2.0」のスタートを迎えた今週の株式市場ですが、初期反応はこれまでのところ良好です。

「トランプ政権2.0」の船出をポジティブに捉えた株式市場

 国内株市場では日経平均が上昇し、23日(木)の取引時間中には一時4万円台をつけるなど、株価水準を引き上げたほか、米国株市場でも、主要株価3指数(NYダウ・S&P500・ナスダック総合指数)がそろって続伸する展開となっています。

 とりわけ、22日(水)の取引では、多くの機関投資家が運用指標とするS&P500が取引時間中に6,100p台に乗せ、最高値を更新する場面があったほか、ナスダック総合指数も2万p台を回復させ、昨年12月16日の高値(2万204p)が視野に入っています。

 このように、日米の株式市場は、今のところ「トランプ政権2.0」の船出をポジティブに捉えていると言えそうです。

 こうした株価上昇の背景としては、前回のレポートでも指摘していたように、市場が不安視していた関税政策について、トランプ大統領の就任演説の内容などから、「思っていたよりも踏み込んだものではなかった」と受け止められたことが主因として挙げられます。

<図1>国内外主要株価指数のパフォーマンス比較 (2024年末を100)(2025年1月22日時点)

出所:MARKETSPEEDII、Bloombergデータを元に作成

 とはいえ、21日(火)の国内の取引時間中に、カナダやメキシコに対しては2月1日に関税をかけるべく調査を始めたと報じられて日経平均が下落に転じる場面があったり、その後、中国に対しても追加関税を課すことを検討していることが伝えられるなど、一部で関税に対する警戒感はくすぶっています。

 上の図1は、昨年(2024年)末を100とした、日本・米国・中国、そしてインドの主要株価指数のパフォーマンスを比較したものですが、日米の株価指数が上昇を続けているのに対し、中国の株価指数(上海総合指数と香港ハンセン指数)が直近で低下していることが読み取れるのも、関税政策への思惑が影響しているものと思われます。

日米の株式市場をさらに上昇させた「AI投資計画」

 しかしながら、「すべての国に一律に関税を賦課する」という懸念がひとまず後退していることは、安心材料としては大きく、これに加えて、トランプ大統領が米国内で巨額のAI投資が行われる旨を表明したことが、日米の株式市場にとって、さらなる追い風になりました。

「スターゲート」と呼ばれるAI開発の共同出資事業が、ソフトバンク・グループや米オープンAI、米オラクルの日米3社を中心に行われることになり、今後4年間で5,000億ドル投じられるほか、技術面では米エヌビディアや米マイクロソフトとも連携、そして、10万人規模の雇用増も見込まれるというもので、この材料を受けて、AI相場に再び火をつけるような格好となりました。

 当事者であるソフトバンク・グループの株価は22日(水)に10%超上昇し、翌23日(木)も5%を超える上昇となったほか、米オラクルの株価も大きく上昇しています(下の図2と図3)。

<図2>ソフトバンクG(日足)の動き

出所:MARKETSPEEDⅡ

<図3>米オラクル(日足)の動き

出所:MARKETSPEEDⅡ

 この影響は、半導体株や電線株などの関連銘柄にも波及し、相場のムードを強めるのに寄与しています。

「トランプ政権2.0」はまだ始まったばかり

 このように、これまでの株式市場の動きを見ると、「トランプ政権2.0」の滑り出しは今のところ順調そうな印象です。

 また、米国では企業決算の発表が本格化しており、今週もネットフリックスやP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)など、好決算だった銘柄が素直に買われるなど、こちらも悪くない動きとなっています。

 特に来週は、メタ・プラットフォームズやマイクロソフト、テスラ、アップルといった、「マグニフィセントセブン」銘柄の一部をはじめ、インテルやIBM、ビザ、エクソン・モービル、シェブロンなどの注目企業の決算が予定されており、決算の動向次第では、足元の相場の地合いの良さとの「合わせ技」で米国株市場がさらに上昇していくことも考えられます。

<図4>米大統領選前後のNYダウの動き(投開票日および前日を100)

出所:Bloombergデータを元に作成

 上の図4は、米大統領選挙の投開票日(および前日)を100として、その前後のNYダウの株価推移を示したものです。

 今回のトランプ政権2.0における現在のNYダウの位置は、前バイデン政権や、前回のトランプ政権の時と比べるとまだ低く、最近になってようやく過去平均を上回ったところですので、あくまでも過去との比較ではあるものの、まだ上昇余地があると考えることはできます。

とはいえ、「トランプ政権2.0」はまだまだ始まったばかりであり、中長期的にこの基調が続くという見通しを立てるのは、まだちょっと早いかもしれません。

 一般的に、相場は先行きを見据えながら動いて行きますが、「どこまで先の時間軸を見て行くか?」となると、トランプ大統領の発言や大統領令、政権運営の動向によっては、相場のムードがガラリと変わる可能性は低くはないため、あまり遠い時間軸で行動するのは難しく、しばらくの間は、「その都度出てくる材料に短期的に反応する」といった場面が増えそうです。

トランプ大統領の演説で語られなかった減税政策

 今回のトランプ大統領の就任演説では、関税政策に対する踏み込んだ話が出なかったことを市場が好感した格好となりましたが、演説ではもうひとつ、「減税政策」について語られなかったことについても注目する必要があります。

 減税政策は、米大統領選挙時から掲げている主要政策のひとつですが、2025年で期限を迎える「トランプ減税(個人所得減税)の恒久化」と、「法人税のさらなる引き下げ」がメインとなっています。

 実際に、これらの政策が実行されれば、景気の下支え効果や企業の利益増などのメリットがある反面、景気が過熱し過ぎてしまうことによるインフレ懸念、今後景気が後退した際に減税策を打ちにくくなること、そして、財政への負担が大きく、財政悪化不安による米国債売りを通じた金利の高止まりなどのデメリットも想定されます。

 そのため、トランプ政権に対する課題として、「減税などの政策と財政改善をどのように両立させていくのか?」が与えられていることになります。

 この課題については、財務長官への就任が今週の議会で承認されたスコット・ベッセント氏が提唱する「3・3・3政策(財政赤字をGDP比3%に削減、規制緩和でGDP成長率を3%に押し上げ、日量3百万バレルの原油増産でインフレ抑制)」のほか、米起業家のイーロン・マスク氏が共同トップに任命され、新設された「DOGE(政府効率化省)」が主導する歳出削減などによってクリアできるのではという期待がある一方、果たしてそれが現実的なのかどうかという見方もあります。

 さらに、来週からは2月に入り、米議会では連邦政府の予算審議が始まります。ざっくりとしたスケジュールとしては、2月初旬に予算編成の基本方針を示した「予算教書」がトランプ大統領より提出され、その後、経済情勢に関する認識や対応策などをまとめた「大統領経済報告」が提出される流れとなっています。

 これらを通じて、トランプ大統領の政権運営の方針や、実行しようとしている政策の金額的な規模感などがある程度見えてくると思われます。

 それと同時に、いわゆる「つなぎ予算」が3月14日に期限を迎えることになり、政府債務の上限問題も注目されるタイミングになります。債務上限の撤廃や引き上げ、一時停止などの法案を可決できなければ米国債の債務不履行(デフォルト)となってしまいます。

 昨年11月の選挙を経て、米国議会の構図は上下院ともに共和党が多数派を握る「トリプルレッド」を実現していますが、下院については共和党が民主党をわずかに3議席上回るだけであるほか、共和党内には歳出削減に厳しい強硬派が一定数存在しています。この強硬派は昨年12月にも、先ほどのつなぎ予算の法案について、トランプ氏が賛成を要請したにもかかわらず、反対した経緯があります。

 つまり、トランプ大統領は政権運営と財政改善について、野党の民主党だけでなく、共和党の強硬派も納得させる必要があり、2月に繰り広げられる展開次第では、パワーバランスの観点から、トランプ政権2.0の基盤が盤石かどうかの試金石になる可能性があります。仮に、議論がこじれるような状況になった場合には、米国債が売られて金利が上昇もしくは高止まりしてしまい、株式市場の重石となることも想定されます。

 したがって、目先の株式市場はさらなる上昇も見込めそうですが、2月の状況次第では、その勢いがなくなってしまうことも想定しておく必要があるかもしれません。

(土信田 雅之)

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