初めての債券投資、商品選びの判断ミス3点
トウシル / 2025年1月27日 7時30分
初めての債券投資、商品選びの判断ミス3点
資産形成の正解は人それぞれですが、一方で、多くの人が失敗してしまう考え方や、やり方があるようです。このシリーズでは、資産形成を始める人が陥りがちな失敗事例を取り上げ、やってはいけない行動を分かりやすく解説します。
お悩み
株式投資とは別に安定的な運用目的で債券を組み入れたいけど…
奥本宏樹さん(仮名)会社員・55歳(既婚、奥さまは現在専業主婦、子ども3人)
奥本さんは昔から株式投資が好きで、金額がそれほど大きくなくても自分の気になった企業を調べて株式を購入し、その株価が上昇していくのを楽しみに投資していました。
いつも順風満帆というわけではありませんでしたが、無理しない程度にコツコツ続けていた結果、子育てが落ち着く頃にはある程度まとまった金額にまで増えていました。
しかし、年齢が上がっていくうちに、以前は楽しかった個別銘柄の株式探しがだんだん疲れてきて、今では株式インデックス投資をメインに投資をするようになりました。
さらに、定年が近づくにつれて、株式投資よりももっと安定的な運用を求めて、債券投資に見直しをしようかと考えるようになりました。幸いにも、定年後はこれまでの貯蓄、公的年金や年金保険などで生活には困らないと感じていたので、投資では利息収入が定期的に入れば十分だと投資目的も変化していました。
ただ、これまでは株式投資一辺倒だったので、債券投資の仕組みは理解しているつもりでも、経験がないのでやや不安は残ります。安定的な運用をしたいので失敗はしたくありません。
奥本さんのように、これまで債券投資への経験がない方は、どんなことに気をつけて債券投資を始めたらいいのでしょうか?
債券投資に慣れている人や事例紹介はまだまだ少ない
債券投資の話題は、株式投資や投資信託に比べると情報量がまだまだ少ないのが現状です。投資信託も、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)や積立投資に推奨される銘柄は株式インデックスファンドやバランスファンドがほとんどです。
債券が資産分散の一環で組み入れられることはあっても、あまり話題に上りません。値動きが株式に比べると少ないので注目されづらく、個別株式に比べても売買する必要がほとんどないため、満期まで保有するだけの投資になることが多く、自分でなにかをすることがあまりありません。
また金額も、少額で投資するなら節約をした方が経済的にも良い可能性を考慮すると、一定以上の資産を保有する人でなければ投資する意味も少ないのが現状です。
しかし、米国の金利は高止まりしており、日本の金利も徐々に上昇しているため債券投資の魅力に気づく人がだんだんと増えています。債券の取り扱い数もネット証券を中心に増加してきています。
そこで今回は、よくある債券投資の商品選びの判断ミスについてお伝えしたいと思います。
よくある債券投資の商品選びの判断ミス1:個別銘柄、ETF、投資信託の選択間違い
債券投資といっても、商品としては、個別銘柄の債券、ETF(上場投資信託)の債券インデックスやアクティブファンド、さまざまな投資先や為替ヘッジなどの仕組みを組み入れた多種多様な投資信託など、選択肢は豊富にあります。
債券投資を比較すると、それぞれメリット・デメリットがあります。例えば、個別銘柄の債券は、新規の時は基本的に単価が100円(100%表記の場合もある、また割引債のように100円未満で発行される債券もある)で始まり、満期償還時には原則100円(償還価格)で返ってきます。
これは相場とは関係がないため、満期時に返ってくる金額が確定されているというメリットがあります。
とはいえ、個別銘柄の債券を売買すると、買付単価と売却単価に差額がそれなりにあるため、短期間で売却すると価格分で損失が出る可能性が高いというデメリットもあります。
その点、ETFや投資信託では銘柄分散がされており、運用会社が売買するため個人が個別銘柄を売買するほどの売買価格差額はありません(販売手数料、日々の価格変動は考慮せず)。ただし、分散投資している代わりに満期償還日がないので、相場による価格変動を考えつつ、どこかで売却する必要があります。
一例ではありますが、満期保有なら個別銘柄へ投資して、短期売買ならETFや投資信託を利用した方が良いという事例です。実際にネットで債券購入件数ランキングを見ると、米国国債の20年30年ものが上位に来ています。満期保有を目的としているのならいいのですが、途中売却を考えるならETFを利用した方が良い可能性があります。
よくある債券投資の商品選びの判断ミス2:債券 利回りの良しあしを間違える
債券の利回りとは、投資した資金(投資元本)に対する収益の割合を指し、投資成績を判断する上で非常に重要な指標です。計算は投資金額に対して、「利息による収益」と「償還差損益(投資した金額と額面金額との差額)」で決まります。
この利回りという債券投資のリターンの基準ですが、基本的に円建て債券なら日本国債、米ドル建て債券なら米国国債が基準となり、国債の各年数の利回りとつないだ曲線である「イールドカーブ」を参考にします。
簡単に言えば、社債(事業債)などは「国債の利回り+発行体(企業)の信用リスク」で決まるといえます。つまり、社債が5%の利回りであっても、その時のベースとなる国債の利回りが2%なのか4%なのかで信用リスクの大きさは全く違います。
また、個別銘柄の債券なら保有中に費用は発生しませんが、投資信託であれば保有中に運用がされているので、信託報酬などのコストが発生します。仮に1.5%の年間費用が発生しているとすると、債券の利回りが5%想定だとしても実質利回りは3.5%(5%-1.5%)ということになります。
つまり、「利回り」という点だけに注目してはいけないということです。費用が同じなら利回りが低い方にも高い方にもそれぞれメリット・デメリットがありますし、費用が大きいなら費用後の利回りを確認するべきです。きちんと利回りの見方を理解して、自分の投資目的や安心して投資できる程度のリスク(価格変動)に抑えて商品を決めることが重要です。
よくある債券投資の商品選びの判断ミス3:債券投資に回す投資資金を間違える
ETFや投資信託では、以前から債券投資を少額で売買することができましたが、個別銘柄を少額で投資する機会はあまりありませんでした。しかし、最近ではネットで少額から投資することもできるようになってきました。
もちろん、より多くの銘柄を選択肢に入れるには1,000万円や10万USDなど、まとまった資金がある方が良いでしょう。それでも、個別銘柄の債券を投資できる環境になってきたことで、以前よりも債券投資をイメージしやすくなり、個人投資家にも広まってきていると感じています。NISAでも、債券に投資する投資信託やETFが注目されているようです。
その中で、少額でも債券投資を組み入れようとする人もいるようですが、債券は基本的に株式と比べると期待できるリターン(収益率)が低いため、あまり少額で投資してしまうと、リターンは期待通りでも金額的な面(例えば10万円で3%リターンなら税引前で3,000円など)で考えると、投資するよりも少し節約した方が資産を増やせる可能性が高いこともあります。
資産形成の話題で、NISAに選ばれる商品で株式インデックス投資がおすすめされるのには理由があります。まだまとまった余裕資金がないうちは「資産形成」をするために期待リターンの高い株式への投資がおすすめされ、投資金額が大きくなってから債券などの運用に切り替えることが、一般的な資産配分の考え方です。
債券投資に回すべき資金なのかを考えた上で投資先を選びましょう。
債券投資の投資目的によって商品選びは変わる
債券投資の商品選びは難しくはない
債券投資は、株式投資と違って一つひとつの債券に「満期」が基本的にあるため、投資することでどのくらいの収益が期待できるのかが「利回り」から分かります。各銘柄の信用度は第三者の格付けで表記されており、条件を詰めていけば自分にあった商品を選ぶことは難しくありません。
長期分散投資を目的に運用しているファンドラップやロボアドバイザーなどの資産配分を見ると、安定的な運用をすることで債券投資への比率が増えます。もちろん、債券と言っても外貨建て商品であれば為替リスクがありますし、複雑な仕組みの債券の中にはリスクが高い商品もあるので注意が必要です。
ただシンプルに債券投資をするなら退屈かもしれませんが、購入したら定期的に利息を確認しつつ、満期まで放っておくぐらいの気持ちで運用すると良いでしょう。
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(西崎努)
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