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iDeCo改正!NISAとiDeCo、優先順位は変わるのか?

トウシル / 2025年1月31日 7時30分

iDeCo改正!NISAとiDeCo、優先順位は変わるのか?

iDeCo改正!NISAとiDeCo、優先順位は変わるのか?

 2024年12月に令和7年度税制改正大綱が公表され、改正内容の概要が明らかになりました。さまざまな分野での改正が盛り込まれていましたが、個人の資産形成という意味では、基礎控除や給与所得控除の引き上げ(いわゆる年収103万円の壁)による手取り増加に加えて、確定拠出年金の掛金額引き上げは影響が大きいと考えています。

 過去に公開した「長期の資産形成 NISAを優先すべき人、iDeCoを優先すべき人」では、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)とiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の優先順位についてご説明しましたが、今回は、令和7年度税制改正が大綱の通り行われた場合に、この優先順位がどのように変わるのかご説明します。

※本記事は、2025年1月時点で令和7年度税制改正大綱を前提として執筆しているため、今後の国会での審議によっては実際の改正内容が異なる可能性があります。

NISAおよびiDeCoに関する改正内容

 令和7年度税制改正大綱では、NISAやiDeCoに関していくつかの改正が盛り込まれており、NISAでは「口座開設10年後の所在地確認の廃止」「金融機関変更時の即日買付」「つみたて投資枠で投資可能なETFに係る要件の見直し」があります。一方、iDeCoに関連するものとしては

  1. iDeCoの拠出限度額の引き上げ
  2. 退職所得控除の調整規定の見直し

の二つで、これらはNISAとiDeCoの優先順位を検討する上で影響があると言えます。

 一つ目はiDeCoの拠出限度額の引き上げで、次の図にある通り、iDeCoの拠出限度額(月額)について、第1号被保険者(個人事業主など)は6.8万円から7.5万円に、企業年金のある第2号被保険者(会社員・公務員)は2万円から6.2万円(ただし企業型DC含む)に、企業年金のない第2号被保険者(会社員・公務員)は2.3万円から6.2万円に引き上げられることになります。

厚生労働省関係税制の現在と見直し後
出所:厚生労働省「令和7年度 税制改正の概要」13ページ

 特にインパクトが大きいのは、企業年金のない第2号被保険者(会社員・公務員)でしょう。これまでの2.3万円から6.2万円へと3.9万円もの増額です。

 そしてもう一つは退職所得控除の調整規定の見直しです。退職所得が複数ある場合(例えば、会社からの退職金とiDeCoの一時金など)には退職所得控除の金額が調整されるというルールがあるのですが、それが見直されるというものです。

 ただし、退職所得が一つしかない場合は影響のない部分になりますので、本記事では詳細は割愛させていただきます。

そもそもiDeCoの税制上のメリットは?

 NISAはその口座で投資した利益について無期限で非課税になるという、比較的シンプルな制度です。

 一方、iDeCoは拠出した掛金全額がその年の所得控除となり、将来受け取る際には一定の控除(退職所得控除や公的年金等控除)があるものの、上回った分に対しては課税される、いわば課税の繰り延べと言える制度です。

iDeCoの税制上のメリット

iDeCoの税制上のメリット

 厳密に言うと運用中は特別法人税が課税される仕組みになっているのですが、現在は課税が凍結されているため、実質的に運用中は非課税となっています。

課税の繰り延べとなるiDeCoの税制メリットはいくらなのか?

 iDeCoに加入した場合の税制メリットがどのくらいになるのか、具体的に試算してみます。企業年金のない第2号被保険者(会社員・公務員)を想定して、30年間加入、これまでの上限に近い月額2万円を拠出した場合と、改正後を想定して月額4万円を拠出した場合で計算します。

 運用利回りは3%と5%の2パターンで、受け取る際は全額を一時金(退職所得)として受け取るものとし、掛金を拠出する時点での所得税および住民税の税率(二つの合計)は20%および30%として試算します。

 このような前提で試算した結果をまとめると次のようになります。

掛金月額、利回り、個人所得税率別のiDeCoの実質的な節税額

掛金月額、利回り、個人所得税率別のiDeCoの実質的な節税額
※30年後評価額は1万円未満切り捨て

 受取時の税額は30年間の退職所得控除額1,500万円(=40万円×20年+70万円×10年)を超えてくると課税されますが、掛金が月額2万円であれば、受取時はほぼ非課税となります。(ケース1~4)

 一方、掛金は全額がその年の所得控除となります。所得税10%、住民税10%の場合、年間の掛金が24万円であれば節税額は「24万円×20%=4.8万円」となり、それが30年分ということになると、「4.8万円×30年=144万円」となります。

 ここでは単純に節税額合計から受取時の課税額を引いたものを実質的な節税額として表示しています。

 より正確にはiDeCoの場合は国民年金基金連合会や運営管理機関への手数料負担(運営管理機関次第ですが、数万円程度に抑えることも可能)を考慮する必要がありますが、今回の結果では実質的な節税額はいずれも50万円以上の数字となっていますので、単純に非課税となるNISAよりも節税できる分だけ有利と言えます。

 運用利回りが5%よりもさらに高くなると受取時の税負担は増加していきますし、所得税率が低い場合は拠出時の節税額が小さくなります。iDeCoは長期にわたり加入するものですから、途中で所得税率が変わることもあるでしょうし、そもそも運用利回りは最終的に受け取る時点まで分かりません。

 とはいえ、受取時に課税される可能性を考慮しても、拠出時の所得控除はかなり大きなメリットと言えるのではないでしょうか。

今回の改正後、NISAとiDeCoの優先順位は変わるのか?

長期の資産形成 NISAを優先すべき人、iDeCoを優先すべき人」でもご説明したように、NISAとiDeCoを組み合わせて利用していくのが基本になると考えています。

 今回の改正により、iDeCoの所得控除のメリットがさらに大きくなりますので、相対的にはiDeCoのメリットが大きくなると言えます。ただし、NISAはいつでも換金して自由に使うことができる一方、iDeCoは老後資金として60歳以降でしか引き出して使うことはできません。

 さらに、退職所得の税制については今後見直されていく可能性が高く、その内容によってはiDeCoの出口での税負担が増加してしまう可能性も考えられます。

 こういった点を総合的に考慮しながらご自身のライフプランや家計状況を踏まえて、NISAかiDeCoかという二者択一ではなく、バランスよく併用していくのがおすすめです。

(横田 健一)

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