国家はいかにして破綻するのか?大きな長期債務サイクルとは!
トウシル / 2025年1月30日 16時13分
国家はいかにして破綻するのか?大きな長期債務サイクルとは!
債務の利払い費が急速に増加、社会保障費や国防費を上回る支出に
世界最大級規模のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者であるレイ・ダリオは、スイスのダボスで開かれていた世界経済フォーラムから米CNBCの番組に出演し、「政治家が協力して問題を解決する限り、赤字削減は増税、歳出削減、あるいはその二つの組み合わせによって達成できる」と述べた。
ダリオは、現在予測されている財政赤字は米国内総生産の7.5%に達するが、この比率が3%まで下がれば、債券市場の需給不均衡は大幅に緩和されたと指摘した。
継続的な歳出の増加と税収の減少に伴い国の借金は36兆ドルの大台を超えた。2024年には、社会保障費、国防費、医療費以外のどの支出よりも利払いの方が多くなることが想定されている。中でも最も懸念すべき項目は、その利払い費用を賄うための税収との関係である。利払い額は急騰している。「税収に対する利払い比率」は2024年第3四半期に37.8%に急上昇した。
米国の政府税収に対する利払い比率
第3四半期時点の連邦政府の税収は7,400億ドル(青)と前年同期比4.1%増、額にして290億ドル増えたのに対し、利払い額は2,790億ドル(赤)と前年同期比で15%増、額にして370億ドル増加した。利払い額が急速に増えている。
米国の税収(青)と利払い(赤)の推移
国家債務は今や36兆1,000億ドルにまで膨れ上がった。パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長でさえ「持続不可能」だと言っている。長期的に税収を増やす方策としては、所得の増加、雇用の増加、賃金の上昇(課税対象となる賃金を得る労働者の増加)、企業の利益の増加、金融市場の活況などが考えられる。
米国の債務とGDPの比較(全てがひっくり返った)
この問題に対処するために何ができるのか、あるいは何が起きるのか。議会が対処する。インフレが対応する。あるいはその両方かもしれない。そして米国は今後、より高いインフレに巻き込まれる可能性がある。その結果としてより高い長期金利に巻き込まれる可能性もある。米国はすでにその道を歩み始めており、今では頑固なインフレに巻き込まれている。
帝国、国、地方の崩壊を何度も予兆してきた「大きな長期債務サイクル」とは?
前述のレイ・ダリオは、1月14日から23日にかけてリンクトインに「How Countries Go Broke(国家はいかにして破綻するのか)」と題する論文を掲載した。米国の債務が巨額に積み上がる中、重要な議論となるだろう。
ここではイントロダクションの一部を抜粋してご紹介したい。
国の債務や債務の増加には限度があるのだろうか?もし政府債務の増加が抑制されない場合、金利や金利が影響するその他の事柄はどうなるのだろうか?米国のような主要な準備通貨を持つ大国が破綻することはあり得るのだろうか?もしあり得るのであれば、それはどのような状況になるのだろうか?債務を心配すべき時や、それに対して何をすべきかを教えてくれるような「巨額の長期債務サイクル」のようなものはあるのだろうか?
これは学術的な問題にとどまらない。投資家、政策立案者、そしてほとんどすべての人々が答えを出さなければならない問題だ。なぜなら、その答えは私たちの幸福と私たちが何をすべきか?ということに大きな影響を与えるからである。しかし、決定的な答えは現在のところ存在しない。
現時点では、特に自国通貨が基軸通貨である場合、政府債務や債務増加に上限はないと考える人もいる。なぜなら、世界中で広く受け入れられている基軸通貨国の中央銀行は、債務返済のためにいつでも通貨を印刷できると考えられているからだ。
一方で、高水準の債務と急速な債務増加は、近い将来に大きな債務危機が起こる前兆であると考える人もいる。しかし、その危機がいつ、どのようにして訪れるのか、また、それがどのような影響をもたらすのかは、正確にはわかっていない。
では、長期にわたる規模の大きい債務サイクルについてはどうだろうか?「景気循環」は広く認識されており、一部の人々はそれが短期の債務サイクルによって引き起こされると認識しているが、巨額の長期債務サイクルについては誰もそれを認識しておらず、話題にも上らない。
私は、このことに関して、教科書に書かれた優れた研究や記述を見つけることができなかった。また、現在、あるいは過去に中央銀行や財務省を運営していた世界屈指の経済学者たちにこの重要なテーマについて尋ねても、彼らは多くを語ろうとしない。それが、私がこの研究を行い、伝える理由だ。
この研究により、大きな長期債務サイクルは必ず大きな債務バブルと崩壊につながっていることが分かった。1700年以降に存在したおよそ750の通貨/債務市場のうち、今も残っているのはわずか20%ほどであり、残っている市場もすべて、これから述べる機械的なプロセスによって大幅に切り下げられていることが分かった。この大きな長期債務サイクルが帝国、国、地方の崩壊を何度も予兆してきたかを見てきた。
政府債務が膨大で急速に増加している現在、他の事例を研究することなく、今回が他の時代とは異なるだろうと考えるのは、危険な怠慢であるように思える。それは、過去に内戦や世界大戦が起こった経緯を研究することなく、私たちの生きている間にそれらが起こっていないからといって、今後二度と起こらないだろうと考えるようなものだ。(ちなみに、南北戦争と世界大戦の力学は現在も進行中であると私は考えている。)
ビッグ・デット・サイクルは、私が「全体的なビッグ・サイクル」と呼ぶものの構成要素である相互に関連する複数の力のひとつに過ぎないということだ。例えば、1)ビッグ・デット・サイクルは、主に2)国内における政治的・社会的調和と対立の大きなサイクルに影響を与え、またその影響を受ける。そして、国内の大きなサイクルは、3)国家間の地政学的調和と対立の大きなサイクルに影響を与え、またその影響を受ける。これらのサイクルは、4)干ばつ、洪水、パンデミックなどの自然災害、5)大きな新技術の開発、といった要因の影響も受ける。
これら5つの力が組み合わさって、平和と繁栄、そして紛争と不況という大きなサイクルが形成される。これらの力は互いに影響し合い、また事実上あらゆるものに影響を及ぼすため、まとめて考える必要がある。
なお、この論文は全てがリンクトインにて無料で公開されている。
ご紹介したイントロダクションおよび第1章では、ビッグ・デット・サイクルについての説明。第2章では、35のビッグ・デット・サイクルの事例で実際に起こったことを示し、サイクルがどのように進行しているかを典型的な出来事とともにまとめ、第3部では1944年から始まった新しい金融秩序と世界秩序を振り返り、現在に至るまでを説明している。
最後に、第4章と第5章では、米国が債務負担を管理するために必要なこと、そして今後五つの大きな力がどのように展開していく可能性があるかについての見通しが述べられている。
ご興味があれば参考にされたい。
レイ・ダリオの米国(帝国)のビッグ・サイクル
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1月29日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、紙田智弘さん(楽天証券 株式・デリバティブ事業部)をゲストにお招きして、「DeepSeekショック」「楽天証券の米国株式の投資家動向」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。
ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
1月29日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
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