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負債バブルと円キャリートレード

トウシル / 2025年2月6日 16時31分

負債バブルと円キャリートレード

負債バブルと円キャリートレード

日銀の利上げ前倒し観測で円キャリートレードに異変!?

 2月5日、日本の長期金利は約14年ぶりの高水準を更新した。日本銀行の利上げ前倒し観測が浮上しているためだ。こうした中、市場の一部で、「円キャリートレードの巻き戻しが静かに始まっている」といううわさが出ている。投機筋はレバレッジを減らし始めているのだろうか?

*円キャリートレード:「円キャリートレード」とは、低金利の円を借り入れて外貨に交換し、高金利国の資産(外国債券や外国株式、原油などの商品先物、海外不動産、ヘッジファンドなど)で運用して利益を得る取引

日本10年国債金利(日足)

日本10年国債金利(日足)
(赤:金利上昇トレンド・黄:金利低下トレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

ドル/円(日足)

ドル/円(日足)
(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 円のキャリートレードが借り換えを必要とするとき、より高い金利の影響が表面化し始める。その時点で、借り手が大幅に価値を失った資産に投資した場合、より高い金利で借り換えるか、多額の損失を計上する必要に迫られる。

 MBS、CMBS、CLO、プライベートエクイティファンド、および株式は全てこのカテゴリに分類される。そして、ナスダック100の上昇はおおむね円安と連動している。

ドル/円とナスダック100の推移

ドル/円とナスダック100の推移
出所:トレーディングビュー

 日本の低金利は世界のエブリシング・バブルを支えている。ドル/円の上昇(円安)はエブリシング・バブルの象徴である。円売りのゲームに参加しているのは日本の個人投資家だけではない。日銀が異常低金利を続けた結果、円は調達通貨となり、推定20兆ドルのキャリートレードが行われているという。

 投資資産が重大な信用リスクを伴い、満期時の円キャリートレードの価値が著しく損なわれ、回復率が元本損失を相殺しない場合、大規模な円キャリートレードの巻き戻しが起こる。昨年8月のドル/円と日経平均株価の急落は、その一部がフラッシュクラッシュ的に巻き戻されただけである。

 経済学者のルートヴィヒ・フォン・ミーゼスは、「中央銀行の刺激策で上昇したものは、インフレや弱気相場にかかわらず、必ず下落する。それは時間の問題であり、どれだけ(下落が)深刻なのかという問題である」と語った。

米財務省の非常手段が完全に尽きる「Xデー」は、2025年6月から10月の間!?

 今世界中で起きている終末的状況は、「負債と資産の両建て」でつくられたエブリシング・バブルに覆い隠され金融市場ではほとんど認識されていない。

 米国が覇権を維持して生き残る唯一の方法は、何兆ドルもの紙幣を印刷することだった。市場をポンジスキームに変え、持続不可能で急速に増大する国家債務を管理していた。だが、そんな時代は終わりに近づいている。

 巨大な債務の壁が満期を迎える。35兆ドルのうち15兆ドルは3年で償還されてしまう。乗り換える時の金利が低ければ米国債なんて誰も買わない。

 ドルが武器化されている今、中国もロシアも誰も買わない米国債を買うのは日本だけである。買い手が足りないので、結局、とりあえず米国はQE(量的緩和)をやる(自分で買うしかない)ことになる。長期の米国債はもはや安全資産ではないと、そのうち市場も気づくだろう。

 著名投資家のポール・チューダー・ジョーンズが昨年10月22日に米CNBCの番組に出演し、「選挙後に支出に関して市場のつけを払うことになる。我々は破産するだろう。全ての道はインフレに通じる」と語った。

 ジョーンズはビットコインとゴールドを含むコモディティをロング、ナスダック総合指数のバスケットを保有する一方、利回りのある金融商品からは離れるよう推奨した。

 米国の政府支出の増加と減税の見通しから、FRB(米連邦準備制度理事会)が目標としている2%の達成は劇的な政策変更がない限りは事実上不可能だと指摘した。「米国は支出問題に真剣に取り組まない限り、すぐに破産するだろう」と警告した。

米国債の償還スケジュール

米国債の償還スケジュール
出所:ブルームバーグ、Michael gayed

「彼らは債券を救うために株価を暴落させるだろう。(QEをやるために)そうしなければならない」

(Michael gayed)

 連邦政府の利払いは今や1兆2,000億ドルを超えており、これは軍事費に費やす額をはるかに上回っている。米国社会はコントロールを完全に失っている。われわれは今、そこにいるのだ。

連邦政府の支出(国防費:青・利払い費:赤)

連邦政府の支出(国防費:青・利払い費:赤)
出所:クリエーティブプランニング

「米財務省の非常手段が完全に尽きる「Xデー」は、2025年6月から10月の間と推定されている。また、ジャネット・イエレンが2025年を目標に短期債務を意図的に発行したため、米国はこの期間中に債務の3分の1を借り換える必要がある」

(Financelot)

 ここからの懸念は「2025年の債務上限危機」である。トランプ政権で大規模な減税は確実に行われるだろう。しかし、支出削減の約束は守られない可能性が高い。それは、巨額の財政赤字がさらに急増することを意味する。

 長期金利が急上昇するのを防ぐためFRBはQE(国債買い入れ)をやることになるだろうが、それはインフレを急上昇させることになるだろう。

「現時点では、今陥っている負債バブルから抜け出す方法を考えることが先決になります。この負債バブルは、このまま行けば、より一層深刻なインフレへと発展してしまうからです」

(リン・オールデン)

リン・オールデンのポートフォリオ

リン・オールデンのポートフォリオ
出所:リン・オールデン・コム

 元FRB議長のアラン・グリーンスパンは、何年も前に「米国の負債処理のプラン」を明かしている。

「金利を引き上げ、ドル不足を生じさせることで、他の全ての国に債務不履行を強いるつもりだ。誰もが米国債を売却せざるを得なくなったら、額面価格より安く購入するだろう」

 われわれは、米国が財政的に不可能であるという認識が突如として生まれる「ミンスキー・モーメント」をどこかで経験するだろう。

【事前にわかっているのは、クライマックスの溶融成分が何かについてだけです。これには次のものが含まれます。公的債務の不履行、給付信託基金の破綻、貧困と失業の増大、貿易戦争、金融市場の崩壊、ハイパーインフレ(またはデフレ)などによる経済的苦境。社会的な苦悩、階級、人種、土着主義、宗教によって引き起こされた暴力、武装したギャング、地下民兵、壁で囲まれたコミュニティによって雇われた傭兵によって助長される暴力。制度の崩壊、公然たる税金反対運動、一党支配、憲法の大幅な改正、分離主義、権威主義、国境の変更を伴う政治的苦境、テロリストや大量破壊兵器を装備した外国政権との戦争による軍事的苦境…】

出所:『フォース・ターニング』(ウイリアム・シュトラウス&ニール・ハウ)

 トランプ政権の今年からは、これまでの両建て経済の後始末の『フォース・ターニング』相場が始まる。

1787年:合衆国憲法制定
1865年:南北戦争終結
1945年:第2次世界大戦勝利
2025年:?

【ストラウスとハウが1997年に『フォース・ターニング(第四の節目)』を出版したとき 、国家債務は5.4兆ドルで、国は年間220億ドルの赤字を計上していた。現在、米国は4日ごとに220億ドルの債務を追加しており、年間2兆ドルにのぼる。彼らは、次の「フォース・ターニング」の転換期の主なきっかけは、債務、社会の衰退、そして世界的な混乱であると仮定した。

 2008年から始まったこの危機(フォース・ターニング(第四の節目)の4回目)が17年目を迎える中、これまで進行中のこの危機を推進してきた促進者を予測する彼らの先見性には驚くばかりだ。2008年にFRBとウォール街の所有者によって引き起こされた債務の爆発的な増加は、すべての混乱、債務の創出、圧倒的なインフレ、権威主義的措置、社会の衰退、妄想の祝福、政権メディアとその腐敗した政府の共謀者の正当性の喪失、そしてトランプの台頭を引き起こした。

 革命(独立戦争)では、共和国の誕生そのものが、複数の戦いで危うく命を落とした。南北戦争では、連邦は、当時史上最悪の戦争とみなされた4年間の虐殺を辛うじて生き延びた。第二次世界大戦では、一時的に勝利していた民主主義の敵を国は滅ぼした。敵が勝っていたら、アメリカ自体が滅んでいたかもしれない。おそらく、次の危機は、同様の規模の脅威と結果を国にもたらすだろう】

出所:『フォース・ターニング 選挙が火種を巻き起こす』(ジム・クイン)

米国のビッグサイクル

米国のビッグサイクル
出所:レイ・ダリオ(リンクトイン)

 相場の未来など神様でもない限り誰も正確に予測することは不可能だが、われわれは今、大きな歴史の転換点の渦中にいるのではないか? 時代の変化は後で振り返ってみると分かるが、渦中にいる時は気づかないものである。

 ウォーレン・バフェットは2,346億ドルを短期国債に移した。 彼は初めてFED(連邦準備制度)の1,950億ドルを超える資産を保有することになる。

バフェット指標

バフェット指標
出所:BARCHART

1973年以降の世界の株式市場のバブル

1973年以降の世界の株式市場のバブル
出所:ASR Ltd.

2024~2025年の株式市場は全面的な割高感でナンバー1

2024~2025年の株式市場は全面的な割高感でナンバー1
出所:エリオットウエーブインターナショナル

「大幅なドローダウンを防ぐための管理とは、ダウンサイドの大部分を捕捉することを防ぐために、アップサイドの一部を放棄することを意味する。ポートフォリオはいつか元の状態に戻るかもしれないが、その間に失った貴重な時間は決して取り戻すことはできない」

(ポール・チューダー・ジョーンズ)

『フォース・ターニング(第四の節目)』のニール・ハウは、米国の再生と素晴らしい時代の前には「危機とインフレ」がやってくると警鐘を鳴らしている。危機に対してわれわれができることは、相関関係のない資産への分散投資、そして仲間と家族を大切にすることである。

2月5日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」

 2月5日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、愛宕伸康さん(楽天証券経済研究所所長兼チーフエコノミスト)をゲストにお招きして、「日銀に襲いかかるグレースワン、想定外の事態は起こりえるのか?」というテーマで、愛宕さんのホンネを聞いてみました。ぜひ、ご覧ください。

長期金利:最近、日米長期金利の連動性が崩れている
出所:YouTube
日本物価:生活に直結したものほど価格上昇が激しい
出所:YouTube
FRB金利:市場予想
出所:YouTube
米国債の償還スケジュール
出所:YouTube

 ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。

楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビューのバナー

2月5日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

2月5日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビューの様子
出所:YouTube

セミナーのお知らせ:3月1日(土)『投資戦略フェア EXPO2025』

 日本最大規模の投資家のためのイベント

 3月1日(土)の「投資戦略フェア EXPO2025」に登壇致します。

『今陥っている負債バブルから身を守る方法』 講師:石原順
A会場 13:00~14:00

 ぜひ、ご参加ください。

※【石原順セミナー(提供:楽天証券)参加者特典】
「メガトレンドフォローシグナルの楽天MT4版インディケーターお試し版」をプレゼント

ドル/円(日足)と「メガトレンドフォローシグナル」の売買シグナル

ドル/円(日足)と「メガトレンドフォローシグナル」の売買シグナル
(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

投資戦略フェア EXPO2025
2025年3月1日(土)10:00 - 18:30(受付開始 9:30)
東京ドームシティ プリズムホール(東京都文京区後楽1-3-61)
事前登録(無料)

投資戦略フェア EXPO2025の情報

(石原 順)

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